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BYARDが目指すのは「バックオフィスの業務を支えるプラットフォーム」|#BYARD開発記 09

スタートアップとして「事業の成長」という使命を背負う以上、成長できる見込みがある市場で勝負しなければなりません。第9回は、BYARDでは市場をどのように定義したのかを振り返ります。

「BYARD開発記」について ※本文はこの下からスタートです
株式会社BYARD・代表の武内俊介が、サラリーマンから税理士資格の取得を経て起業し、BYARDというプロダクトを作り上げるまでの開発ストーリー。

開発に至るまでの背景や、プロダクトの設計に込められた想い、起業・開発を通じて得た経験などをご紹介します。

※この記事は本人への約半年に渡る取材をもとに執筆/構成を行っています。
(ヒアリング/執筆/撮影:藤森ユウワ)

1. ブルーオーシャンはレッドオーシャンの中にある

市場を検討するためのフレームワークはいくつか存在しますが、今回は「ブルーオーシャン戦略」について考えてみます。

1-1. ブルーオーシャン戦略とは

ブルーオーシャン戦略とは、INSEAD(インシアード、欧州経営大学院)のW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授の著書「ブルー・オーシャン戦略」の中で提唱された戦略論です。

戦略の本質は「いかに戦わないか(戦いを省略できるか)」であると言われますが、現実世界では「市場の中で競争相手とどう戦いパイを奪い取るか」という前提で戦略論が話し合われていることが少なくありません。

血みどろの戦いが行われている市場=レッドオーシャンではなく、競争のない市場=ブルーオーシャンを創造せよ

…という書籍からのメッセージは、「市場を考えるうえで『競争相手とどう戦うかという前提』を取り払い考えてみること」の大切さを表しています。


1-2. ブルーオーシャンの罠〜そこには魚がいないだけ、かもしれない〜

しかし、「競争がない」ということだけに注目して安易に市場を選んでしまうのは危険です。なぜなら、競争がないということは、その市場にはニーズが存在しないという可能性があるからです。

お金もブランド力も既存の資源もないスタートアップ企業では、レッドオーシャンで既存プレイヤーと真っ向勝負しても、勝てる見込みはほとんどありません。だからこそイノベーション(革新的な技術やコンセプト)によってブルーオーシャンを探し当てようと考えますし、「競争がなく、それでいて魚がたくさんいる海」を探し求めたくなります。

しかし「世紀の大発明」ともてはやされたセグウェイが鳴かず飛ばずのまま消えていったように、どんなに革新的なプロダクトもニーズが存在しなければ売れません。ブルーオーシャンとは夢のような理想郷ではなく、「魚がまったく取れず誰も漁に出かけなくなった『死の海』」かもしれないのです。


1-3.「新結合」によって市場を見いだす

だとすれば、スタートアップ企業はどのように市場を見いだすべきなのでしょうか。それは、確実なニーズが存在する場所、つまりレッドオーシャンの中にこそあるのかもしれません。

もちろん、競合と真っ向勝負するわけにはいきませんから、レッドオーシャンの中にあって誰も手を付けることができていない「空白域」を見つけ出す必要があります。

私は、“空白域”とは「誰も知らない(気付いていない)まったく新しい場所」ではなく、以下のようなものではないかと考えています。

・既存のやり方ではしんどいが、誰もが「まぁ、こんなもんだよね」と思って(諦めて)おり、頑張ってどうにかしていること

・多くのプロダクトが出回っているが、どれもユーザーの真の課題を解決するに至らず、実は、誰も満たされていないこと

・古いやり方(≓アナログ)が前提になっていて、新しいやり方(≓デジタル)が前提の仕組みになっていないこと

すなわち、空白域とは「既存の市場の捉え方や、技術・資源の組み合わせ方を変えることで見いだすもの」という考え方です。

シュンペーターが提唱した「イノベーション」のそもそもの概念は「技術革新」ではなく「新結合」であったという話は有名ですが、スタートアップが目指すべきブルーオーシャンとは、確実なニーズが存在する場所(レッドオーシャン)のなかで、自分たちの強みを生かした「新結合」によって見いだすべきものではないかと思うのです。


2. BYARDがターゲットとする市場

BYARDがターゲットとする市場は、まさに確実なニーズが存在する場所(レッドオーシャン)のなかで、自分たちの強みを生かせる新結合によって見いだしました。

具体的には、「バックオフィスの業務管理」の領域で、既存のタスク管理とプロジェクト管理では満たされていない空白域です。

カオスマップを見ずとも皆さんもお気付きかと思いますが、「タスク管理」「プロジェクト管理」のツールはすでにかなり多くあります。AsanaやMonday.comなど、ワールドクラスの上場企業も存在する、まさにレッドオーシャンです。

画像引用元:【2020年度版】タスク管理ツール全まとめ│タスク管理大全|https://task-management-compilation.com/toollist/

ところが、ユーザーヒアリングすると誰もが常に「良いツールがないか」と探しており、見つからないから結局はExcelやスプレッドシートで管理、ということが起こっていました。

