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【宇宙を巡る兄妹の愛憎劇】奏光のストレインを紹介

今回はスタジオ・ファンタジアが送る名作SFロボットアニメ
「奏光のストレイン」を紹介したい。

「奏光のストレイン」

どんなアニメ?

「AIkaシリーズ」や「ナジカ電撃作戦」「ストラトス・フォー」でおなじみのスタジオ・ファンタジアが制作したSFロボットアニメ。
2006年11月から〜2007年2月までWOWOWノンスクランブル枠で放送されていた。登場人物の名前が児童文学作品「小公女」などからとられており、作品のモチーフにもなっている。

世界観・あらすじ

遥か遠くの未来、人類は宇宙に進出してその勢力を「ユニオン」と「ディーグ」へ二分し、数世紀に渡って争っていた。
ユニオンはあくまで戦争は人の手によって行われるべきという思想を重んじ、一方ディーグは戦争を外交手段とみなし、無人兵器などを用いて合理的かつ効率的に行っていた。

名門ウィーレック家出身の主人公「セーラ・ウィーレック」はユニオン陣営に属する惑星グラベラの空間機甲兵科学院へ通っていた。学院は「ストレイン」と呼ばれる兵器のパイロット「リーズナー」を養成する機関である。
セーラは5年前に優秀なリーズナーとして130光年離れた戦場へ出撃していった最愛の兄の後を追うべく、学院で日々友人たちと訓練に励んでいた。

「セーラ・ウィーレック」
セーラたちが搭乗する「ストレイン"フリッサー”」

ストレインを操縦するためには「ミミック」と呼ばれる装置が必要となる。ミミックとはリーズナーが受精卵の時、同一の胚から分割・培養された双子の脳が用いられており、この脳を介することによりストレインの操縦が可能となる。ミミックは原則として修理や交換が不可能で、何らかの理由で失ってしまえばリーズナーとしての生命を絶たれることになる。

画像の左から4名が「セーラ」とその友人たちで
抱えている箱が「ミミック」

ある日の夜、惑星グラベラをディーグが保有する無人兵器群が襲う。
学院にも無人兵器「トゥモールが」が現れ、訓練生が暮らす寄宿舎などが襲撃を受ける。突然の襲撃に学院の教官もストレインにて応戦するが、物量で勝るトゥモールに撃破される。

無人兵器「トゥモール」
トゥモールに撃破される「ストレイン」

自分たちの学院を守るため、セーラと友人たちは未だ無事であった格納庫からストレインへ搭乗し出撃する。
無人兵器を相手に訓練で学んだ通り見事に撃破を重ねていったが、突如黒いストレインが現れる。友軍機かと思ったその時、黒いストレインは襲いかかってきたのである。

「ストレイン”グロワール”」

ストレインはユニオン陣営でのみ運用されており、ディーグには存在しないはずなのである。そのため、友軍と油断した隙にセーラの友人が撃破された。驚く間もなくまた一人と黒いストレインに撃墜されていった。
友人の死を前に激昂したセーラであったが、黒いストレインの驚異的な機動に翻弄される。そして、最後に残った友人までもセーラを庇いその命を散らせたのである。

「セーラ」を庇い命を散らす友人※右

爆風に巻き込まれ墜落したセーラだったが、偶然にも先ほどの黒いストレインがコックピットを空にして着陸している姿を発見する。黒いストレインのリーズナーを追い、施設へ潜入するセーラ。
足音を追い、ついにストレインへ乗り込むところを追い詰めたセーラだった。謎の少女を抱えながらストレインへ乗り込もうとするリーズナーに向けて「動くな!裏切り者」と激しく罵りながら銃を向ける。ディーグに所属しながらストレインを駆けり、友人たちを殺した相手にセーラは殺意を向けるのであった。

施設から回収され、抱えられている「謎の少女」

その時、黒いストレインのリーズナーが振り返る、その人物はなんと5年前に130光年離れた戦場へ旅立ったはずの兄「ラルフ・ウィーレック」だったのだ!

