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CAEを生業とする私の仕事紹介

CAE(Computer Aided Engineering)という業界を皆さんはご存知でしょうか。

世間の認知度は高くありませんが、理系のスペシャリストの一角を担う業界と個人的に思っています。手短に言うとこんな感じです。

あらゆる物理現象をシミュレーションとして仮想的に再現することで、工業的な設計・生産プロセスの最適化に貢献する。

今回は私が本業として関わる「CAE」の業界について書きたいと思います。

過去に何度か書いていますが、今回はその更新版という位置付けです。よろしくお願いします。

CAE(Computer Aided Engineering)

まず「CAE」とは、機械設計のプロセスにおいてコンピューターによる数値解析技術を活用すること。

製品設計や製品評価の過程で行われる実験や試験を、コンピューター上で再現することだと書くと伝わるでしょうか。例えば、車の衝突試験をテレビで見たことがある方は多いのではないでしょうか。それを仮想的に再現するのです。

物理現象を対象としたコンピューターシミュレーションなので、様々な工業分野に利用できます(ソフトウェアごとに得意とする分野は異なります)。

なぜ「CAE」が必要とされているのか。そのメリットを挙げてみます。

1.不具合の原因解明
製品に不具合があることで、時には人命に関わる重大な事故を引き起こすことがあります。コンピューター上で製品形状や物理条件などをモデルとして設定し、シミュレーションを行うことで、不具合の要因分析を行う手助けとなります。

2.材料試験データを用いて製品の性能を予測
材料の強度や疲労寿命に関するデータがあれば、製品設計で仕様や形状が決められた段階で、製品の強度や寿命を予測できます。製品を試作する代わりに、様々な設計検証を事前に行うことができます。

3.実験ができない代わりにCAEで検証
車体の乗員安全試験など生身の人体を介在するような場合は、試験を行うこと自体が困難です。同じくコンピューター上でモデルを設定することで、現実的に不可能な実験を仮想的に行い、検証を進めることができます。

製品設計・製品評価を事前に正確に行えることは、製品開発のコスト削減に繋がります。特に、開発コストが大きい車業界(車体設計)などを中心に、製造業の分野で積極的に利用されています。

CAE業界に飛び込んだきっかけ

既に自己紹介でも書いていますが、私は工業高等専門学校(高専)という特殊な学校に在籍していました(専攻科課程2年間を含めて計7年間)。そして、5年目の卒業研究で初めてこの業界を知りました。

もともと数学や物理学が得意だったこともあり、これらをフルに使うような研究をやりたいと考えていて、新たにこの世界と関わることに。

そこから現在の仕事までを通算して、もう十数年の付き合いになります。学生時代の研究と仕事ではスタンスが違いますが、今なお学生時代に習得した専門性を十分に生かしています。

CAEを担保する数値解析技術

CAEを実現するために必要不可欠な数値解析技術。そのひとつに「有限要素法」があります。

私は高専の卒業研究で有限要素法に出会いました。有限要素法の理論は大学院で勉強する内容で、当時の私は指導教員の助けを得ながら、独学で有限要素法を習得しました。

有限要素法:微分方程式を近似的に解くための数値解析手法。解析対象を微小な構成要素で分割して、各要素の条件を連立方程式で近似します。連立方程式を解くことで各要素の数値解が求まり、最終的に全体の挙動を確認します。

高専の研究では、軟鋼に見られる特有の材料特性を理解し、同特性が巨視的な変形挙動に及ぼす物理的な影響について検証しました。下図のような試験片をモデル化して、変形の様子を観察し続けていました。

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現在の具体的な仕事

現在は自社で扱う有限要素法を実装したソフトウェアの品質管理を主な業務としています。ここで言う品質管理とは、様々な機能に対して期待通りの解析結果が得られるかテストすることです。

具体的には、自社で保有している多種多様な解析モデルを用いて、バージョンアップしたソフトウェアの機能テストを行います。データの量が膨大であるため、計算処理は自動化しており、その自動処理プロセスも自前で開発しています。

想定外の結果の場合は問題を分析しますが、ソフトウェアの不具合以外に、解析モデルに問題がある場合もあるので、その切り分けから調査します。

例えば、モデルのメッシュサイズ(解析の解像度のようなもの)は解析精度の影響因子のひとつです。不具合の特定以外にも、こういう問題の可能性をひとつずつ丁寧に明らかにしていきます。

おわりに

今回は私の仕事(業界)である「CAE」について紹介しました。

私は実験よりも解析の方が好きな学生でしたので、高専での有限要素法の出会いはまさに人生の分岐点だったように思います。

会社員として仕事する身なので、辛い思いをする時期もありました。現在は心身ともに安定していて、ようやく楽しさを見つけたような気がします。

これからもこの業界に身を置くことになりますが、引き続き頑張ろうと思います。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。なるべく毎日更新する気持ちで取り組んでいきます。あなたの人生の新たな1ページに添えたら嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。

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