3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降…

3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降りかかって来る。まぁそれもいい、自分の人生なんだから。

記事一覧

物の見方

Googleマップにあった英国田舎の村を再現した施設へと車を走らせる 人里離れた山道の途中にそれは突然現れた コッツウォルズを再現した風景 それほど広い敷地ではないのだ…

薔薇に火が灯る

少し天候が不順な日が続いた どことなく淀んだ空気が充満する部屋 窓を開け放つ 庇の下 雨避けに置いた薔薇の鉢 朝日がそこに まだ固い蕾に 火が点る しばらく見入る そ…

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しっかり者の友がいる

A型の友とO型の自分 血液型で全ては語れるわけではないが 40年以上友に頼りっぱなしで ここまできた 今となっては大した言葉はいらない 一緒にいるだけで昔の自分に戻れ…

小さなことから遠慮せずに

奈良へ 同行した二人と離れて 少しの自由時間 若い頃なら見向きもしなかった場所 赤い鳥居に誘われて 足を踏み入れる お邪魔します 手水鉢に水はなかった お賽銭を入れ…

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リメイクとリスペクト

カズオ・イシグロ脚本がいいです びっくりするほど 黒澤「生きる」を尊重し 映像、カットワーク、構成見事に トレースしてるのだけど ちゃんと英国の映画になっていた ス…

「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

デンマーク統治下のアイスランドに 宣教師が赴任する そんなストーリーの映画 もうね レイキャビック市内から少し走っただけで この映画の世界が無限に広がるんです だか…

またひとつ歳を重ねた

朝早くにLINEから通知 旧友からの誕生日を祝うスタンプ つるむでもない 毎日会話するでもない 40年以上前に同じ時を過ごしてきた友だ 覚えてきてくれたこと そして 相手…

なくしたひざ掛け

祖母のために 孫娘が手編みしたひざ掛けが 今回の旅行土産 プレゼントとして贈ったものを 使わずに仕舞い込む癖のある母は 家族にとって贈りがいのない人 孫娘もそのこと…

3

知らない街

最近あえて距離を空けているのだが その分 母の様子がわからない インターホンに対応しようと思って 全然違うスイッチを何度も押すことがあった 認知機能の衰えか それも…

雲の上

地政学的に 心穏やかでない地域を 飛んでいる でも 目線をまさに変えて 朝日に照らされた大地を見てみると こんなにも美しい 人の手で蹂躙されていない 無垢の姿を見るこ…

今そこにあるか

バンクシー作品が美術館に わざわざ本来描かれた場所に行かずとも 目の当たりにできるのはありがたい がしかし これでいいのか 周囲の建物、風景、空気と共にあってこそ …

印象派

色を抑えた分 コントラストが映える うなじの白さ 壁に残る影 扉の輝き 木の質感が滲む ドラマチックな光景ではないが なぜか心にひっかかる それが印象派 出口のミュ…

暖炉に火を焚べる

暖炉は憧れ 知人宅でそれを見つけると 真っ先にその前を陣取り、ほぼ動かない 切り揃えられた薪の山から 数本をそばに置き 主人の許しが出るのを待っている 扉を開く 熱…

1

年が明けた

なんだろう 元旦からの大地震、次の日の航空機事故 どうにも定まらない心 母の介護も三年目が終わろうとしている 新年三日目は何も起こらないだろうと思っていたら 母が鼻…

1

半分明るく 半分暗い

馴染みのお店のマスターが代替わりして数年後 そのマスターが逝去された 店では偲ぶ会が催され 弟子たちが何人も集まった もちろん常連客も献花に訪れる どこか同窓会のよ…

平和という風船を

風船とは 手を離すとすぐに届かない場所に行ってしまうもの 風船とは 小さな針先ですら壊れてしまうもの 風船とは 身近にありそうで実はどの引き出しにも入っていないもの …

