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#読書感想文

漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(2)

漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(2)

前回、漱石の『文学論』について触れたのだか、文庫本にある亀井俊介氏の解説に対する言及だけに終始してしまった。今度こそは「ジェイン・エア」について触れてみる。

もう迷わない。
もう道草しない。
ジェイン・エアに一直線に行く。
(大袈裟な・・・)

おっと、その前に。

ジェイン・エアをどうのこうの語るにあたって、やはりジェイン・エアがどういう小説なのか、たとえ一部であっても触れざるを得ない。それは

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漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(1)

漱石の『文学論』が面白いんじゃね?(1)

近頃、漱石の話が多いんだが。

発端はシャーロット・ブロンテ著 阿部知二訳『ジェイン・エア』を読んだことがきっかけだった。それについてはこちらで。

漱石蔵書の『ジェイン・エア』も是非とも読んでみたいと思うものの、まずは『文学論』から。

漱石『文学論』を求めてまずは図書館で借りてみることにする。

近隣の図書館が2つあって、図書館Aに岩波文庫の『文学論』があることは知っていた。だが、その日は図書

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コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

この感想を読書メーターに書いたのは、もう4年ほども前になる。こちらの本の感想である。

メリアム・ウェブスター社はアメリカ最古の辞典出版社であり、著者コーリー・スタンパーはウェブスター社の辞書編纂者である。

辞書の編纂者とは日本もアメリカも同じなんだなと、つくづく感じる。こつこつと用例を収集し、悶々と語釈に悩み、黙々と現代語に向き合う。そういう人たちだ。

さて。
本書の目次である。

Hraf

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漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

前回こちらの記事で、漱石が読書中の本の余白に書き込みをしていたことを書いた。

その書き込みをどうにも読みたくて、時々あるんだが、こういうことになると私は妙にシツコイ。寝る前にもまだ諦めきれず、考えてみれば『漱石山房』や『国立国会図書館デジタルコレクション』など、ピンポイントで探しすぎる。忘れていたGoogleという広大な検索ツールを。というわけで、検索バーに突っ込んでみた。

で、見つけたのが、

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漱石とジェイン・エア

河出書房新社の全集から阿部知二訳の『ジェイン・エア』を図書館から借りてきたのは訳を比べてみたかったからなのだが、気がつくとそんなことはすっかり忘れて文字を追うことを止められない。

阿部知二訳はハードカバー二段組、525頁。
大変に長い。

吉田健一訳は文庫635頁。

吉田健一訳はおそらく特に短いんだろうけど、阿部知二訳は特に長いように思える。全集の525頁で、ハードカバーでもあり、重量もたっぷ

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『辞書になった男』、そして辞書と私

『辞書になった男』、そして辞書と私


『辞書になった男』188頁以前より気にかけていたこの本を開いたのは日曜日で、その日一日でほぼ半分を読みきってしまった。翌日の通勤電車の中で、会社の昼休みで、やはり読み続けた。

そうしてさしかかった188頁。その中央の段落を切った後の五行の文章。

そのわずか五行の文章を読んだとき、まるで時間が止まったように感じた。時間も空間も凍りついたようで、そこにあるたった数行の文字をただひたすら凝視してい

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『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

言葉に関しても興味があって、辞書や校正に関する本はついつい読みたくなる。今回はこちらの本である。

とても寒い以前に、そういう話を聞いたことがある。見坊豪紀氏の書籍だったろうか。それを読んだとき、今度は私の方が飛び上がるほど驚いた。

なんで「とても寒い」に驚くんだ?

「とてもきれい」「とても美味しい」など、いつでもどこでもありそうな表現だ。どういうことなんだろう。

実は「とても」という言葉は

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石牟礼道子著『苦海浄土』

石牟礼道子著『苦海浄土』

水俣病を綴った本作は、著者が水俣病患者から見聞した内容を元にしているという。ルポルタージュとも称されることもあるようだが、だがしかしその文章はあまりに美しく優しく細やかで、まるで小説のようで頁を繰る手が止まることはない。『この作品は、誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの、である。』とは著者の言葉であり、ああなるほどと大きく首肯するのである。現実か。それとも物語であるのか。

水俣病は

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