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ターゲティングはもう古い、セレンディピティーな動画広告の時代!~会社説明会に隠されたヒントとは?~

 日経電子版の記事【会社説明会で「刺さった」「ガッカリ」 違いは何?】は、就活生の真剣な眼差しの注がれる会社説明会にも出来不出来がある、というリポートです。一読、「なるほどね」と思ったものの、その時はそのままスルーしてしまいました。ところが、数日して日経電子版の保存記事を見直していた時、あることに気付きました――

 「会社説明会って、ある意味、『動画広告』じゃなかろうか!」



 会社説明会という『動画広告』は、就活生という『ユーザー』に、会社という『商品』をアピールする場である、と捉えることができます。その最大の特徴は、就活生が、就職という自分の人生の一部をかけて臨んでいる点にあり、ユーザーの『商品の代金を支払う』という行為が文字通り真剣勝負になったケースと考えることができます。就活生が真剣に臨む会社説明会は、真剣勝負なだけに『動画広告』の質を高めるヒントに溢れた宝の山と考えられるのです。

        ▶会社説明会と動画広告の対比

       (会社説明会)    (動画広告)
         就活生―――――――ユーザー
          会社――――――――商品
          就職――――――――購入
         真剣勝負⇨⇨刺さる会社説明会は参考になる

             (共通の特徴)
            ① 時間的制約がある。
                ⇩
         ② 受け手の判断材料が限定される。
                ⇩
          ③ 見た目、第一印象が勝負。
       



 さっそく、記事から刺さる会社説明会のポイントをピックアップして、動画広告に応用してみると――


(1)臨場感が生々しさを醸しだす!

(記事より)
「シンガポールやタイの社員とスカイプで結んだ説明会は臨場感があった」。ある人事系ソフトウエア会社の企業説明会。訪れた麗沢大学経済学部3年の男子学生は熱っぽく語った。創業3年目のスタートアップ。シンガポールに拠点を置き、若手社員がアジアを頻繁に行き来している。説明会は活気ある職場の雰囲気がにじみ出ており……

 この刺さり具合を動画広告に応用するなら、商品の機能を『考えさせる』ような演出ではなく、その商品がもたらす体験を臨場感たっぷりに『感じられる』演出の方が、ユーザーに生々しく響く=刺さると考えられます。


(2)経営トップの本気度が商品の勢いとなる!

(記事より)
「社長が自ら人工知能(AI)の活用拡大について意気込みを語ったことにも勢いを感じた」

 この刺さり具合を動画広告に応用するなら、動画広告の一つのパターンとして、経営トップが自ら出演し、熱く商品を語る、というのもありかも知れません。経営トップの本気度が商品の勢いとなって、ユーザーの心に響く=刺さるのです。


(3)紙媒体など他の広告で謳ってない事をアピール
  する!

(記事より)
「内容が採用サイトと同じだったら、聞く意味がない。失礼かもしれないが、途中で退席して、他の企業のブースに移動する」

 この刺さらなかった事例の裏返しを動画広告に応用するなら、動画広告で、紙媒体など前評判で伝わってない新鮮な内容を訴求することが、最後まで視聴してもらえるポイントになってくると思われます。

 余りに多角的に広告活動をしてしまうと、文字通り情報が拡散されて、かえって、動画広告自体の鮮度は落ちてしまう、という事でしょうか。絞り込んだ広告戦略の優位性を表しているように思えます。数じゃなくて質ですね。


(4)動画広告を見る事が次へと繋がる
  インセンティブに!

(記事より)
では学生は何を求めてわざわざ説明会に足を運ぶのか。理由は大きく2つ。1つは、説明会への参加が選考につながる場合があるため。参加の際の登録情報をもとに後から面接に呼び出されることもある。

 このケースを動画広告に応用するなら、動画広告を見る事が次へと繋がる
インセンティブになるような仕掛け
、例えば、①続きもののドラマ仕立て、②ファンプレゼント、③イベントの告知、④クイズ、⑤試供品などが考えられます。視聴者に、あの広告は見るたびに何か仕掛けられている、と思わせる事で、広告効果が向上すると考えられます。


(5)会社ではなく社員が商品をアピールするという
  戦略

(記事より)
そこでしか聞けない「生の話」が聞きたい……
採用コンサルタントの谷出正直氏は「学生は企業人としてではなく、社員個人の就業観を聞きたいと思っている。企業は感情や熱意が伝わるような内容を打ち出すことが大切だ」と述べる。

 このような刺さり具合を動画広告に応用するなら、動画広告の一つのパターンとして、商品を社員が個人的に裏話なども交えながらアピールする、という手法が考えられます。視聴者は、あたかも居酒屋で裏メニューを教えてもらったような特別感を味わえるのです。


(6)口コミとどう対峙するか?

