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あの人がたったひとつだけ知っている誕生石は、アメジストだった。

夜、すこしクールダウンしそこなって、眠れなかったから、ふらっと
カーテンを開けて夜空をみようと、そっと開けた。

その時、え? っていうぐらい眼の前にまっすぐに月が、鋭く光って
いた。

受け月だった。

月を見るのも久しぶりだな、うわ、受け月だって思ったら。

昔読んでいた小説を思いだしたりして余計に眠れなくなってしまったの
だけれど。

受け月をみたらそっと願うといいらしい。

<お皿に水がたまるように。こぼれないように、願いが叶う>

っていう一文があったような気がして。

あの月のお皿のようなところを見ながら願うかな? って思ったけれど。

不意にみかけただけなのに、いろいろお願いするのもなんだと思い、その
ままカーテンを閉じて眠ろうとしつつも、やっぱりもういちど見るだけは
見ておこうって思って、ふたたびカーテンを開いて見上げた。

昔、伊集院静さんの小説ばっかりむさぼるように読んでいたことがあった。

そんなある日。

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妻を亡くした男の先生と、画材屋さんに行って、わたしはクロッキーノートと、色鉛筆を買う。

レジでそれを包んでもらっているのを、わたしはただぼんやりとみていて。

そして先生は、レジのカウンターに背を預けながら、待ってくれていた。

その画材屋さんを去り際に、先生はすこしため息を吐きながら。

君と一緒に田舎に帰って、久しぶりにあいつのお墓参りでもするかな

って、すこし微笑んだ横顔を見せて言った。

そして先生がふいに、わたしの左の人差し指に視線を注いでつぶやいた。

アメジストだね

って。

男の方なのに詳しいんですねって言ったら、

ぼくも同じ誕生石だから。

って。

誕生石はそれしか知らない

って笑った。

はにかむでもほほえむでもない、誰かが真似できないようなちょっとだけ
さびしい笑顔だった。

そしてわたしは現実に引き戻された。

夢だった。

伊集院静さんの小説が好きすぎて、こんな夢をみたのかもしれないけれど。

あの夢の男の人は伊集院静さんだったのか定かじゃないけれど。

後になって、彼の誕生石が同じ2月のアメジストだと知った。

夜空をみていると、たぶん今生きている人だけではないここにはいない
たいせつな誰かとつながっているような気持ちが、夜の風と共に運ばれて
くる。

扉を開けて夜空をみるって、

そういうことかもしれないねって、

今はいない空の向こうの誰かに呟きたくなっていた。

あの夢から何年も経った今年の10月のはじめ。

わたしはnoteでいつも親しくしてもらっているなおみさんの作品に
ひとめぼれした。

アメジストのイヤリングだった。

なおみさんの記事を読ませてもらっていると、生活までもが詩的に営まれているような気がしてくる。

いつも密やかで美しい呼吸するものたちが息づいていて。

いつもわたしは、きらっと輝くなおみさんの世界が眩しくて、リアルなら、いつも遠くから指をくわえてみていたのかもしれない。

わたしは、なおみさんの対岸にいた、ひとりだったかもしれないけれど。

ある日、はじめてのコメントをなおみさんが寄せてくれた。

母との思い出の曲についての記事だった。

好きな音楽が似ていたことや、ドキドキするようないろいろな偶然が重なって、なおみさんの世界が、ぐっとわたしの世界をも彩ってくれた。

ありがとうの記事がこんなにおそくなってしまって。

いつも、母にも言われてました。

ありがとうをちゃんと言えてないって。

下を向きつつ、あらがろうみたいな、口の中でもごもごいうそんな子供でした。

ほんとうにあのイヤリング、わたしの宝物です。

ひとめぼれしたのは、アメジスト・スワロフスキーのイヤリングだけど。

なおみさんの醸し出すあの世界観に対してだったのかもしれないって

今は思ってます。

 今夜の一曲は、なおみさんへ捧げる曲 

♬poreheadさんのアメジストです

では、どうぞお聞きくださいませ♬

      すぎてゆく 秋のどこかに しおりはさんで
      受け月を いつかあなたと みていた夜は


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