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詩集

31
詩を綴っていくマガジンです。
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#詩

誰かの心

誰かの心

私はいつも
誰かの心を想っている
散歩すれば
あの人の表情を思い出して笑ってしまい
お風呂にはいっていたら
あの人の言葉を思い出して悲しくなる
ご飯を食べていれば
あの人のことを心配し
珈琲を飲めば
あの子のことを愛おしく思う

私の心はどこへやら

頭を空っぽにして
誰もいない部屋で
私は一人になって
ただぼんやりと 
外を見ている

木々の木漏れ日
愛犬の寝息
光のかがやき
風は揺れ動き

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一週間(詩)

一週間(詩)

「一週間」

過去と未来が通り過ぎていた。

それは
誰もいないホームで
目の前を
圧倒的に通り過ぎる
長い車両の特急列車。
灰色の光の帯。
轟音。
歪んだ、時間という概念。
まだ、続く。
どこまでも走り過ぎる列車。
影を追うことさえ出来ない。

1日経ち、
2日経ち、
まだまだ列車は走っている。
3日目。
目が慣れてきたのか
窓の輪郭がなんとなく見えてくる
4日目。
人影が見える。
5日目。

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父を想う

父を想う

遥か
1万m上空から見えるのは
漆黒に染まる
故郷の大地と
汚れなき群青色の空
そして
それらを遮る
真っ直ぐな夕焼けの炎

思い起こせば
実に長い間
いつも二つの色が
心の内に在って
決して交わることがなかった

恩讐の彼方に
二十一年の歳月をかけて
洞穴を貫通させた
市九郎と実之助の
一振の槌の力は
目の前に在る
夕焼けの炎を想わせる

それは祈り
それは懺悔
それは
数奇な親子の縁

ほら

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ただ、それだけ

ただ、それだけ

作者のオーリア・マウンテン・ドリーマーは、アメリカ先住民の文化に詳しいカナダ人女性だそうです。20年前の詩が多くの心を揺さぶり続けています。

ーーー
あなたの職業が何であるかは、私には興味がありません。
私が知りたいのは――、あなたがどんなことを心から望んでいて、その願いが叶うことを夢見ているかどうかです。

あなたの年齢がいくつなのか、私には興味がありません。
私が知りたいのは――、あなたが愛

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1羽のカラス(詩)

1羽のカラス(詩)

一羽のカラスが
走る怪物に飛び込んだ
たくさんの怒りを道連れにして

哀れなカラス
甘美なささやきに取り込まれ
旅立てど  
もはや  道はなく

カラス

カラス

大昔、生き物たちは
それぞれに
自分の気に入らない色を
持っていました。
ある時、白い鳥が
それらの色を1つづつ
引き受けましょうと名乗り出ました。

木々は、朽ちゆく茶色をわたしました。
空は、どんよりとした灰色
雨は、不透明な青
ゾウは、病に侵された皮膚の緑
キリンは、抜け落ちた毛の黄色
魚は、剥がれた鱗の銀・・

そのほかにも、あらゆる色を
引き受けたその鳥は、
真っ黒な姿になっていました。

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骨(絵と詩)

骨(絵と詩)



そこには
動物たちがいた
ただし、全て骨だった

生前の躍動感そのままに
空洞の眼差しは
虚空の闇を睨んでいる
あるものは
脅威から飛び立とうとしている
あるものは
安寧な世界で食しようとしている
それら
生き物としての成り立ちを
支えている
圧倒的な神の所業
美しきフォルム

進化を重ね
多様性を生み
生き物はその宿命を
全うするべき役目を負った
そこに
心を見出そうとするのは
人間がもっ

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白き世界(詩画集)

白き世界(詩画集)

白き世界
あいまいで
かつて愛した人も
もはや
どこにも見当たらず


といえばそうかもしれぬ
命という手応えすらも
こぼれ落ちるように
何もない

白き世界
包み込まれて
気分は悪くない
それもまた
消えゆくものとして

かつて
信じていたものを
思い出せず
ただ
わかるという感覚だけ

再び眠りにつけば
これでほんとのおしまい
さようなら
わたしの日々
ありがとう

(白き世界・了)