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SmartHRの「強くてニューゲーム」のメリット|#BYARD開発記 05

第5回は、なぜ「SmartHRのグループ会社」というスキームを選んだのか、そこにはどんなメリットがあるのかを振り返ります。

「BYARD開発記」について ※本文はこの下からスタートです
株式会社BYARD・代表の武内俊介が、サラリーマンから税理士資格の取得を経て起業し、BYARDというプロダクトを作り上げるまでの開発ストーリー。

開発に至るまでの背景や、プロダクトの設計に込められた想い、起業・開発を通じて得た経験などをご紹介します。

※この記事は本人への約半年に渡る取材をもとに執筆/構成を行っています。
(ヒアリング/執筆/撮影:藤森ユウワ)

最初はリベロ・コンサルティングの新規事業として実施するつもりだったSaaSプロダクトの開発。進めていくオプションをいくつか検討しているなかで出会ったのが「SmartHRのグループ会社」というスキームでした。

この出会いによって開発の道のりは大きく変化し、それがBYARDへとつながっていくことになります。


強くてニューゲームとは?

「強くてニューゲーム」とはテレビゲームのシステムの一つで、一度ゲームをクリアしたあとクリア時点でのキャラクターのレベルやスキル、所持アイテムなどを引き継いだ状態でゲームを始めることができるというRPG好きの方にはお馴染みのもの。

これになぞらえ、スタートアップ界隈では「一度目の起業で得た経験・人脈・資金などを生かし、二度目の起業で事業運営をより効率良く行うこと」の比喩として使われることがあります。 

『SmartHRの新会社で「強くてニューゲーム」しないか?』

SaaSプロダクト開発の構想が動き始めた2020年の秋。Twitterのタイムラインを眺めていた私の目にキャッチーなタイトルが飛び込んできました。

SmartHRがグループ会社の社長を公募しており、CEO(当時)の宮田さんとグループ会社の社長4名が一同に介して「公開雑談」を行うというのです。(当時のイベントの様子はレポート記事として公開されています。)

会社が急成長を続けるためには、SmartHR事業の成長の踊り場を見据え、第2・第3の柱=新規事業を用意しておく必要がある——宮田さんは自身のブログでこのように語っています。新規事業創出のためにグループ会社の社長を募集しており、以下のような内容になっていました。


・「ビジネスの特性に応じて、勝つための社内カルチャーは異なる」「社内の余計なあつれきを避けスピードを上げる」という考えから、SmartHR本体の中ではなく会社やオフィスを分け、グループ会社という形で新規事業を作る。

・SmartHR事業と近い領域は本体で開発を行っているので、一定のシナジーがありつつもSmartHR事業とは少し遠い領域で事業を作る。

・資金はSmartHRが提供、バックオフィス業務はSmartHR本体が巻き取り、さらにSmartHRの各種アセットを活用できることで、創業当初から経営者が新規事業に集中できる環境を用意する。


自分で起業するのが「ハイリスク・ハイリターン」、大企業の中で新規事業を行うのが「ローリスク・ローリターン」だとすれば、SmartHRのグループ会社は「ミドルリスク・ミドルリターン」であると表現されていました。

SaaSをゼロから開発するには資金が必要です。今やっている既存事業の利益の範囲で行うか、あるいは、開発のための資金を調達してから実施するか。

しかし前者の場合「いつ収益が上がるか分からないもの」に利益を注ぎ続けるのは経営者にとっては胃の痛い話ですし、融資を受けようにも金融機関を説得するのは至難の業です。VCからの資金調達も、バックオフィス向けの業務ツールという領域では難しいかもしれない、と考えていました。

これでは必要資金がかなり不足しそうだということで「資金調達をどうしようか」と考え始めていた私にとって、ミドルリスク・ミドルリターンの仕組みはとても魅力的に感じました。

「応募も殺到するだろうし、こういうのは相性もあるだろうから、選択肢の一つとしてダメ元でやってみようか」

私はそんな軽い気持ちでグループ会社の社長募集に応募してみることにしました。まさか数か月後に、自分がその当事者になるなどとは夢にも思いませんでした。


顧客が抱える問題の存在を証明できるか?

起業家の挫折と逆転の物語を通してスタートアップの経営手法を説いた書籍「START UP」では序盤、主人公の起業家・オーエンが、投資家のサムからある言葉をくり返しくり返し投げかけられます。顧客が抱えている問題とは何か?その存在を証明できるのか?——と。

どんなに優れたアイデアを思いつき、それをどんなにキレイな事業計画書に落とし込んだとしても、そこに書かれていることが絵に描いた餅であるならば、成功は難しいでしょう。

  • いま市場に存在する製品・サービスをとにかく使ってみる。

  • 顧客の声を聞きながら、同時にその裏にある本音や顧客自身も気付いていない課題を見抜く。

  • 何らかのモノを実際にユーザーに投げかけて、どんな反応を示すのか観察する。

これらの方法で仮説を検証し、仮説が正しいのか正しくないのかを見極める。正しくないのであれば事業を方向転換する——この活動をくり返し行うためには、経営者がプロダクトと向き合う時間、ユーザーと対話する時間をどれだけ多く持てるかが非常に重要です。

SmartHRのスキームに乗ることで、資金調達に奔走する時間を減らせます。バックオフィスを巻き取ってもらえれば、経営管理に費やす労力が削減できます。その分の時間を、プロダクトやユーザーと向き合うことに注ぎ込むことができるのです。

「そうですね、ちょっと機能にフォーカスしすぎていると思うので、ユーザーヒアリングをしてみて、もう一度、考えてみましょう。」

初回の面談で宮田さんからそう言われた後の数か月間、私はひたすら顧客が抱える問題について考え続けることになりました。

SmartHRのスキームに乗ったからと言って、仮説検証を繰り返し、脳に汗をかきまくってBurning Needsを掘り当てるしんどさが楽になるわけでは決してありません。しかし宮田さんをはじめとしたSmartHRの経営陣がさまざまな局面で相談に乗っていただき、事務作業や法的手続きの部分でバックアップが得られることはとても心強いものでした。

この数か月がなければ、私は元々のアイデアをもとにすぐさま開発を始めていたでしょうし、その先に今のBYARDは生まれてこなかったでしょう。

創業初期にプロダクトとユーザーに向き合う「時間」という資本が得られる。これこそがSmartHRのグループ会社として事業を行う強みだと私は考えています。



「BYARD開発記」シリーズのご紹介

「BYARD開発記」は全13話のシリーズになっています。

BYARDそれ自体は、数ある業務用アプリケーションの中の一つですが、その背景にはバックオフィスの実務家として、事業の運営者として感じてきた想いや経験があり、それをプロダクトの設計に込めています。

BYARDでは、私たちと一緒にバックオフィスの世界を変えるようなプロダクトを作る仲間を募集しています。もし開発記をお読みいただいて、ご興味をお持ちいただけたようであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

シリーズINDEX

第1章:BYARDへとつながった背景ストーリー

第2章:起業・開発で活用した手法

第3章:BYARDのプロダクト紹介

最終章


BYARDの採用情報は、以下のページよりご確認いただけます。

また、BYARDのこと、業務設計のこと、バックオフィスのことなど、CEO・CTOと気軽に話せるカジュアル面談も実施しております。「気になるけど、いきなり採用に応募するのはな…」という方は、ぜひこちらへお気軽にお申し込みください。


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