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ハードボイルド書店員が「クリスマスイブ」に読みたい二作

明日は12月24日です。

私の職場はクリスマスよりも年末年始の方が混みます。だからここで燃え尽きるわけにはいかない。一方で、日々を燃え尽きるように生きてこそ根源の人間力が磨かれる。そんな気もしています。

そして社会人の毎日は仕事が中心。ということは。。。

ただ実際に365日そんな生き方をしていたら、確実に心身が壊れます。もちろん大丈夫な人もいるでしょう。「仕事の報酬は仕事」と豪語していた学生時代の先輩みたいな。でも少なくとも私はそこまでのワーカホリックではありません(もしそうだったら、とっくの昔に正社員になっています)。だからあくまでもマイペースでビートを刻み、休む時はしっかり休む。

誰かと同じ生き方をしないといけない理由はひとつもありません。

クリスマスイブも同じです。家族と楽しむのはいいことだし、友人や大事に想う誰かと一緒に祝う時間も素晴らしい。ただ、それらと同じくらい、ひとりで静かに本を読む過ごし方も尊重されてしかるべきではないでしょうか? 

かくいう私も仕事から帰ったら、家でのんびり寛ぎつつ↓を開こうと考えています。

トルーマン・カポーティ「クリスマスの思い出」の絵本版です。

いままでに読んだすべての本のなかで最も美しく、心に温かいものが広がっていくストーリー。その意味では、まったく内容は異なるけど太宰治「黄金風景」とツートップかもしれません。併せて24日に味わおうかな。

「黄金風景」は青空文庫でも読めます。紙の本だと新潮文庫の「きりぎりす」に収録されているので、興味のある方はぜひ。

どちらの作品にも共通しているのは、作者とほぼ同一人物である語り手の鬱屈した気分にひと筋の光を注いでくれるイノセントな存在。ミス・スックとお慶です。彼女たちは現在や過去に突きつけられた理不尽に打ちのめされず、柳のように柔らかく受け流している。憎しみや悲しみや妬みに屈して己を卑屈にせず、むしろそれらを知った分だけ他人に優しくする。

私には到底できません。いつまでも根に持ってウジウジするタイプなので。だからこそ歴史に名を残したわけでもない彼女たちを尊敬し、折に触れて二作を読み返しています。決して忘れたくないから。力づくや自己暗示ではなく、ナチュラルに人生を肯定できるしなやかな強さの存在を。明るい未来を信じられる健やかな精神を。

どうぞ素敵なクリスマスイブをお過ごしくださいませ。

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