セーラの兄「ラルフ・ウィーレック」
5年前、戦場へ旅立つ直前の兄

裏切り者の正体が兄であることを知り、言葉を失うセーラだったが兄は一言も発することなく、ストレインへ搭乗してその場を立ち去ろうとする。
セーラも近くへ乗り捨てられていたストレインを借り、真相を確かめるため後を追うが、先程と同じく撃墜されてしまうのであった。

再び撃墜される「セーラ」

近くの湖へ墜落したセーラだったが、その足元には撃墜されたはずみで破損したミミックの姿があった…
最愛の兄を追うためリーズナーとして日々訓練を重ねていたが、突然の兄の裏切りと友人たちの死、そしてリーズナー生命が絶たれたことに声を上げて涙する…

破損したセーラの「ミミック」

衝撃の展開が続くがなんとこれが第1話である。順調な学園生活から一転してセーラの絶望が丁寧に描写されている。

再び力を手にする主人公

兄の裏切りにより全てを失ったセーラは名前を「セーラ・クルス」と偽り、惑星バジオンの総合戦術学校へ編入していた。
そこでセーラは「ギャンビー」と呼ばれるストレイン以前に主力機として運用されていた機動兵器の訓練に没頭していた。一日も早く再び兄を追うため、睡眠時間などを削りながら単独で訓練に明け暮れ、なりふり構わない姿勢が周囲との軋轢を生じさせていた。

ストレイン以前の主力機「ギャンビー」
※操縦にミミックを必要としない

セーラを含む機動歩兵科の生徒たちは卒業に必要な「亜光速演習」に向けて演習艦「リベルタッド」にて訓練に励む。ある日、訓練を終えたセーラは格納庫の隅で謎の人形を見つける。人形の背中には「エミリィ」と刻印され、さらに内部にはミミックが収められていた。セーラは何故かその人形を気に入ってしまった。

格納庫の隅で放置された「エミリィ」

訓練を終えるたび、エミリィへ会いに格納庫へ向かうセーラは、そこで技術工兵科の教官「メルチセデック」と「カアマイクル」に出逢う。二人は演習艦内で趣味の一つとしてストレインの自作を行っていた。
そこでセーラは二人に自作しているストレインに、自身が搭乗すると言い放つ。ミミックを持たないギャンビー乗りにはストレインを動かせないと否定するカアマイクルであったが、起動実験にもなることからメルチセデックは快諾したのだ。

「カアマイクル※左」と「メルチセデック」

物は試しとエミリィをコックピットにセットし、二人が自作していた
「ストレイン”ラムダス”」の起動にセーラは取り掛かる。通常、他人のミミックではストレインを動かすことはできないが奇跡は起きた。
エミリィとセーラがリンクを果たし、ストレイン”ラムダス”は起動したのである。

セーラが新たに駆ける「ストレイン”ラムダス”」

その後、セーラは再びリーズナーとして復帰し演習艦リベルタッドから兄ラルフが率いるディーグの大艦隊を迎え撃つ!

おぞましい真実

セーラの兄が率いる大艦隊から執拗な追跡を受けるリベルタッドだったが、その理由がエミリィにあるのでは?と考えたメルチセデックたち。エミリィ内部のミミックはなんと600年前の最初期のものだった。ミミックを解体して調査を進めるが、そこに納められていたのは人類のものとは異なる生命体の脳髄だった。

「ミミック」の中身

真相を探るべくセーラとエミリィは通常よりも深いリンクを試み、納められていた脳髄から秘められた記憶を読み取る。
脳髄から送られてくる過去のビジョンは驚くべきものだった。人類とは異なる文明の街並み、そして現在から遡ること600年前、エミリィたちの宇宙船はユニオンの資源衛星に不時着してしまった。

