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今日の戯言

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ふと思いをよぎることを、メモのように気楽に書いています。
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#言葉

阿倍野のご老師

阿倍野のご老師

 「その道に入るんやったら、親や家族の死に目には会えぬと思え」「頂いたお座敷は断るべからず」とは、卒業後に亡父が言った言葉。流石に、年齢と共にペースが変わり最近は、時々お断りすることが出てきた。

 時代遅れに響く今日頃ごろだけれども、確かに父はそのような生き方をしていたなあと思い出した。決して善人ではなかったし、裏も表があるええかっこしいのところを、私は見事に受け継いでいる。と思えば、母の田舎風

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胡桃と栗の立ち話

胡桃と栗の立ち話

栗が胡桃に問う
私もあなたも、もうすぐ枝からもがれるのね。

そうよ
栗のあなたは、体の周りにたくさんの針をつけているわね。

ええ、だから私は地面におちたところを拾われるの。

あなたによく似た生き物が海にもいるって、カモメが言っていたわ。
あなたの何倍もの長さの、ピカピカの棘を持っているそうよ。

あら、それは初耳ね。私に似た生き物が海にいるなんて。
そもそも、私たち、海を見たことがあるかしら

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ステートメント草稿

ステートメント草稿

「置き去りにされた鏡」

 今朝、鏡の前に立っていた。
「幕間」と「鏡」この二つのタイトルの間を行ったり来たりの日々が続き、私はほうっと息を吐く。
鏡の表面は少し曇り、寝ぼけた老女の顔が映っている。その背後には緑の引き出しと、描きかけの絵に洗濯物。
手にしたスマートフォンで反転した自分を撮影する。

 インスタレーションの作品から「picture」にスピンオフしてしばらく経つ。私は物語や記憶の

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「鏡に息を」

「鏡に息を」

「幕間」と「鏡」この二つの間で制作がとどこっている。

「幕間」は一昨年前から昨年にかけて、”picture”つまり私にとっての制作媒体である絵、写真、動画、それらを全て指し示す言葉の中に現れた空間だった。インスタレーションの作品からスピンオフしてしばらく経つ。私は物語や記憶の発生装置として、インスタレーションの構造を作っていたから、 記憶の瘡蓋を剥がし続け、物語=ナラティブの闘争が重苦しくのしか

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その人の文字

その人の文字

 彫刻家の先生の手書きの字は、ミミズが書いた素描のようだった。 

 出だしを「こんにちは、午後も少しだけ頑張ってください」というふうに書き換えてみた。いつもの投稿ページは「こんにちは、午後も頑張ってください」とある。「少しだけ頑張ってください」というのは、先日87歳で亡くなった彫刻家の先生が、葉書に書いてくれた言葉だった。先生は、学校で教えてもらったというわけではない。たくさんの先生に教わったが

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音と声

音と声

 先週末から風邪をひいてしまった。熱はほとんどなし、食道は痛くもならないから、ご飯もいただくことができる。ただ顔の内側、身体が外気を入れて吐き出す管が全部炎症を起こしていた。コロナではなかったもののインフルエンザのような感染症だった。声帯と気管支の炎症で声が出ない。

 コロナが5類に入ってから、マスクもすっかり忘れ、雑踏から帰宅後のうがいも疎かに、暑くて乾燥した10月を無防備に過ごしたのが、原因

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大晦日

大晦日

 昨年は、29日まで展覧会の展示作業で遠方にいた。そう思うと、今年は12月中旬までに二つのグループ展が始まり、気が抜けたようで、その後の制作は「今日の一枚さん」だけになっている。なんとムラのある生活なんだろうと、思っていたがどうやらこれは自分の性分なのだと、干支の5周目を目の前にして気づいたことが本年の収穫か。

 11月は突然のカンファレンスに参加のために、作品について言葉で多国籍の人々に、伝え

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文字起こしAIちゃん

文字起こしAIちゃん

 作品についてのインタビューの文字起こしをしていた日曜日。
午後からざあっと大雨が降って、雨漏りがしないか少しドキドキしたけれど、幸いにも短い滞在で去ってくれた。

 45分間ほどのインタビューを、昨日はとりあえず聴きなおしてみた。
最近では、アプリを使って録音からスマフォでするのが定番なのかなと思いつつ、録音時は、いつものRoland R-05を使う。とりあえずWAV形式で録音しておく癖が抜けな

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