仕事を動かすのは「データ」という血流、そして「人の手と心」 | #BYARD開発記 01
第1回はプロダクトの設計思想の元になった、原体験について振り返ります。
社内外を流れる「データ」という血流
私の仕事における最初の原体験は新卒の頃にさかのぼります。高知県の高校から早稲田大学へと進学し、新卒で入社したクレジットカード会社で私のキャリアがスタートしました。
配属先は商品開発部。営業側と連携しながら新しいクレジットカード商品を企画、開発する仕事で、主に提携カードを担当していました。「カード商品の企画開発」と一口に言っても、その業務範囲は多岐に渡りました。
クレジットカードを作る際に「紙の申込用紙」を書いたことがある方も多いのではないでしょうか。今でこそWebで申し込みが完結できるカードが増えてきましたが、当時は紙の用紙を書いて身分証のコピーを添え、店頭や郵送で申し込むのが一般的でした。
用紙に書かれた情報は、機械で読み取るにしろ人が入力するにしろ、いずれどこかのタイミングでデータ化する必要があります。そのデータは入会審査を行う部門に送られ、審査が通ればカードの登録・発行作業で使用し、その後も利用状況やポイントの管理、さらに提携先との顧客情報の共有などで日々データが参照・更新されることになります。
「紙」という入口から入ってきた1つのデータを、さまざまな場所でさまざまな人が利用する。このデータがどこに・どのような形で格納されていれば、各部門で効率良く利用・参照することができるのか? —— これを考えて全体の業務プロセスやシステムとの連携を設計するのが私の仕事でした。
マスターデータはデータベースに格納され、そこから各業務のシステムへとつながるわけですが、もしもこのデータがすべてExcelで管理されていたとしたらいったいどうなるでしょうか。
各部署や担当者が作業用に別のExcelファイルを作って、情報がばらけてしまうかもしれない。バージョンの異なるファイルが複数できあがり、どれが最新なのか分からなくなってしまうかもしれない。いろんな部署のいろんな人がファイルを更新する間に、せっかく組んだ数式やマクロが崩れてしまうかもしれない。
金融情報を扱うクレジットカード会社であれば「そんなことはあり得ない」と思われるでしょう。しかし皆さんの仕事の現場では、往々にして近しいことが起こっているのではないかと思います。
業種・業界によって扱うデータの重みにこそ違いはあれど、データがどこに・どのような形で格納されて、社内外をどのように流れていくのか、ちゃんと設計・構築できているかどうかで業務の効率性は大きく変わります。作業工程のある一部分だけの効率化したとしても、全体に与えられる影響はごくわずかなのです。
言いかえれば、データとは「会社」の中を巡る「血液」のようなものだと言えます。どこか1か所でも血管が詰まってしまえば全体に悪影響を及ぼす。かと言って、詰まった部分だけ手術でどうにかしても、根本の原因を治療しなければまた同じことが再発するでしょう。
まず全体が最適な状態になるように改善してこそ各業務の効率も上がるのだということを最初の仕事で経験できたことは、その後の私のキャリアにとって大きな意味がありました。
世界は誰かの仕事でできている
紙の申込書をどこに置いてもらうか。用紙をどう回収し誰がデータ入力するのか。そしてクレジットカードの場合はプラスチックのリアルなカードも存在しますから「カードを発行し、お客様へ送る」というロジスティクスの部分も考えなければなりません。
データベースを作ったら「ハイ終わり」というわけではなく、関係部署との調整や根回しも担当業務の範囲でした。
大企業だと業務の調整ひとつするのにもさまざまな部署と掛け合う必要があります。掛け合う先の部門長は当然、運営の責任を負っている自部門を守ろうという力学が働きます。既存の仕組みを変えようとすれば今の状態が崩れてしまうかもしれない。そこをどうにか調整し動いてもらわねばならないのです。
人はそれぞれに思惑もあれば感情もあり、正論を振りかざしても動いてくれないことなど往々にしてあります。それどころか、仲間内であっても利害関係が対立することも少なくありません。
今になってみると当時は若さに任せていた部分も多かったなとも思いますが、小生意気だけど血気盛んな若者を先輩方はかわいがってくれていたのでしょう。もちろん苦労も多かったですが、最後には受け入れてもらえることが多かったような気がします。
***
缶コーヒーのCMに「世界は誰かの仕事でできている」というキャッチコピーがあります。
デジタル化がどんどん当たり前になっていく現代。その中心とも言えるIT業界に身を置きプロダクトを作っているとつい忘れてしまいがちですが、仕事というものは人の手によって動いているということを忘れてはならないと、私は思っています。
たとえどんなに優れたツールが登場したとしても、人と人とのコミュニケーションはなくなりません。人とシステムの接点が滑らかにつながるようにするにはどうすればいいのか。BYARDの開発では考え続けています。
「BYARD開発記」シリーズのご紹介
「BYARD開発記」は全13話のシリーズになっています。
BYARDそれ自体は、数ある業務用アプリケーションの中の一つですが、その背景にはバックオフィスの実務家として、事業の運営者として感じてきた想いや経験があり、それをプロダクトの設計に込めています。
BYARDでは、私たちと一緒にバックオフィスの世界を変えるようなプロダクトを作る仲間を募集しています。もし開発記をお読みいただいて、ご興味をお持ちいただけたようであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
シリーズINDEX
第1章:BYARDへとつながった背景ストーリー
第2章:起業・開発で活用した手法
第3章:BYARDのプロダクト紹介
最終章
BYARDの採用情報は、以下のページよりご確認いただけます。
また、BYARDのこと、業務設計のこと、バックオフィスのことなど、CEO・CTOと気軽に話せるカジュアル面談も実施しております。「気になるけど、いきなり採用に応募するのはな…」という方は、ぜひこちらへお気軽にお申し込みください。