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超獣ギガ(仮)

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昭和九十九年、東京。 晴海埠頭にモンスターが現れた。彼らは超獣ギガと呼ばれる、地球の正統進化外生命体。しかし、その出現は予期されていた。 圧倒的な力に蹂躙される人類。 反撃を開始… もっと読む
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#超音速スーパーバトル

【おさらい】超獣ギガ(仮)【好評連載中】

【おさらい】超獣ギガ(仮)【好評連載中】

 さて。今回は、回を増すごとにご好評いただいています(ありがとうございます)、#超音速スーパーバトル #連載小説 「超獣ギガ(仮)」のここまでをおさらいしながら、今後の展望などについて触れておこうと思います。
 何卒、お付き合いくださいませ。

 物語は昭和99年。架空の日本。クリスマスの朝。東京、晴海埠頭に謎の巨大生命体があらわれます。「あらかじめ予期された災厄」とありますように、そのモンスター

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#7

連載小説「超獣ギガ(仮)」#7

第七話「起動」

 超獣と超人の交戦が続いている、
 早朝の東京、晴海埠頭。

「なんじゃあれ」
 間もなくの対岸に飛び交う銃声。鳥谷りなはその巨影を視界に捉え、やや速度を落としながら走行していた。速度を緩めなければ、間もなく会敵する。弾む息。吐き出す白息。目指す先では、すでにチームメイトがモンスターと戦闘を開始している。
「ほんまに猿やねんな、超獣ギガって」
 明け方の山影が揺らめき動いているよ

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#8

連載小説「超獣ギガ(仮)」#8

第八話「跳躍」

 その日の朝の光について、彼女はよく記憶している。とりたて特徴のない、冬の朝の柔らかな陽光だった。言うならば、昨日によく似た光にしか見えなかった。昨日の朝。一昨日の朝。その前の日の朝の光。いくつ数えただろう。まだ静かに暗がる官邸の執務室にコーヒーを持ち込み、前夜の続きの議題に目を通し、次の会見に備えて原稿を用意し、あるいはもはや無目的にテレビとパソコンとスマートフォンから国内外の

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#9

連載小説「超獣ギガ(仮)」#9



第九話「天地」

 冬の朝の東京湾。水平線に目覚めた陽光はその丸みを弛ませることもなく、ひたすらに、恐らくは無目的に白黄熱を放つ。その日も昨日に似た青空が始まっていた。透き通る冬の空。
 上空約一五〇メートル。透き通る冬の青。東の太陽を左下にときおり眺め、花岡しゅりは跳躍を繰り返していた。溶け込もうとせず、その背後の青をゆく。
 階段を駆け上がるかのような動作で、左足を軸足に、右足の爪先が宙を

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#10

連載小説「超獣ギガ(仮)」#10

第十話「初陣」

「あれ、なに……」
 蓬莱ハルコは、その見慣れない風景に対して、その、たった一言をこぼして、白い息を吐いた。心臓がとくんと鳴った気がした。水色のストールが海風に揺れた。見下ろす岸壁、港湾には、夥しい血が流れている。半身。上半身。下半身。腕。脚。頭部。様々な人の部位と、もはや、判別ができない肉片たちが血を流して落ちていた。そして、装甲車、戦車。それぞれに横転して、脆弱な腹を天に晒し

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#12

連載小説「超獣ギガ(仮)」#12

第十二話「初陣」

 破裂音。もしくはそれによく似た破壊音。質量を持つ物体が破壊される、弾ける音。埠頭にそれが鳴り落ちた。質量、重量を伴う音塊が氷の溶け始めたアスファルトに跳ねて、そして消えた。
 いまだ戦闘の終わらない、東京、晴海埠頭。間もなく午前八時。十二月二十五日も八時間を刻んだ、午前。進化した人類と、正統進化外のモンスター、通称、超獣ギガの交戦が続いていた。
 
 対超獣ギガ(仮)を目的と

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#13

連載小説「超獣ギガ(仮)」#13

第十三話「記憶」

 昭和九十九年十二月二十八日。
 神奈川県横須賀市。

 閉め切ったカーテンの隙間から、白い光線が室内へ切れ目をつくっていた。かすかな風に布地が揺れる。冷気が忍び込んで、乾いた髪を揺らした。足元に冷たくなった白いシーツ。毛布を掴んで、引き上げた。膝を抱くように小さくなって、スマートフォンで日時を確認する。いつから眠っていたんだっけ。何日経っただろう。まさかとは思うけど、ひょっと

