地球には申し訳ないけれど、今だけは！

　重力が許せん。
　今日、初めてそう思った。
　今日は、ソファーに座り、膝の上にパソコンを載せ作業をしていた。
そして一息つこうと、テーブルのお茶が入ったマグカップを手に取った。
　すると、膝の上のパソコンはツルツル滑り、加速しながら、横向きになり床に落ちていった。
あ、やばい！と思った瞬間。
「ベキっ」
と嫌な音がした。
　触ってみると、パソコンの側面に刺していたUSBの先端が曲がり、薄くて冷たい基盤がむき出しになっていた。どうやらUSBからパソコンは落ち、USBの外のカバーが衝撃で吹っ飛んだようだ。
　中に入っていた、好きな本の点字データや頑張って取り込んだリスニングの音声データが一瞬にして消え去った瞬間だった！
　何でこんなことになったのか？
　暫く、そう考えた結果、重力があるからだという結論に至った。
　重力が、USBをパソコンもろとも床にたたきつけたからだ。
　思えば昔から、身体測定で、体重を減らすよう怒られてきたのも、段に気づかず落ちて、腰を痛めたのも、重力のせいだったのではないか。
　重力の少ない月に行けば、体重は軽くなるし、段から落ちてもけがをしなかったかもしれないし、USBも破壊されなかったはずだ。
　勿論、日頃酸素を吸って生きていられるのも、回転する地球から吹っ飛ばされずに過ごしていられるのも重力のおかげだ。
　しかし、USBを怖し、中のデータを無くしてしまったこの怒りや悲しみのやり場がどこにも無いので、今だけは重力のせいにさせてほしい。
　地球には申し訳ないけれど！