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詩など

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自作の詩,詩のようなことばをまとめています。
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#口語自由詩

【詩】雨音

【詩】雨音

地上42階のあの部屋では
よほど強い風が吹かない限り 
雨音はほとんど生まれない
窓の向こうの直線たちは
時折つるつると走るだけ
いくら曇り空が号泣しても 
声は霞の果て 聞こえない

地上3階のこの部屋では
ぱらばらぱらりと雨は鳴く
目の前の公園の木が広げた
緑の葉に受け止められて
直線は終着点に安堵して
断末魔か、最期の吐息か
声を上げて、四方に散る

窓に 葉に 地に 誰かに 何かに
出会う

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【詩】菜の花

【詩】菜の花

野原に
電灯を
つける

そこだけ
あかるい
光になる

遠くからも
よくわかる
春の合図に

心の中で
手を振る
電車の中

遥かな
土手の
菜の花

・・・・・・
いよいよあたたかくなってきました。あちこち花ざかりですね。
素敵なお写真をお借りしました。ありがとうございます。

【詩】梢の神鳴

【詩】梢の神鳴

秋は心中を決意した

後悔はないの
ただ私はもう、手遅れ
そんな言葉を残して
紅葉は真っ赤に燃え落ちた

遺言が伝わると
夜でも色がわかるほど
黄色く盛る炎となって
公孫樹は無言で後を追った

見事なまでに 秋は全焼

間に合わなかった
わたしもなりたかった
手遅れなくらいの激しさに
闇を貫けるほどの明るさに

すっかり命をなくした梢では
十月を留守にしていた神様が
知らぬ間の皆の心変わ

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【詩】生爪

【詩】生爪

サンダルの隙間から太陽を跳ね返していた
金銀のジェルネイルは
急な冷え込みに慄いた

秋雨に縮む靴の中
爪先に残っていた夏は
ばらばらに壊れ、剥がれて落ちた

現れたのは、随分息を塞がれて
少し白っぽくなって筋張った
久しぶりの生爪

雨を洗い流した風呂の中で
眺める足先の生白さ
柔らかく頼りないわたしの魂は
この身の隅々から不意に現れる

いつもより丁寧に体を拭いて
生まれたてのような爪

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