(記事より)
「口コミサイトのコメントが本当かどうかを確かめたい」

 今や口コミは商品情報拡散の重要なルートであり、動画広告がこれとどう対峙するか、という事は前もって検討しておく必要がありそうです。

 口コミそのものを題材にドラマ化したり、動画広告のサイトに堂々と口コミサイトへのリンクを貼ったり、様々な手法が考えられそうです。


(7)社員間のコミュニケーションを動画化

(記事より)
「印刷大手の説明会では、若手社員らが壇上で座談会を繰り広げた。学生にも話題を振って巻き込みながら話を広げた。社員同士のやり取りが新鮮で、雰囲気が分かって良かった」

 このような刺さり具合は、『社員同士の会話=現場の本音』という所が肝だと思います。

 例えば製造現場であれこれ議論しながらカイゼンするシーンをドキュメンタリータッチで描くなど、その商品(モノ・サービス)の開発物語を動画化するといった手法が考えられます。社員同士が激論を戦わせるシーンなどです。


(8)商品の周辺情報を盛り込む

(記事より)
「自社に限らない話も実はポイントが高い」
「例えば就活の進め方に関する全般的な助言など、学生に役立つ内容が含まれると好印象」

 このような刺さり具合を動画広告に応用するとしたら、宣伝する商品のUXに絡んでくるような内容で、必ずしもその商品じゃなきゃダメという訳ではない一般的な話題、トリビア、活用法など、『ちょっと役に立つ知識』を動画広告のバージョンごとに内容を変えて盛り込むことではないでしょうか。

 単なる『広告』ではなく、『動画』の方に比重を置くことで、『動画広告』の質を高める戦略です。


(9)チャットボット機能の搭載

(記事より)
会場でスマホから匿名で質問できるシステムを導入。学生からは「聞きづらい話題でも気軽に質問できた」と好評だった。

 このような刺さり具合を動画広告に応用するとしたら、動画の表示にチャットボットと繋がるボタンを設置することだと考えられます。

 動画広告を見て商品に興味を持った視聴者が、その商品について突っ込んで聞きたい事をその場で質問できるようなUXを提供できれば、購入へと繋がる道が広がります。そこからさらにユーザーが普段使っているECサイトへと遷移できるようにすることも考えられます。


 このように、刺さる会社説明会の9つのポイントについて、動画広告への応用を見てきましたが、通覧して気付くのは、就活生に媚びて『ターゲティング』するのではなく、就活生に自社の素晴らしさを積極的・現場的・双方向的にアピールして『セレンディピティー(予想外の発見)』を提供する、という姿勢です。

 5Gの時代に主流となると考えられる動画広告、もちろん、AIでの自動制作もありですが、『不愉快』、『不気味』など『人間らしさドリブン』な発想に欠けた『効率ドリブン』な『ターゲティング広告』からリフトオフして、『セレンディピティー』な広告へと軸足を移す必要があるかも知れません。


▶ターゲティング広告の問題点
①『過去のデータ』・・・ターゲティング広告は、過去のデータに表れた過去
 の嗜好に基づいており、必ずしも今現在の興味・関心の対象と一致して
 いない。
②『不一致』・・・何故そのような広告が表示されるのか理解できない事が
 ある。
③『不気味』・・・内心考えていたことが広告で表示されると、不気味。④『不愉快』・・・サイトを移ったり、ページを変えても執拗に同じ広告が
 出てきて不愉快だ。
⑤『ターゲティングバブル』・・・フィルターバブルになぞらえた造語です
 が、いつもいつも似たような広告ばかりだと、新しい発見はなく、
 飽きてしまうのではないでしょうか。
⑥『レッテル』・・・差別とまでは行かなくとも、「あなたはこういう人間
 です」とレッテルを張られているようで、不愉快だし、的外れ。
⑦『差別』・・・広告主のカテゴリー設定、属性の取捨選択は、一歩間違えば
 差別となる。

(追記:上記のようなターゲティング広告の課題については、下記の拙稿などで考察しています。)








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