長い人の隣に普通の人、その後ろに無関係な人

真夜中の十二時過ぎ、家への道を歩いていると前方に2人組の男が見えた。片方は普通の男性にみえた。もう片方はずいぶんと体が長い。頭がどこにあるかみるために、天を見上げなければならなかった。普通の男性4人分くらいの長さがあるだろう。首が長ければろくろ首、胴だけ平べったければぬり壁だが、その長い男は足も胴も首もちょうどいい。普通の人間のバランスで、異様な身体のありかたをしている。
隣の男は長い男を気にすることなく、おそらく長い男のほうが歩幅を調整して、2人は同じ速度で歩いている。その姿を眺めながら夏の猛暑も過ぎた涼しくていい夜だなと思っていた。
どこにいくのか気になったが、私は信号のない交差点で曲がらなければならなかったため直進していた2人組とは別れてしまった。あれくらい目立つ人なのだから街中ですぐにみかけるだろうと思っていた。
次の日、同じ道を通ったとき、私は思い違いをしていたことに気づいた。昨日2人組が歩いていた道には電信柱が建っており、長い男の頭の位置だと垂れ下がった電線がひっかかる。これではもし屈んで電線の下を通ったとしても、あんなのしのしと2人で並んで歩くことはできない。
長い男とは私の妄想あるいは秋の夜の幻かもしれない。それでもいいし、幻にしておいたほうが余計なことを考えなくて済む。

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