物の見方

物の見方

Googleマップにあった英国田舎の村を再現した施設へと車を走らせる
人里離れた山道の途中にそれは突然現れた
コッツウォルズを再現した風景

それほど広い敷地ではないのだが
建物 庭 池
レストランにB&Bまである

英国好きには心惹かれる風景がそこに
入村料を取られるのだが
中のレストランを使用すればそれは無料となる

そうでない場合は一人1000円
これが高いか相応のものか

口コミには辛辣な

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薔薇に火が灯る

薔薇に火が灯る

少し天候が不順な日が続いた
どことなく淀んだ空気が充満する部屋
窓を開け放つ

庇の下
雨避けに置いた薔薇の鉢
朝日がそこに

まだ固い蕾に
火が点る
しばらく見入る

そういえば
母のところでは
ずいぶん雨戸を開けていない

開けなくていいと
そう言ったから
また毎日開け閉めに手を貸す余裕も
その気も失せている

とはいえ
この小さく灯った蕾に
目をやることがないとしたら

少し不憫な気持ちが胸

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しっかり者の友がいる

しっかり者の友がいる

A型の友とO型の自分
血液型で全ては語れるわけではないが
40年以上友に頼りっぱなしで
ここまできた

今となっては大した言葉はいらない
一緒にいるだけで昔の自分に戻れる気がする
車に乗り込むもいい
土いじりするのも楽しい

そんな友が病気になった
以前ほどの体力がもう戻らないという
こんなことは今までなかったのだが
重たい荷物を代わりに運ぶ手伝いをした

こんなことなら何でもない
たかが半日の運

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小さなことから遠慮せずに

小さなことから遠慮せずに

奈良へ
同行した二人と離れて
少しの自由時間

若い頃なら見向きもしなかった場所
赤い鳥居に誘われて
足を踏み入れる

お邪魔します

手水鉢に水はなかった
お賽銭を入れて
初めましてのご挨拶

なんで
こんな些細なことが
今までできなかったのだろう

自分の身から
少しばかりの小銭が消えたわけだけど
代わりに
プライスレスな充足感

迎えてくれた青い空
少し空気が違うことに気づく

きてよかった

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リメイクとリスペクト

リメイクとリスペクト

カズオ・イシグロ脚本がいいです
びっくりするほど
黒澤「生きる」を尊重し
映像、カットワーク、構成見事に
トレースしてるのだけど

ちゃんと英国の映画になっていた
スタッフの皆さんが相当のリスペクトを
持って製作にあたっていたのがわかる

それでも
セリフや小道具のディテールに
洗練が加味されていて
とってもジェントルな映画に仕上がっていた

それはおそらく脚本家による成果だと思う
黒澤「生きる」

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「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

