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【特集】「ニンテンドーラボ」の解読。

"遊び(あそび)とは、知能を有する動物(ヒトを含む)が、生活的・生存上の実利の有無を問わず、心を満足させることを主たる目的として行うものである。"(Wikipediaより)

先日、NINTENDO LABO(ニンテンドーラボ)という、ニンテンドースイッチを使った“新しいあそび”が発表されました。
知っている方も多いかもしれないですが、まずはどういったものか動画を観てほしいのです。

ものすごくカンタンに言うと、ニンテンドースイッチの周辺機器を自作できる段ボールキットと対応ソフトの発表。てなところでしょうか。

私個人にとってこの衝撃はあまりに大きく、多くの人にとっても目から鱗、意表を突いて、ワクワクしながらも発想に舌を巻き、くやしがったことだろう。(使わない言葉使いまくってみてるので合ってるかもわからん)

しかし一方で、ゲーム好きの間からも「なんだこれ」「ちゃんとした周辺機器を出せ」「壊れたらどうしよう」みたいな声も少なからずあるのかなぁと。
みなさんはどう思いましたか?

今回のニンテンドーラボの発表について、もちろん任天堂は野暮な補足説明なんてほとんどしませんが、任天堂の考え方とか、いま社会がどういう状況だとか、そのあたりを自分なりに補完して、文章として少しまとめてみようと思います。
ネットで探せば言われてる事ばかりかもだけど、長々と書いたのでどうぞ。

■メイカーフェアで感じた「試行錯誤」

2017年の夏、私は知り合いの誘いで東京ビッグサイトに行っていました。訪れたのは、「メイカーフェア」というもの。

この「メイカーフェア」とは、個人や企業問わず、電子工作やクラフトなどのあらゆる「自作のもの」の展示会で、作品を見て触れて楽しんだり、工作できるコーナーで体験することもできる、まさに「DIYメイカーの祭典」です。

会場は子連れの家族での参加も目立ち、家族が多かったところでひときわエキサイティングな空間だったのは、「ナーディー・ダービー」。

▲「ナーディー・ダービー」の様子。上から車を落とすように走らせる。ここは飛距離を競うところ。

これはワッシャーをタイヤ代わりにしたミニチュアカーを作り、コースを走らせて競うというもので、アメリカ起源のレースゲームのようです。
動力がないため、坂道を下ることでその速さや飛距離などを競います。

▲子どもたちはコレを見てまずタイヤ部分を作る。あとは自由。カッコつけたり、安定感を重視したり。

子どもたちは、その場のパーツで組み立てた車を、いつ走らせるか修理するかも自由にできます。
そうなると、子どもはとにかく作って試すの繰り返し。このコースを脱線せずに成功するまで、より速く走るまで、トライアルアンドエラーで繰り返します。
子どもたちはこの「ナーディー・ダービー」に夢中になって楽しんでいる様子でした。(知り合いのお子さんと一緒にやりましたが、なかなか楽しんでいました)

▲著者(こたろ)の作ったミニチュアカー。テーマは民族衣装。肋骨を思わせる気持ち悪いボディができ上がりました…。

私は単純に、最近のテレビゲームやスマホにハマる子どもたちもいれば、まだまだこういったアナログな手作業にはしゃぐこともあるんだなぁと感じていました。

そして、このときは楽しいトライアルアンドエラーが子どもたちにとって、とても大事なことであると、なんとなく気づいたような、気づかなかったような。

とにかくここで言いたいのは、「ナーディー・ダービー」では、目的のために子どもたちが自主的に試行錯誤して遊んでいる、ということ。なのでした。  


■「マイクラ」人気で天才少年少女に?

さて。一方では近年、あるゲームにハマる子どもたちも目がつくことが。
Minecraft(マインクラフト)」。通称マイクラです。
さまざまなゲーム機、パソコンで発売され話題となったこのゲームソフト。その内容は、3Dのブロックでできた世界の中で主人公を操作し、開拓して自分だけの家や農作物を作ったり、モンスターを退治したりととにかく自由なもの。
大きな目的もありますが、この自由なゲームを子どもはとにかくこれを遊ぶ遊ぶ。タブレットなんかで遊ばせようものならえんえんと遊び続けます。
任天堂の3DS、スイッチでも発売されると、子どもに大ウケ。さらに人気は加速します。ダウンロードランキングでは常に一位を取るほど。
ここまで人気の上に任天堂はダメ押しで、お笑い芸人のよゐこが協力してプレイする動画「よゐこのマイクラでサバイバル生活」を制作して配信、もっともっと若いマイクラユーザーまでも増やすことにも成功しています。  

▲「よゐこ」による任天堂公式の配信動画。一見素人のプレイにしか見えないのだが、このゲームの何が楽しいのかは動画を観れば一発でわかる。というのが「よゐこ」の話術やプレイの仕方としてすごいところ。

