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雪柳 あうこ
2023年6月9日 08:30
地上42階のあの部屋ではよほど強い風が吹かない限り 雨音はほとんど生まれない窓の向こうの直線たちは時折つるつると走るだけいくら曇り空が号泣しても 声は霞の果て 聞こえない地上3階のこの部屋ではぱらばらぱらりと雨は鳴く目の前の公園の木が広げた緑の葉に受け止められて直線は終着点に安堵して断末魔か、最期の吐息か声を上げて、四方に散る窓に 葉に 地に 誰かに 何かに出会う
2023年3月19日 08:48
野原に電灯をつけるそこだけあかるい光になる遠くからもよくわかる春の合図に心の中で手を振る電車の中遥かな土手の菜の花・・・・・・いよいよあたたかくなってきました。あちこち花ざかりですね。素敵なお写真をお借りしました。ありがとうございます。
2022年11月14日 13:20
秋は心中を決意した 後悔はないのただ私はもう、手遅れそんな言葉を残して紅葉は真っ赤に燃え落ちた 遺言が伝わると夜でも色がわかるほど黄色く盛る炎となって公孫樹は無言で後を追った 見事なまでに 秋は全焼 間に合わなかったわたしもなりたかった手遅れなくらいの激しさに闇を貫けるほどの明るさに すっかり命をなくした梢では十月を留守にしていた神様が知らぬ間の皆の心変わ
2022年10月3日 07:00
サンダルの隙間から太陽を跳ね返していた金銀のジェルネイルは急な冷え込みに慄いた 秋雨に縮む靴の中爪先に残っていた夏はばらばらに壊れ、剥がれて落ちた 現れたのは、随分息を塞がれて少し白っぽくなって筋張った久しぶりの生爪 雨を洗い流した風呂の中で眺める足先の生白さ柔らかく頼りないわたしの魂はこの身の隅々から不意に現れる いつもより丁寧に体を拭いて生まれたてのような爪