「2025年大河ドラマ」の予習にオススメの二冊
早いものでもう8月中旬です。
9月になると来年用の手帳やカレンダー、家計簿がごっそり入ってきます。おそらく全国の書店員が「今年もそろそろか」と感じるはず。
来年用といえば、NHKの大河ドラマ関連。2025年は蔦屋重三郎が主人公を務める「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」です。
NHK出版のドラマガイド前編は、例年12月下旬の発売です。しかしそれまでにも各出版社がいろいろ出してくるはず。
前から蔦重に興味があり、本を何冊も読んできました。なので今回のドラマ化はとても嬉しいです。
まずイチ書店員として彼を尊敬しています。
本の出版を通じて政府の横暴に抗い、斬新なチャレンジをいくつも仕掛けて人々を楽しませた名プロデューサー。同時に経営者としてはシビアかつ手堅い一面も持っていました。決して粋だ通だという目につきやすい美点だけで語れる存在ではない。商売上の「清濁併せ呑む」をわかっていた大人だと確信しています。
また物書き志望としても、作家に原稿料を払うシステムを始めたことに感謝しています。
当時の書き手だと、たとえば山東京伝は裕福と思しき質屋の長男だし、朋誠堂喜三二や恋川春町はれっきとした士族。いずれも執筆からお金を得られなくても生活できた。蔦重はそういう人じゃなくても、面白い作品さえ書ければ職業作家として筆一本で生きられるようにしてくれたわけです。
こういったことをわかりやすく教えてくれる入門書が最近発売されました。↓です。
出版社はPHP研究所。著者は江戸料理文化研究所代表の車浮代さんです。
時代背景や文化の在り様が詳しく紹介されています。もちろん喜多川歌麿や葛飾北斎、曲亭馬琴といったドラマで活躍するに違いない有名人の生涯についても。10か月しか活動しなかった謎の絵師・東洲斎写楽の正体に関する見解にも説得力を感じました。
これだけでも予習には十分。しかし「もっと読みたい!」と知的好奇心に火がついたら、同じ著者による↓がオススメです。
出版社は双葉社。リストラにあった55歳の営業マンが江戸時代の吉原へタイムスリップし、蔦屋重三郎から人生や仕事の勘どころを学ぶストーリーです。いわゆる「ビジネス系時代小説」でしょうか。
ちょっとした言葉づかいや生活習慣、食事の作法などが新鮮でした。自己啓発的な意味でも読み応え十分。知る人ぞ知る名作だと思っています。
そもそも私が蔦重に関心を抱き、調べるようになったのは2013年に飛鳥新社から出た「蔦重の教え」の単行本に出会ったのがきっかけでした(購入したのは篠崎にある「読書のすすめ」です。ありがとうございました)。そう考えると、先にこちらを読むのもアリかもしれません。
お求めはぜひお近くの書店にて。