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ひねくれ偏食家の、読書挑戦録

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「流行っているものは読まない」と意地をはってきた、ひねくれ者(偏食もち)が、本を読み、世界を広げて行く過程の記録もろもろ。 他にも、読書や本に関するエッセイ・コラムを集めています
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2019年7月の記事一覧

読書メモ~北方謙三『虹暈 チンギス紀(三)』より

読書メモ~北方謙三『虹暈 チンギス紀(三)』より

 小説などを読んでいると、たまにドキリとさせられたり、深く深く刺さる言葉にぶつかることがある。

 今回は北方謙三さんの『チンギス紀』シリーズ3巻から。

「強さそのものには、意味はない。その強さをどう遣うかということで、意味らしいものが生まれるだけだ」(p.54)

 強力な五十騎の兵を率いる謎の老人、玄翁の台詞だ。

 強さ、力をどう遣うか。その観点で見ることは、キャラクターの分析などにも使え

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木下昌輝さん『絵金、闇を塗る』を読みながら

木下昌輝さん『絵金、闇を塗る』を読みながら

 木下昌輝さんの『絵金、闇を塗る』を土曜日から読み始めた。

 江戸時代末期、土佐の「剃」と呼ばれる髪結いの子供として生まれた少年絵金が、才能を見出されて狩野派に弟子入り、天才絵師としてもてはやされるも、独自の美を追求し続ける……

 絵金という人については、名前と血なまぐさい絵を描く人、ということしか知らない。(どうして、美術史を見渡していると、このようなグロテスクで血なまぐさい絵を描く人が、時

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原田マハさん「群青 The Color of Life」(『常設展示室』)覚え書き

原田マハさん「群青 The Color of Life」(『常設展示室』)覚え書き

「朝、目覚めると、世界が窮屈になっていた」

 原田マハさんの短編集『常設展示室』の冒頭におかれた『群青』は、このようなカフカの『変身』を思わせる文章で始まる。

 主人公は、メトロポリタン美術館(メット)で働く日本人キュレーター美青(みさお)。

 子供時代からの夢の場所だったメットで働く彼女を、突如襲った異変―――その正体は、緑内障だった。

 

 そんな美青が、病院で出会う少女パメラ。彼女

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継続は力になるということか?

継続は力になるということか?

 一日に一個は短編を読もう。

 思い立ったが吉日、と早速動いたのが6月半ば。

 そして、気が付けば1か月近く経っている。

 その間、毎日欠かさず一篇は読んでいた。仕事に行く途中の電車の中だったり、ベッドで寝転びながらだったり。

 この習慣は、例えるなら身に着けて行くうちに柔らかくなった時計の革ベルトのようだ。それが無いと、「何か足りない」という感覚がある。

 そして、何でも良いから、眼に

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偏食家、今更ながら浅田次郎『天切り松 闇がたり』にはまる

偏食家、今更ながら浅田次郎『天切り松 闇がたり』にはまる

「世の中には美味しいものがいっぱいあるのに、人生を損している」

 とは、あまりにも偏食のすぎる私への、母の言葉だ。

 シイタケはじめ、キノコ類。

 海老、カニなど甲殻類。

 特に海老やシイタケは、あの食感や見た目を思い出しただけで、「うわあ…」と引いてしまう。

 それでも、小説などで、登場人物たちが美味しそうに食べている描写を読むのは、嫌いではない。

 それでも、「じゃあ現実で試してみ

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