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人はなぜ集団を志向し、盲目になるのか?ジョナサン・ハイト「社会はなぜ左と右にわかれるのか」

人はなぜ集団を志向し、盲目になるのか?ジョナサン・ハイト「社会はなぜ左と右にわかれるのか」

本書の書評も、最終回になる。

今回は、第三原理「道徳は人々を結びつけると同時に盲目にする」だね。

われわれは、利己的でありながら、集団を形成する。「私たちの九〇パーセントはチンパンジーで、一〇パーセントはミツバチなのだ」(本書より)。

特に、「宗教が進化の歴史のなかで重要な役割を果たしてきた」(本書より)ことは注目に値する。

宗教ね。

「農耕が始まって以来、宗教心は、宗教の実践とともに進化し始め、やがて大規模な道徳共同体を築くようになった」(本書より)。この本の特徴としては、こういう進化心理学的なアプローチを重視していることだ。

宗教を応用すれば、政治も説明できるというわけだね。

そうだね。なぜ、左にいく人もいれば、右にいく人もいるかは、心理学者ダン・マクアダムズの理論が参考になる。人格のレベルを3つにわけるんだ。

3つ?

「気質的特徴」「適応性格」「人生の物語」の三つだ。

「気質的特徴」ってなに?

「さまざまな状況下で現れる、より一般的な性格」(本書より)をさす。子供の頃から老いるまであまりかわらない。遺伝の影響も強い。

「適応性格」は?

「成長するにつれ現れる性格のこと」(本書より)だ。「特定の環境や挑戦に反応することで発達する性格」(本書より)だ。

「人生の物語」は?

「人々が自己の生き方の理解のためにつむぎ出す物語」(本書より)だ。気質的特徴と適応性格の定量的データを、この物語に関連づけるんだ。思春期の自己と、大人の政治的アイデンティティをつなぐものだ。

この三段階のレベルで、左にいくか、右にいくかが決まるんだね。

そうだね。最終段階の「人生の物語」ができる頃には、政治的立場も決まってくるわけさ。

なるほどー。

ところで、ハイトによると、人間には、「ミツバチスイッチ」がある。利己的にふるまっている個人でも、このスイッチがオンになると、集団第一に行動する。

たとえば、どういうときに、ミツバチスイッチがオンになるの?

いろんな場合があるけれど、わかりやすいのは、レイブだね。

みんなで、音楽にのって、踊るんだね。

そうだね。たとえば、日本の企業のトヨタなどでは、朝にみんなでラジオ体操するでしょ。

やるね。

そうすると、スイッチもオンのほうにスライドするわけよ。

ミツバチスイッチなんて、原因あんの?

オキシトシンや、ミラーニューロンが、候補として挙げられる。

オキシトシンって?

愛情ホルモンと呼ばれるホルモンで、これがでると、内集団への愛情が増大するんだ。

ミラーニューロンって?

ミラーニューロンは、他者の行動や感情を観察する際に活動する神経細胞だ。これらのニューロンは、他者の行動を理解し、自分の行動を調整するのに役立っている。人の行動や感情が伝染するのは、この、ミラーニューロンの働きによるものだ。集団形成には、共感が重要だが、ある実験で、利己的なプレイヤーが電撃を受けても、被験者がミラーニューロンを用いた共感を起こすことはあまりなく、喜びを感じる場合すらあったそうだ。

進化心理学的には、どう説明するの?

フリーライダー問題というのがある。要するに「ただ乗り」だ。こいつを許すと、集団がそもそも形成できない。

そうだね。フリーライダーが一番得をするのなら、集団形成なんて、バカバカしくてできないよね。

フリーライダー問題を解決するものとして、道徳が挙げられる。道徳に反して利己的な行為をする者(フリーライダー)は、殺されるかもしれないし、不名誉な評判が立って、配偶者にも恵まれず、結果子孫を残せない。

なるほどー、道徳があると、フリーライダー問題、解決するね。

そして、より強い集団が進化の過程で、生き残る。道徳によって、フリーライダーを抑制・統制することに成功した集団だけが、生き残るんだ。

最後の、道徳が人々を盲目にする、は?

前回書いたように、リベラリスト、リバタリアン、社会保守主義者は、それぞれ違う道徳観を持っている。だから、相互理解が難しく、自分たちの道徳に盲目になってしまう。

どうすればいいの?

「あなたがよその集団を理解したいのなら、彼らが神聖視しているものを追うとよい」(本書より)。そうしないと、理解できず、建設的な議論が、いつまで経ってもできないんだ。

それには、前回の6道徳基盤理論が、役に立つね!

自由・ケア・公正・忠誠・権威・神聖、の6基盤だ。復習になるけどね。

日本に応用すると、どうなるんだろうね?

それは、ボクも考え中だ。みんなで、一緒に、考えようぜ!

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