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【ハードSFアニメの傑作】ジーンシャフトを紹介

今回はハードSFアニメの傑作「ジーンシャフト」を紹介したい。

「ジーンシャフト」

どんなアニメ?

サテライト制作でWOWOWにて2001年4月〜6月まで放送されていたオリジナルTVアニメ。23世紀を舞台に遺伝子調整された人類が宇宙からの脅威に立ち向かうハードSF。

世界観・あらすじ

21世紀後半、人類は無秩序に欲望を追い続けその抑制もできず、いたずらに資源を浪費し環境を破壊した。さらに、根拠のない主義・主張に踊らされ闘い殺し合って滅亡寸前にまで追い込まれた。人類は滅びを回避するため、自らの遺伝子を操作し進化する道を選択した。
遺伝子を調整され受精段階で人生のほぼ全てが決定されるようになり、男女比は1:9が最もバランスが良いとされ「地球統合機構I.E.O」によって人口は管理された。人々は恋愛感情や支配欲を捨て社会は安定を保った。こうして23世紀、完全な社会が完成した。

1話冒頭の世界観の解説

安定を迎えた23世紀だったが、宇宙から未知の「リング」という脅威が襲来する。リングはその名の通り、直径約500kmの金色に輝く輪っかで、変幻自在で神出鬼没。そして人類への明らかな敵対行動を示す。

未知の脅威「リング」

「リング」の脅威に対抗するべく、人類は初の超光速航行が可能な宇宙戦艦「ビルキス」を建造した。ビルキスは木星の衛星ガニメデで発見された異星人文明のテクノロジーで建造された兵器「シャフト」の母艦となっている。

「シャフト」

第1話にてリングが出現し、宇宙空間からカリフォルニアにある統合軍の基地へビームを放ち壊滅させた。
待ったなしの状況の中、訓練中だったシャフトのパイロット候補生たちはビルキスへ招集され、リングの殲滅と「Sミッション」と呼ばれる極秘任務に就く。
主人公「ミカ・セイドウ」もパイロット候補生の一人である。

「ミカ・セイドウ」

シャフト

シャフトの制御は異星人の言語によって記述されたソフトウェアで行われる。人類の現行のプログラミング言語に翻訳されてなんとか稼働状態にあるが、誤訳などによるバグが多く作中で何度もフリーズ等の機能不全を起こしている。

シャフト操縦コンソールの画面

そのため、ビルキス艦内にはシャフトの制御プログラムのデバッグ用の部屋が存在する。そこでデバッグ部隊が不眠不休でバグフィックスに勤しんでいる。
23世紀になってもシステムエンジニアのデスマーチぶりは変わらないというのは泣けてくる。

デバッグ部隊が缶詰になっている部屋
不眠不休でデバッグにあたる

リングと古代異星人

リングの襲来より5年前、人類はガニメデにて古代異星人の宇宙船を発見した。宇宙船の残骸=遺跡からは異星人の遺骸と記録媒体のような物が見つかり、この古代異星人こそが太陽系の先住民と言える種族であることが判明した。

異星人の遺骸

見つかった記録媒体からは異星人が滅んだ原因と兵器の設計図のデータがサルベージされた。
記録媒体によると太古の昔から太陽系の知的生命を監視する「オベラス」という存在がいることが分かった。
オベラスは自身が邪悪と判断した知的生命の元へリングを遣わせ、滅ぼすというのである。異星人の母星も150億年前にオベラスによって破壊され消滅してしまった。
現在の火星と木星の間に存在する小惑星帯は、異星人の母星の成れの果てである。また、人類はサルベージされた設計図を元に「ビルキス」と「シャフト」を建造した。

つまり現在、人類もオベラスの標的となっており「Sミッション」とはオベラスの所在を明らかにして人類への脅威を取り除くことが目的なのである。

オベラスとは一体何者なのか、またその目的とは?

古典SFからの引用・オマージュ

ジーンシャフトを語る上で欠かせないのが古典SFからの引用・オマージュだろう。
まず、各話のサブタイトルが全て古典SF小説のタイトルから引用されている。第1話が「惑星(ほし)を継ぐもの」というサブタイトルだが、これは言うまでもなく「星を継ぐもの」から取られている。
特に4,5,7話のサブタイトルは小説名をそのまま引用しているので、ファンはニヤリとできるかもしれない。

超傑作SF「星を継ぐもの」

また、古代異星人の設定も「星を継ぐものシリーズ」に登場するガニメアンを強く意識している。太陽系の先住民、人類よりも大きな体躯、優れた文明を築いていたが太陽系から去った点などが共通している。作中では古代異星人のことを「巨人」と呼称しているが、これもガニメアンへのオマージュだろう。

随所に古典SFからの引用やオマージュが散りばめられており、アニメファンのみならずSFファンも楽しめる作品となっている。

総評

古典SFをそのままアニメにしたような作品で「観るハードSF」と言える傑作オリジナルTVアニメである。SF的なお約束も数多く存在するので、ある程度のSF的教養は求められる。
アニメファンにもオススメできるし、SFファンなら一見の価値ありという作品に仕上がっている。
特に第6話はアニメとしても、SFとしても良く出来た回であるので見どころである。



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