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なんでもない。

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記したつもりが消えていくもの。
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#循環

そういうものはそういうことだから。

そういうものはそういうことだから。

 季節的にも、今頃だっただろうか?
うつらうつらとしていたら、あの日のベンチに座っていた自分を手繰り寄せていた。

 確か、杉並区の妙正寺川の近くの公園。
あの時は、精神的にズタボロだった。精神的に追い詰められて余裕がなかった。笑顔なんて嘘のように忘れて、高校時代に読んだシェイクスピアの登場人物のように、苦悩に満ちた表情をして生気を失っていた。休みだから、髪はボサボサで化粧っ気なしのすっぴんにキャ

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白昼。

白昼。

 川沿いを歩いて、この場所まで来た。ここら辺ドラマの撮影にもよく使われるのよね。なんて独り言を呟いたら、急に右側の木がザワって揺れて、あの匂いを纏った風が全身を力強く、かつ優しくフワリと抜けた。

 背後に気配を感じて振り向いたら、彼がいた…。

『あ、昼間でも登場出来るものなんだ?』

「アハハ…まあね、第一声がそれ?」

『何時も夢の中でじゃない?それにメール中とはね…』

「僕が去った後、キ

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Automatic。

Automatic。

スタイリストの補助をしていた頃。

衣装を運び込む作業の途中で、
ある女性と少女を見かけた。
少し手前で止まり、通路を譲った。
二人は、ドアを開けられて、入室して行く。

小柄ながら、背筋の伸びたスタイル
あの強い眼差し。自分の親世代。
リアルタイムには知らないけど、有名な歌手だと
いうことは分かっていた。

その後ろから、線の細い、大人びた少女が、
戸惑いを隠せないような雰囲気で付いて行く。

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