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世間に怒り続けるのを止める
『世の中ずいぶん舐めて生きてるよな』『つまらない。描くの辞めたら』『本当に人のことを思えばこんなことはできないと思います。彼は同じ人間なのでしょうか』
今日も私は匿名で世の中の怒るべき情報に強い言葉を書きつける。ネットの中にはたくさんの憤ることのできる情報があふれている。私はその情報に率直な気持ちをぶつけている。
いくつかコメント欄に書き終えたとき、外でカラスの鳴き声が聞こえてきた。朝がやってきた
滅びの向こうで輝くまで
妹が透明で硬くなっていこうとしていたとき、姉である私は水を求めて山の麓を掘っていた。
五日、山間の石だらけの干上がった川を掘っていると、湿り気のある土をみつけて、そこからさらに半日下に掘り進めてようやく地下水を見つけることができた。泥へと顔をつっこみ水をすすり、しばらくその冷たさを感じていた。
私は背負いかばんのなかにしまっていた瓶に水を詰めて、他の彫っていた穴をすべて埋め直し、肝心の水がで
今年一年どうだった?
時間は過ぎている。気がついたら暑くなって、寒くなり、また一年が経過している。久しぶりに二人揃っての休みの日に近くの山道を散歩していると、それまでに何も言わずに歩いていた君が聞いてきた。
「今年はいい一年だった?」
君が無邪気な顔で訪ねてくる。まだ一年は三ヶ月も残っているのに気が早いな、と思ったがもう三ヶ月しか残っていないのだ。今年は社会情勢的に色々大変たったが、それでも時間の流れ自体は変わらないは
本を読む、本が呼ぶ、本当に?
青空の下で誰もいませんようにと呟いた。そんなに小さな声でなかったとしても、周りには誰もいなかったからその願いは聞き届けられたことだろう。
彼女は右手に本を持っていた。偉大な嘘つきが自分のことを書いた本だった。書いた人は生まれた時から嘘つきで両親が嘘つきだったからそしてその地域に住むもの全てが嘘をついていたから必然的に自分も嘘つきになったと言う事だけだ。嘘について罪悪感を感じている事はなかった。
終わる町の終わることがない店
とある海沿いの地方都市に出張でやってきた。車で半日、だいぶ遠くまで来てしまった。自分ひとりで旅をしたいと思ってもくることはないだろうと思う場所だ。
他の出張仲間たちと一緒に飲みにいく約束をしたため、その時間までふらふらと町歩きをすることにした。
海沿いの地方都市は店が閉まるのが早い。休日ならば尚更だ。雑草が茂る空き地をみてはここにかつてはビルが建っていたのだろうと想像する。そして残った隣のビルの
変化に傷ついてから変質するまで
なにかになろうとしてなににもなれなかった。
と、ひらがなで書くと気持ちがいい。発音しても「な行」と繰り返しがあって、いい感じになる。変化への失望を表している言葉は今の常日頃からチェンジ!を求めるご時世には嫌な言葉かもしれない。
ま、今はとてもカレーを食べたい気分だけど自宅に昨日買っていたサバの切り身を食べなきゃいけないとか、そんな大したことないときでも使うことができる。
でも大したことあると
真夜中、なんか食べたいときに働く教養
真夜中に目が覚めて眠れなくなるとなんだかお腹が空いてくる。布団の中で寂しくなるときだ。体の向きを変えたりして、心臓の位置を楽なようにしてごまかす。でも心ではラーメンやお茶漬けなどの炭水化物が食べたい、血糖値がきゅーんと上がって眠くなってくるからだろう。
でも食べる必要のないご飯だとわかっている。今食べなくても生きていくために必要なものではない。だから食べなくてもいい。だけど食べたい。でも…を繰り
長い人の隣に普通の人、その後ろに無関係な人
真夜中の十二時過ぎ、家への道を歩いていると前方に2人組の男が見えた。片方は普通の男性にみえた。もう片方はずいぶんと体が長い。頭がどこにあるかみるために、天を見上げなければならなかった。普通の男性4人分くらいの長さがあるだろう。首が長ければろくろ首、胴だけ平べったければぬり壁だが、その長い男は足も胴も首もちょうどいい。普通の人間のバランスで、異様な身体のありかたをしている。
隣の男は長い男を気にする
眠れない夜が永遠に続きますように
体が疲れてもうまく眠れないときがある。むしろ目が冴えてしまうことが多い。余計なことを考えるからだろうか、まだイケるとむりに頑張ろうとしているのか、わからない。でも急になにかを取り戻しに行かなきゃという気持ちに襲われることがある。遅れている電車をホームで立ったまま待ってソワソワしているような気分に似ている。これから向かう先とは反対側を覗き込みながら、まだかな、まだかなと遠くを眺めている。本当にくるの
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