講義(モジュール)について:ロンドン大学会計学修士プログラム(MSc in Professional Accountancy)
こんにちは。べえたです。
前回の記事では、ロンドン大学会計学修士プログラム(MSc in Professional Accountancy)の出願手続きについてご説明しました。
今回は、講義(モジュール)の内容について、少し詳しくご説明します。
(ロンドン大学では、1つの講義をモジュールと呼びます)
プログラムの構成
1.修了に必要な単位数
ロンドン大学会計学修士プログラムの修了に必要な単位数は、180単位です。
これは、通常、ロンドン大学で修士の学位を得るために必要となるのに必要となる単位数と同じです。
しかし、本プログラムは、出願要件である会計資格により、なんと120単位が認定されるので、実際にモジュールとして受講するのは、60単位になります。
そして、残りの60単位のうち、30単位を必須科目のCapstone project、残りの30単位を選択科目(15単位)を2科目、それぞれ受講することで、卒業要件の180単位を満たすことになります。
まとめると、以下の表のようになります。
(参考として、同じく会計学修士プログラムのMSc in Accounting and Financial Managementを記載しています)
会計資格の120単位が、とても大きなメリットであることがお分かりいただけるかと思います。
一生懸命頑張って取得した資格が、大学院の単位としても活用できるのは、とても嬉しいですね。
2.成績判定
ロンドン大学会計学修士プログラムでは、全てのモジュールの成績は、期末課題の評価のみで判定されます。
期末近くに提示される課題をWordのレポートやExcelのスプレッドシートなどにまとめて提出することが、単位取得の方法になります。
このため、出席点や中間テストなどは存在しません。
提出物は100点満点で評価され、基本的に成績は以下の基準で判定されます。
70点以上:Distinction(優)
60点以上 70点未満:Merit(良)
50点以上 60点未満:Pass(可)
50点未満:Fail(不可)
また、全体を通じて高い成績を修めた人には、学位に対しても成績が付与されます。
必須科目(Capstone)70点以上かつ選択科目2科目の平均点70点以上:Qualification with Distinction
必須科目(Capstone)60点以上かつ選択科目2科目の平均点60点以上:Qualification with Merit(※)with Distinctionの条件を満たさない場合
このため、学位自体で優秀な成績を証明したい場合には、必須科目のCapstoneで良い成績を取ることが必要となります。
70点以上で優、60点以上で良を貰えるのであれば、日本の大学に比べてかなり簡単そうに思われるかもしれませんが、ロンドン大学は、スコアの基準は低いものの、課題の採点がかなり厳しく、70点以上を取れる人はかなり限られる傾向にあります。
(これは、ロンドン大学だけでなく、イギリスの大学全体に言えることだそうです)
モジュールの内容
各モジュールの内容は、以下の通りです。
いずれも、私が受講していた時期の情報であり、最新のモジュールの内容とは異なる可能性があるため、参考情報としてください。
1.必須科目(30単位):Capstone project
必須科目は、Capstone projectと呼ばれるモジュールです。
Capstone Projectは、2クオーター分、つまり半年(20週)の期間受講します。
MSc Professional Accountancyの根幹となるモジュールであり、前半と後半で内容が大きく異なります。
前半に提出する研究計画書が30%、後半に提出するビジネス企画書とシミュレーションゲーム(Icarus)の振り返りが70%の割合で成績に反映されます。
(1)前半
前半では、修士として研究を進めるうえでの倫理や論証方法の概念(演繹法・帰納法、質的研究・量的研究など)などについて、学習します。
アカデミックな研究を進めるうえで、どういったコンセプトに基づいて論証を行っていくのかを学ぶモジュールであり、その内容を理解するのはかなり大変ですが、まさに大学院で学ぶべき基礎を学習できる機会になります。
最終的に、2,500 words以内で、自分が研究したいテーマと、それに関する調査をどのように行うかを提案書としてまとめる課題を提出します。
実際に提案した研究を行うわけではないので、その点は心配せず、研究の設計図を描くイメージで取り組めば問題ありません。
(2)後半
後半では、Icarus projectと呼ばれるグループワークに取り組みます。
グループワークでは、Icarusと言うロンドン大学独自のシミュレーションゲームを5名ほどのグループでプレイします。
Icarusは、空港運営のシミュレーションゲームで、空港の離発着料やラウンジ・売店の数、空港までの送迎バスの数に至るまで、あらゆる設定を変動させながら、収益・利益の拡大と非財務指標の達成を目指すものです。
このゲームが非常に複雑な仕様となっており、実際に取り組むとなかなか上手くいかないのですが、シミュレーションゲームが好きな方は、楽しめるかと思います。
Icarusは後半10週のうち5週のみで実施され、それ以外は追加の講義などはありません。
最終的には、以下の2つの資料を提出します。
ビジネス企画書(5,500 words)
Icarusの振り返り(1,500 words)
ビジネス企画書では、新規事業の立ち上げや既存事業の改善策などを企画し、財務関係のシミュレーションと併せて企画書としてまとめます。
前半の研究計画と異なり、かなり自由度が高いので、職場などから必要な情報を収集するなど、事前準備がとても重要です。
Icarusの振り返りでは、5週間のIcarusのプレイを振り返り、感じたことや、今後に生かしたいと思ったことなどをまとめます。
感想文に近いものですが、1,500 wordsは書かなければならないので、プレイ中に作成した議事録などを参照しながら、記載することになります。
2.選択科目(15単位)
選択科目は、1クオーター分、つまり3ヶ月(10週)の期間受講します。
以下の4つのモジュールから2つのモジュールを選択して受講します。
なお、成績については、いずれの科目も、モジュール最後の課題提出のみで評価されます。
(1)Analysing risk for decision making(ARDM)
リスクやリターンに関するデータを分析し、リスクの許容度やその影響度を数値や確率で整理するための手法を学びます。
ベイズ分析や決定木分析などについても学ぶので、高校や大学で確率論や統計学を学ばれていた方には、身近な範囲で学習できるかと思います。
最後の課題も、確率論やベイズ分析などに関する問題など、計算系の課題が出ることが多いようです。
(2)Capital markets and global perspectives(CMGP)
グローバル市場について学習するモジュールです。
株式市場、債券市場、投資銀行の役割などについて、学習します。
2008年のリーマンショックについても解説し、その規制に対する影響などについても解説されます。
最後の課題は、市場に関する理論的な問題が出ることが多いようです。
(3)Global issues in finance and accounting(GIFA)
会計基準の国際規格化や、バーゼル合意、会計分野におけるAIの活用などについて学びます。
最後の課題は、会計基準の統合など、学習したテーマに関する論述問題が出ることが多いようです。
(4)Issues in investment management(IIM)
株式や債券などの金融商品のリスクとリターンを算定する方法を学ぶモジュールです。
株式の本源的価値や、市場金利に基づく債券価格の算定など、USCPAのFARとBAR(財務会計)で学ぶ内容に近い内容を学習します。
最後の課題も、株式・債券価格の算定などについて、計算を求められる課題が多いようです。
まとめ
今回は、ロンドン大学会計学修士プログラムの構成と、各モジュールに関する詳しい説明をしました。
モジュールについては、公式サイトでも説明がありますので、興味のある方は、ご確認してみてはいかがでしょうか。
MSc Professional Accountancy | University of London
次回は、モジュールを選ぶ上でのポイントや、具体的な採点方法などについて、お話ししたいと思います。
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