これだけツールがあるにも関わらず、なぜ「バックオフィスの業務管理」に適したものが見つからないのでしょうか。


2-1. 既存のタスク管理・プロジェクト管理ツールでは満たされない「空白域」

既存のタスク管理ツールは、基本的に「私の時間をいかに効率良く使うか」という観点で作られています。つまり「個人の活動の管理」がベースになっているため、チーム全体の業務進捗を把握・管理するにはあまり向いていません。

もちろん、個人の生産性が上がることに意味がないわけではありません。しかし、組織として人が集まり、一連の流れで業務が行われている中で、一か所だけが効率化されたとしても全体の生産性が上がるわけではないのです。(個別最適ではなく全体最適が重要な理由は、第6話をご参照ください。)

ならば、プロジェクト管理ツールはどうか?というと、バックオフィスの業務管理目的で使うには少し複雑すぎます。

例えば、backlog。使ったことのある方は分かると思いますが、本当にうまく設計されています。プロジェクトの箱を作り、目的・期間を設定し、課題を立てマイルストーンを置き、担当者をアサインする。必要な資料が格納でき、そこでコミュニケーションもできる。プロジェクト管理に必要な機能が本当にうまく設計されているからこと、複雑なのです。

プロジェクトの定義について辞書を引いてみると、以下のように記されています。

組織、業務本来の組織とは別に、目的を達成するために臨時で構成される組織やその業務のこと。コンピューターシステムの開発において、大規模な開発では、プロジェクトを組む場合が多い。

プロジェクトとは - コトバンク

つまり、プロジェクトの本来の定義は、「ある目的の達成のために特別に組織され、比較的大規模で、一度きりで終了するもの」なのです。

だから、準備に時間をかけるし、スケジュールやリソースをきっちり計画し、資料やコミュニケーションも一切漏れなく格納するよう、プロジェクト管理ツールは作られています。

もちろん、これを応用してバックオフィスで使うこともできなくはないですが、マネジャーにとっても現場担当者にとっても「普段づかい」するツールとしてはいささか複雑で、重たすぎます。

既存のタスク管理ツールやプロジェクト管理ツールではニーズを満たせていない空白域。これをかなり極端に4象限図にしてみると、以下のようなイメージです。

※実際はもっと複雑でしょうが、イメージとして単純化しています


2-2. 「もっと性能の良い○○」ではないものを作る

この空白域を満たすためには、既存のツールとは違う新たな切り口が必要だと考えています。

第7話では、半年に渡る徹底的なユーザーヒアリングによって見えてきた、以下の二つの課題についてご紹介しました。

【バックオフィスの業務管理におけるユーザーの課題】
1. マネジメントサイドの「把握ができない」課題
2. 現場サイドの「共有と引き継ぎがうまくいかない」課題

これらの課題はAsanaやbacklogがまだ解決できていないもの。つまり解決に必要なのは「もっと性能の良い Asanaやbacklog」ではないはずなのです。

現場の担当者の日々の業務をサポートしつつ、マネジャーが管理でき、なおかつ継続的な改善が行えるもの——この新たな切り口を求めてたどり着いたのが「業務プロセスを歩くように仕事する」というコンセプトでした。


3. BYARDはバックオフィスの業務管理を行うための「プラットフォーム」

書籍「コンセプチュアル思考」では、レッドオーシャンであるコーヒー市場で“スターバックス”や“ブルーボトル”が成功できた理由について、「競合にはない新しい市場の捉え方や、技術・資源の組み合わせ方によって市場に新たな軸を切り、そこに戦略的空白域を見いだしたからだ」と考察されています。

BYARDはタスク管理・プロジェクト管理というレッドオーシャンで、既存のツールではニーズを満たせていない「バックオフィスの業務管理」という領域に向けてプロダクトを開発しています。

これは、単にバックオフィスのタスク管理・プロジェクト管理を便利に行うツール、ということではありません。それらを3次元的に、より深く本質的な部分から基盤として支え、その基盤上で日々の業務を行うことまでができる「プラットフォーム」とでも言うべきものになると考えています。

では、プラットフォームたり得るために必要な機能とはいったいなんなのでしょうか。次回からは、BYARDのより具体的な機能についてご紹介します。



「BYARD開発記」シリーズのご紹介

「BYARD開発記」は全13話のシリーズになっています。

BYARDそれ自体は、数ある業務用アプリケーションの中の一つですが、その背景にはバックオフィスの実務家として、事業の運営者として感じてきた想いや経験があり、それをプロダクトの設計に込めています。

BYARDでは、私たちと一緒にバックオフィスの世界を変えるようなプロダクトを作る仲間を募集しています。もし開発記をお読みいただいて、ご興味をお持ちいただけたようであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

シリーズINDEX

第1章:BYARDへとつながった背景ストーリー

第2章:起業・開発で活用した手法

第3章:BYARDのプロダクト紹介

最終章


BYARDの採用情報は、以下のページよりご確認いただけます。

また、BYARDのこと、業務設計のこと、バックオフィスのことなど、CEO・CTOと気軽に話せるカジュアル面談も実施しております。「気になるけど、いきなり採用に応募するのはな…」という方は、ぜひこちらへお気軽にお申し込みください。


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