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#14

連載小説「超獣ギガ(仮)」#14

第十四話「空洞」

 同日、昭和九十九年、十二月二十八日。
 東京都千代田区。帝国ホテル跡地から、国会議事堂、その周辺地域の地下に建造されていた大質量空間。通称、大空洞。

「なんだこれは」
 見上げる。その視線は天井に到達しなかった。しかし初春を思わせる程度に、照明が行き届いてもいた。どこを見ても、ぼんやりと白く霞む。何でできているのか、ぼんやりと光を放つ壁。視程可能な距離は全て白い。地下空間を

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#15

連載小説「超獣ギガ(仮)」#15

第十五話「星屑」

「お待たせ」
 ようやく開いたドアから、花岡しゅりが笑顔を見せた。口角を上げ、にっこりと笑みを浮かべているが、しかし、それは作り笑顔だった。いつものように、光を伴う彼女の姿ではなかった。背に影を背負っているように重々しい雰囲気を連れてさえいた。
 しかし、顔色は悪くなかった。頬はかすかに赤みを帯びてもいた。梳かしていないらしい、どころではなく、数日はろくに風呂にも入らず、洗いも

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#16

連載小説「超獣ギガ(仮)」#16

第十六話「月光」

 どうして憶えているんだろう。
 しゅりはその記憶がよみがえるたび思わず首を振る。目をしかめて、奥歯を噛みしめる。忘れようとするたび、思い出してしまう。振り返ると追跡に気づく影と同じなのかもしれない。並走する影は、体から離れることがない。
 影。足下から伸びて、離れずについてくる影。
 十二月下旬の冷たいアスファルトに鳴る足音。
 忘れたい。忘れたくない。何度、揺れただろう。し

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#18

連載小説「超獣ギガ(仮)」#18

第十八話「兵器」

 昭和九十九年十二月二十八日。
 東京都千代田区。国会議事堂。

 その八階は円形のホールになっている。中心には槍を思わせる螺旋階段が八階の上の頂上階まで貫いて、周囲は磨りガラスが張り巡らされていた。二重構造になっているのか、外からの光はぼんやりとしか届かない。壁がぼんやりと発光しているようにも見える。
 見上げれば円形の天井。ホール中央に螺旋階段。採光のための小窓。どこか円盤

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#19

連載小説「超獣ギガ(仮)」#19

第十九話「進化」

 十二月二十八日、午後二十時五分。
 東京都千代田区。国会議事堂八階。機密ホール。

 それは議論や会議と呼ぶべきではなかった。内閣総理大臣である蓬莱ハルコと、政府関係者、例えば、内閣総理大臣補佐官や内閣官房長官も出席していたが、しかし、その内実について、ほとんど誰にも知らされていなかった。同様に、空自、海自、陸自の各自衛隊幹部、警察庁の責任者や研究者たちにしても、壇上の文月の

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#20

連載小説「超獣ギガ(仮)」#20

第二十話「未来」

 昭和九十九年、十二月二十八日。
 国際宇宙ステーションひかり。その通信用モジュール、室内から。

「ハロー、マイフレンド」
 こちら、国際宇宙ステーション。こちら、ひかり。応答せよ、地球。応答せよ。つぶさに見つめた各計器は平常。異常なし。
「応答せよ。こちら、ひかり」
 窓の外に広がる、永遠の無音。拡大する永遠の暗黒。終わることのない永遠の孤独。一切の色を喪失した闇。すべてを

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連載小説「超獣ギガ(仮)」#21

連載小説「超獣ギガ(仮)」#21

第二十一話「宿敵」

 昭和九十九年。十二月三十日。
 午後四時二十一分。神奈川県横須賀市。
 暮れの近づく、隠密機動部隊、その秘密基地。

 市内を見下ろすことのできる小高い丘、その中央には平和公園が広がっていた。常緑樹はその最盛期よりはやや色を落としてはいたが、しかし、昨日と変わらず青々と葉を茂らせて、寒風に揺られていた。落ち葉が静かな眠りにつく歩道。時折、強く吹き上げてくる海風に、落ち葉は乾

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