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何でもない日常

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記事一覧

失って初めてその大切さに気づいた話し!

 「失って初めてその大切さに気づく!」
 なんて悲哀に満ちていて、どことなくキザなセリフをいつ、どこで、誰が使うのだろうと思ってきた。
 しかし、そう言わざるをえない状況が誰にでも起こりうることを知った。
 早朝、寝ぼけたままトイレで用をたし、爽快感に浸りつつトイレットペーパーフォルダーに手を伸ばした。するとそこには何も無く、ペーパーを切る蓋がガシャンガシャンと空しく音をたてるばかりだった。仕方な

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借りたくもない金を借りた!

 借金は多くの場合、必要に駆られ自らの意思でするものだろう。 では、私のように借りるつもりも無いまま気づけば金を借りていたという人は、どのぐらいいるのだろう。
 先日ATMでお金を下ろそうとキャッシュカードを入れた。そしてATM傍の受話器に耳を当て、音声ガイダンスに従い機械を操作した。無事お金が引き出されほっとしたのもつかの間、「残高は○○円です」といつものように口座残高が読み上げられぬまま音声は

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地球には申し訳ないけれど、今だけは!

 重力が許せん。
 今日、初めてそう思った。
 今日は、ソファーに座り、膝の上にパソコンを載せ作業をしていた。
そして一息つこうと、テーブルのお茶が入ったマグカップを手に取った。
 すると、膝の上のパソコンはツルツル滑り、加速しながら、横向きになり床に落ちていった。
あ、やばい!と思った瞬間。
「ベキっ」
と嫌な音がした。
 触ってみると、パソコンの側面に刺していたUSBの先端が曲がり、薄くて冷た

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もしも私が洞窟に住む魚だったら

  私は全盲であり、障碍者だ。ただ、もしも私がこの場所に生まれなければ、人間として生まれなければ、障碍者ではなかったのかもしれない。
 社会が障害を作り出すという一つの考え方があることを大学の講義で知った。
 私が取っていた発達障害に関する講義で、文字の読み書きに困難さのあるディスレクシアという障害について学んだ。その時、もしもディスレクシアの特性を持つ人が、無文字社会の地域や民族に生まれたら障碍

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木曜日は控えめにいって苦手です!

 何でもない1日の出来事なんて数週間後、いや数日後には忘れているものだ。まるでグラスに入った水の中の氷がじわっと溶けて形を失い周りと同じ水になっていくように。
 だから1日分くらい普通の日のことを残しておきたい。
 ただ、今日は私の嫌いな木曜日だ。1週間の疲れが溜まって、寝たいのを我慢して起きても、後1日平日が残されていると思うと、落ちこむ、そこからスタートする木曜日なのだ。なんてことだ!
 朝起

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夫がやらかしました!

 私には同じく全盲の夫がいる。
 その夫は一昨日の夜、リュックからヌルヌルと油を滴らせながら旅行から帰ってきた。全く意味が分からない。
 夫は、火曜日から木曜日にかけて高校時代の親友とキャンプをする予定で出て行ったのだが、ひたすら雨が続き、結局1日目は友達の家に泊まり、2日目は山梨当たりの温泉付きホテルに泊まり帰ってきたのだ。
 しかし、帰りの電車でなんだか油臭いな、足元がヌルヌルするなと感じ始め

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I rush in to LUSh!(私はラッシュに飛び込む!)

I rush in to LUSh!(私はラッシュに飛び込む!)

 昨日難波の商店街を歩いていると、良い匂いのする店があったので突入した。
店に入ってみるとラッシュであることがわかった。目の見えない私たちのウィンドーショッピングは大体こうだ。美味しそうなソースと何かのやける匂いがする店に入るとたこ焼き屋さんであることが分かりお昼ご飯がたこ焼きになったり、甘い匂いがする屋台に近づいていくとたい焼き屋さんであることがわかりおやつにカスタードとあんこのたい焼きを買って

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このディープな大阪の片隅に

このディープな大阪の片隅に

 大阪のディープな下町に住始め、早2年。
 どんな街かというと、おばあちゃんの箪笥の中みたいなにおいのする路地があったり、できたてのたこ焼きの匂いが流れてくるバス停があったり、童謡がエンドレスに鳴り響く八百屋があったり、そこを埋めつくすバラエティ豊かな人々がいたり、そんな所だ。それら1つ1つがこの街を生き生きと描き出している。
 そんな街で私が出会った物や人を、少しここにだけ残しておきたいと思う。

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自分史上最大に揺らぎやすい決意を今ここに!

 痩せられず四半世紀生きてきた。
 小学生の時から、朝バナナダイエットとかフラフープダイエットとか、小豆水ダイエットとか。ありとあらゆるダイエットに挑戦し、その度に見事敗北してきた。
 テレビで特集されている痩せることのできた成功者を見かけるたびに自分のところにも痩せる神が舞い降りないだろうかと思う。既に他力本願で怠惰な自分を悔い改めることすらできていない。
 先日母から「父の体重が108キロにな

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コナツ元気かな!

コナツ元気かな!

 私の実家にはコナツという名前の犬がいる。
 私が小学5年生の8月に父の友人から貰って来た。もう13歳くらいになるのかな。
 名前は父がつけた。夏にやって来て小さかったからコナツとしたようだが、今ではでっかいフランクフルトにちっちゃい手足が付いたような風貌である。
 性格は人懐っこく誰にでも近づいていき、ペロペロと手とかを舐め回す。しかし意外と臆病なところもあり、人が来るとピアノの下なんかで2、3

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