人類とエミリィたちとのファーストコンタクト

エミリィたちは外見こそ人類でいう女の子のような姿をしているが、肉体の組成はまるで違う正真正銘の異星人であった。
さらに研究が進められていく中でエミリィたち異星人は、異なる個体間で意識を共有していることが判明する。何光年離れていてもタイムラグなしで意識を共有する、その能力に目をつけた人類から兵器転用のため、凄惨な人体実験を受けることになる。麻酔なしで生きたまま解剖され、全ての個体でその苦痛を共有する地獄を味わったのだ。

エミリィたちの種族

単なる資源衛星では研究に限度があるため、研究成果とエミリィたちサンプルを乗せて惑星グラベラへ艦を発進させた。しかし、突如ワームホールが出現し異星人の他の仲間がエミリィたちを奪い返そうと襲撃してきたのだ。
亜光速航行でグラベラに向かっていたが、その時代の人類にはまだストレインは存在せず、亜光速航行中に戦闘する技術はなかったのである。対して異星人はストレインによく似た兵器で亜光速戦闘を挑んできたのである。

ストレインによく似た異星人の兵器

追い詰められた人類は研究成果の一部をグラベラへ送った。亜光速航行中は主観時間では数時間でも、客観時間では数百年にも相当する。研究成果の一部だけを先に送ることで、上手く行けばすぐに数百年後の友軍が救援しに来ることを期待したのだ。
期待通り、600年後の人類が送られた研究成果を元にストレインを開発して救援にきたのだ。その救援部隊には5年前に130光年先の戦場へ旅立った、セーラの兄ラルフの顔もあった。

救援に向かうラルフ

友軍を助けるため、ストレインによく似た兵器を次々と撃破していくラルフだったが、衝撃の光景を目の当たりにする。撃破した兵器のコックピットから年端もいかないような少女が飛び出してきたのだ。
それこそがエミリィたち異星人であり、ラルフはその姿を妹セーラに重ねて悲しんだ。ユニオンがそして人類が犯した過ちに気づいたのだった。

仲間を助けて欲しいと懇願する異星人

直後、ラルフが最後に手にかけた異星人が新たなワームホールを開いた。そのワームホールからセーラたちが今いる時間軸へ跳躍してきたのである。跳躍の最中、ラルフの脳内にエミリィたち異星人が受けた凄惨な実験のビジョンが流れ込んできて同じ苦痛を味わう。半ば発狂しながらラルフはユニオンへの復讐心に取り憑かれてしまう。
そして、ラルフはユニオンへ復讐するため、近くを通りがかったディーグの艦船へストレインごと投降したのだった。

人類が異星人たちへ行った仕打ちはあまりにも酷い。異星人のビジュアルが年端もいかない少女のような姿をしているから尚更、悪魔の所業に思える。
兄ラルフが突然、見ず知らずの異星人相手に感化され裏切ったように見えるが、凄惨な体験を言語ではなく脳内で同じビジョンを追体験したからこそである。同じ苦痛を味わった者同士、居ても立っても居られなくなったのだろう。
セーラは最愛の兄であり、友人たちの仇でもあるラルフを止めることはできるのか?宇宙を巡る兄妹の愛憎劇はクライマックスを迎える。

総評

1クールで非常によくまとまった名作SFロボットアニメである。
光速に近づけば近づくほど主観の時間にズレが生じるという、ウラシマ効果を見事に設定や脚本に落とし込んだ点も高評価である。
2006年当時を踏まえてもCGのレベルが高く、ストレインがヌルヌルと動くところも非常に素晴らしい。同時期の「ゼーガペイン」や「REIDEEN」などはCGに物足りなさを感じたが、本作は今観ても質が高いと言えるだろう。
演出もあるが、そもそもストレインのモデリングのクオリティが高い、そんな気がするのである。
1クールで完結する面白いアニメが観たい人にぜひおすすめしたい。








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