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一緒に食べることは家族になること

ほとんどの本とは1度きりで、あまりもう一度読むということはしないのだが、何冊かだけ、大切に、繰り返し読んでいる本がある。その1冊によしもとばななさんの「キッチン」がある。有名な作品だと思うので、知っている人も多いと思うが、冒頭部分の簡単なあらすじだけ、、、

幼い頃に両親を亡くし、祖母と暮らしてきたみかげ。その祖母を亡くして、本当に1人になってしまったと感じた時、1つ歳下の青年とその母親との奇妙な同居生活が始まる。

正確には第1部が「キッチン」で、第2部は「満月ーキッチン2」と、タイトルは異なるのだが、この作品では「キッチン」や「食事」がキーワードとなっている。みかげは台所が好きで、祖母が亡くなったあと、あまり眠れない時も、台所では比較的眠れたり、第2部では料理研究家のアシスタントとして働き始めたり、彼女自身も料理を熱心にしたりする。

同じ本を読んでも、人によって感じることは違うと思う。
私がこの本を読んで考えたことは、「一緒に食べることで家族になっていく」ということだった。

私が一番好きな場面は、クライマックスで、みかげが美味しいと思ったカツ丼をその青年まで届けるところである。その時の2人は物理的にも離れていて、気持ち的にも遠くなりかけていた。物語はそのあとすぐ終わってしまうが、同じカツ丼を食べた2人はきっと、本当の「家族」になっていると思う。自分が美味しいと思ったものを食べさせてあげたいと思うのは「愛」だなあと思う。

「食べる」という行為は、人が生きていく上で欠かせない行為である。どんなに悲しくても辛くても、最終的にはお腹が空いて、ご飯を食べている自分がいる。そんな自分に絶望しながらも、「食べる」ことで生きていることを感じる事があると思う。

私自身は、料理はあんまり得意でもないし、好きでもないけれど、食べることは幼い頃から大好きだ。食い意地を張っていると言ってもいい。好きなものや美味しいものはできれば独り占めしたいと思ってしまう。
そんな私も大人になってきたのか、最近は美味しいものを食べたら母や夫にも食べてほしいなと思うし、その美味しさを共有したいなと思う。美味しいものを食べたときに、頭に浮かぶ人がいるのは幸せだなと思う。

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