ところで、話したいのはゲーム中に出てくる「レッドストーン」の話。
ちまたでは「レッドストーン」の専門書が出ているらしいのですが、実は「レッドストーン」とは“マイクラ”で使うアイテムのこと。
これを上手く使うことで、ゲーム内に自動ドアを作ったり、トロッコに加速装置をつけたり、自動で収穫してくれる装置を作ったりできる、多様な使い道のあるレアアイテムだそうです。
でも、なんでマイクラの攻略本ではなく、このレッドストーンだけで専門書が出てるのか。

正解は、この便利なアイテムの使用方法が、回路になっているから。
そう、これはプログラミングの技術
なのです。

“マイクラ”を遊ぶ子どもたち全員ではありませんが、ゲームを楽しく遊ぶためにレッドストーンを無意識のうちに“プログラミング”して使っているということなんです。  

なので例えば、「ウチの子ったらゲームばっかりしてだと思ったら、いつのまにプログラミングができるようになっている!?」
なんてこともあるかもしれません。…あるかな?

そんなゲーム「マイクラ」をこの一年ほど、プッシュプッシュで頑張っていたのが、何より任天堂なんですよね。
自社ゲーム機で人気のソフトだからという理由以上に、これは何かあるな。と感じなきゃならなかったんですね。

▲「マイクラ」公式レッドストーンハンドブック。これを読んで子どもは便利な世界を創り出すようだ。他にもこのような本がたくさん出ている。

■任天堂だからこそやれる「STEM教育」とは。

近年の教育のなかで注目されている、STEM(ステム)教育。これはアメリカ発祥の教育のようで、オバマさんが大統領のあたりから積極的に言われるようになってきたんですよね。
名前は以下の頭文字から取られたもので、それぞれScience(科学) Technology (技術)Engineering(工学)Mathematics(数学)となっています。
ぜんぶ引っくるめて、「理数系の思考」って感じに見えますが、要はハイテクな世の中に対応する教育をさせるってことで、プログラミングや何やらをやらせようということらしい。ただSTEM教育の良いところは、プログラミングそのものを学ぶことは本質ではなく、プログラミング的な思考、つまり「順序立てて試行錯誤しながら学び、解決する」ことを教育するというところ。

「ロボットが出てきて何でもしてくれるかもしれないっていう誰も先が読めない未来」が来ようとしている今の社会で本当に求められるのは、勉強そのものよりも自主的な行動、応用力、試行錯誤、問題解決という部分なのではないか。という考え方からできた教育なんですよね。

ん。そういえば、少し話が変わりますが、ニンテンドーラボのコピーに何かを感じませんか?  

【つくる・あそぶ・わかる】

もし任天堂がSTEM教育について考えてるのだとしたら…
ナーディー・ダービー」のように試行錯誤、楽しんで制作して…
マイクラ」のようにスイッチでワイワイとプログラミングで遊ぶことができて…
仕組みや回路、考え方、問題解決方法」が自然と頭に入ってくる…

さあ、ここまできたら、任天堂が「何かをやってのけよう!」っていう次のステップが、なんだか分かってきたような気がしてるでしょう?  
任天堂は、子どもを惹きつける力はもう十分に持っていたわけです。あとは、学ばせるだけ。のところまで来ている近道なのは一目瞭然です。

■"ニンテンドーラボ"がお母さんを変える?

過去に任天堂はニンテンドーDSで脳トレで脳を活性化し、Wiiでフィットネスを遊びと融合させてきました。
家庭になじむように、家族で遊べるようにと作られたファミコンをはじめとしたゲームたちですが、どこか子どもが画面に向かっている姿というのは、何をしていても「遊んでいる」にしか見えなくて、
毎日やっているだけで、少し長くゲーム機に触れているだけで、お母さんに怒られていたものでした。

しかし今回はどうでしょうか。
わたしには、自ら段ボールを組み立て、遊び、仕組みを理解しながら試行錯誤している様子は、まさに【STEM教育】、知育玩具を感じてならないのです。  

"遊びとは、非生産的である。"というのはフランスのロジェ・カイヨワという人物の執筆した『遊びと人間』のなかで挙げられた"遊び"の定義の一つだそうです。たしかにそのとおり、”非生産的”だと思います。
しかし、他人から(たとえばお母さんに)「非生産的だ」と言われてしまっては、本来の"心を満足させる"行為すらもできなくなってしまう。  

言い訳じみたことかもしれませんが、このニンテンドーラボならきっと、遊びながら学ぶことができるってコトなんですから、
もう、どうか世の中のお母さんは怒らないであげて。

参考:NintendoLabo , Maker Faire Tokyo 2017 , Minecraft

write by こたろ

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