デンマーク統治下のアイスランドに
宣教師が赴任する
そんなストーリーの映画

もうね
レイキャビック市内から少し走っただけで
この映画の世界が無限に広がるんです

だから
時代設定は古いのだけど全然古びていない
あまりネタバレになるので
映画みたい人はこの先読まなくていいのだけれど

この宣教師がもうダメなやつで
祈りは自分勝手だし
大事な聖書も十字架も手にしない代わりに
最新の写真機材だけは自分

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またひとつ歳を重ねた

またひとつ歳を重ねた

朝早くにLINEから通知
旧友からの誕生日を祝うスタンプ
つるむでもない
毎日会話するでもない
40年以上前に同じ時を過ごしてきた友だ

覚えてきてくれたこと
そして
相手の誕生日が思い出せない自分
少し恥ずかしい

たわいもない会話とスタンプの応酬をして
朝の時間が過ぎた
友はこれから会社に行くのであろう

程なく航空会社から誕生日を祝うメールが来た
そう
この機会に友のすむ街まで
行ってみよう

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なくしたひざ掛け

なくしたひざ掛け

祖母のために
孫娘が手編みしたひざ掛けが
今回の旅行土産

プレゼントとして贈ったものを
使わずに仕舞い込む癖のある母は
家族にとって贈りがいのない人

孫娘もそのことをよくわかっていて
遠い国の住民になってからも
何か邪魔にならないもの
すぐ使ってなくなってしまうものを
時折国際郵便に乗せてきた

車椅子生活になり
多分ひざ掛けなら
目に入るものだし、寒い時期は
重宝するだろう
娘のところに滞在

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知らない街

知らない街

最近あえて距離を空けているのだが
その分
母の様子がわからない

インターホンに対応しようと思って
全然違うスイッチを何度も押すことがあった
認知機能の衰えか

それも仕方ない
家で一人こもっているようなものだ
刺激がなさすぎる

一人で外出することができず
ヘルパーさんたちが
外部情報の伝い手

あとはテレビ
そんな老人もこの国にはたくさんいるだろうし
もう少ししたら自分だってそうなる可能性があ

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雲の上

雲の上

地政学的に
心穏やかでない地域を
飛んでいる

でも
目線をまさに変えて
朝日に照らされた大地を見てみると

こんなにも美しい
人の手で蹂躙されていない
無垢の姿を見ることができる

領地だとか
人種だとか宗教だとか
地球はそんなことまるっきり気にしてはいない

今そこにあるか

今そこにあるか

バンクシー作品が美術館に
わざわざ本来描かれた場所に行かずとも
目の当たりにできるのはありがたい

がしかし
これでいいのか
周囲の建物、風景、空気と共にあってこそ
作者の意図が伝わるはず

youtubeを見ていると
すごいスキルを持ったアーティストたちが
その腕を披露している

技術だけでは本当の意味で
人の心を動かせない
強いメッセージ
誰でもないオリジナリティ

その未到の地に一番早く辿り

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印象派

印象派

色を抑えた分
コントラストが映える

うなじの白さ
壁に残る影

扉の輝き
木の質感が滲む

ドラマチックな光景ではないが
なぜか心にひっかかる

それが印象派
出口のミュージアムショップで
物色してみたが

絵画の質感を反復できるものが
一つもなかった

手ぶらで後にする
充足感があればそれでいい

暖炉に火を焚べる

暖炉に火を焚べる

暖炉は憧れ
知人宅でそれを見つけると
真っ先にその前を陣取り、ほぼ動かない

切り揃えられた薪の山から
数本をそばに置き
主人の許しが出るのを待っている

扉を開く
熱の塊がまっすぐ向かってくる
その中へ手にした薪を焚べる

焚べると書いたが
平成以降の人に伝わるだろうか
投げ入れるのではない
放り込むのとも違う

火の神の饗宴に
そっと貢物を捧げる行為が近いのではないか

炎の形は千変万化
みて

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年が明けた

年が明けた

なんだろう
元旦からの大地震、次の日の航空機事故
どうにも定まらない心

母の介護も三年目が終わろうとしている
新年三日目は何も起こらないだろうと思っていたら
母が鼻血を出してヘルパーを呼んでいた

すごい年になりそうです
一方で働き方改革
これまで普通に開いていたスーパーも
軒並み3日までお休み
年賀状を届ける郵便局の配達も1日にきて
次がなかなか来ない

辰年だそうです
さらに風の時代に入った

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半分明るく 半分暗い

半分明るく 半分暗い

馴染みのお店のマスターが代替わりして数年後
そのマスターが逝去された
店では偲ぶ会が催され
弟子たちが何人も集まった
もちろん常連客も献花に訪れる

どこか同窓会のような
湿っぽさはどこにもなく
ただ普段ではない寂しさがそこかしこに

一人の女性がポツネンと
誰だろうと思ったらマスターの娘さんだった
少し話をしていたらわかったこと
アイスクリーム好きだということ
苦虫を噛み潰したような顔で家族に甘

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平和という風船を

平和という風船を

風船とは
手を離すとすぐに届かない場所に行ってしまうもの
風船とは
小さな針先ですら壊れてしまうもの
風船とは
身近にありそうで実はどの引き出しにも入っていないもの

きっと施政者という人たちは
風船の紐を手放した時のあの記憶を失った人のこと
きっと
風船のあったことを忘れ萎んでしまった姿を見ようとしない人のこと
きっと
風船を手渡した時に見せる子供の笑顔の存在を知らない人のこと

ただただ
バン

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