3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降…

3月のシクスティ

定年、親の介護、家族関係 60歳あたりから途端に今までを否定されるかのように、問題が降りかかって来る。まぁそれもいい、自分の人生なんだから。

最近の記事

物の見方

Googleマップにあった英国田舎の村を再現した施設へと車を走らせる 人里離れた山道の途中にそれは突然現れた コッツウォルズを再現した風景 それほど広い敷地ではないのだが 建物 庭 池 レストランにB&Bまである 英国好きには心惹かれる風景がそこに 入村料を取られるのだが 中のレストランを使用すればそれは無料となる そうでない場合は一人1000円 これが高いか相応のものか 口コミには辛辣な意見が並ぶ 二度とこない 高すぎる がっかりした 確かに1時間もあれば 施設内

    • 薔薇に火が灯る

      少し天候が不順な日が続いた どことなく淀んだ空気が充満する部屋 窓を開け放つ 庇の下 雨避けに置いた薔薇の鉢 朝日がそこに まだ固い蕾に 火が点る しばらく見入る そういえば 母のところでは ずいぶん雨戸を開けていない 開けなくていいと そう言ったから また毎日開け閉めに手を貸す余裕も その気も失せている とはいえ この小さく灯った蕾に 目をやることがないとしたら 少し不憫な気持ちが胸に残る

      • しっかり者の友がいる

        A型の友とO型の自分 血液型で全ては語れるわけではないが 40年以上友に頼りっぱなしで ここまできた 今となっては大した言葉はいらない 一緒にいるだけで昔の自分に戻れる気がする 車に乗り込むもいい 土いじりするのも楽しい そんな友が病気になった 以前ほどの体力がもう戻らないという こんなことは今までなかったのだが 重たい荷物を代わりに運ぶ手伝いをした こんなことなら何でもない たかが半日の運動のようなもの なのに 帰り道少し体がいつもと違う疲労を覚えた ずっと太陽の下

        • 小さなことから遠慮せずに

          奈良へ 同行した二人と離れて 少しの自由時間 若い頃なら見向きもしなかった場所 赤い鳥居に誘われて 足を踏み入れる お邪魔します 手水鉢に水はなかった お賽銭を入れて 初めましてのご挨拶 なんで こんな些細なことが 今までできなかったのだろう 自分の身から 少しばかりの小銭が消えたわけだけど 代わりに プライスレスな充足感 迎えてくれた青い空 少し空気が違うことに気づく きてよかった その気になってよかった さあ 帰ろう 同行者が待っている

          リメイクとリスペクト

          カズオ・イシグロ脚本がいいです びっくりするほど 黒澤「生きる」を尊重し 映像、カットワーク、構成見事に トレースしてるのだけど ちゃんと英国の映画になっていた スタッフの皆さんが相当のリスペクトを 持って製作にあたっていたのがわかる それでも セリフや小道具のディテールに 洗練が加味されていて とってもジェントルな映画に仕上がっていた それはおそらく脚本家による成果だと思う 黒澤「生きる」の主人公が焦ったいほどに口下手なのに対し ビル・ナイは言葉少なだがきちんとコミュ

          リメイクとリスペクト

          「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

          デンマーク統治下のアイスランドに 宣教師が赴任する そんなストーリーの映画 もうね レイキャビック市内から少し走っただけで この映画の世界が無限に広がるんです だから 時代設定は古いのだけど全然古びていない あまりネタバレになるので 映画みたい人はこの先読まなくていいのだけれど この宣教師がもうダメなやつで 祈りは自分勝手だし 大事な聖書も十字架も手にしない代わりに 最新の写真機材だけは自分で愛しんで離さない 異文化の衝突とあったけど 現地の人からすれば 憧れるような

          「ゴッドランド」そのままのアイスランドだった

          またひとつ歳を重ねた

          朝早くにLINEから通知 旧友からの誕生日を祝うスタンプ つるむでもない 毎日会話するでもない 40年以上前に同じ時を過ごしてきた友だ 覚えてきてくれたこと そして 相手の誕生日が思い出せない自分 少し恥ずかしい たわいもない会話とスタンプの応酬をして 朝の時間が過ぎた 友はこれから会社に行くのであろう 程なく航空会社から誕生日を祝うメールが来た そう この機会に友のすむ街まで 行ってみようか 顔を合わせて ずいぶんと過去になってしまった時間を 取り戻すのもいいかもし

          またひとつ歳を重ねた

          なくしたひざ掛け

          祖母のために 孫娘が手編みしたひざ掛けが 今回の旅行土産 プレゼントとして贈ったものを 使わずに仕舞い込む癖のある母は 家族にとって贈りがいのない人 孫娘もそのことをよくわかっていて 遠い国の住民になってからも 何か邪魔にならないもの すぐ使ってなくなってしまうものを 時折国際郵便に乗せてきた 車椅子生活になり 多分ひざ掛けなら 目に入るものだし、寒い時期は 重宝するだろう 娘のところに滞在した五日間の間に 彼女が時を見て編み針を動かしていた 最終日に仕上がったものは

          なくしたひざ掛け

          知らない街

          最近あえて距離を空けているのだが その分 母の様子がわからない インターホンに対応しようと思って 全然違うスイッチを何度も押すことがあった 認知機能の衰えか それも仕方ない 家で一人こもっているようなものだ 刺激がなさすぎる 一人で外出することができず ヘルパーさんたちが 外部情報の伝い手 あとはテレビ そんな老人もこの国にはたくさんいるだろうし もう少ししたら自分だってそうなる可能性がある その時までに 知らない街の知らない風景がたくさん載った フォトブックをたく

          雲の上

          地政学的に 心穏やかでない地域を 飛んでいる でも 目線をまさに変えて 朝日に照らされた大地を見てみると こんなにも美しい 人の手で蹂躙されていない 無垢の姿を見ることができる 領地だとか 人種だとか宗教だとか 地球はそんなことまるっきり気にしてはいない

          今そこにあるか

          バンクシー作品が美術館に わざわざ本来描かれた場所に行かずとも 目の当たりにできるのはありがたい がしかし これでいいのか 周囲の建物、風景、空気と共にあってこそ 作者の意図が伝わるはず youtubeを見ていると すごいスキルを持ったアーティストたちが その腕を披露している 技術だけでは本当の意味で 人の心を動かせない 強いメッセージ 誰でもないオリジナリティ その未到の地に一番早く辿り着いたものだけが 本当の意味でアーティストなんだろう

          印象派

          色を抑えた分 コントラストが映える うなじの白さ 壁に残る影 扉の輝き 木の質感が滲む ドラマチックな光景ではないが なぜか心にひっかかる それが印象派 出口のミュージアムショップで 物色してみたが 絵画の質感を反復できるものが 一つもなかった 手ぶらで後にする 充足感があればそれでいい

          暖炉に火を焚べる

          暖炉は憧れ 知人宅でそれを見つけると 真っ先にその前を陣取り、ほぼ動かない 切り揃えられた薪の山から 数本をそばに置き 主人の許しが出るのを待っている 扉を開く 熱の塊がまっすぐ向かってくる その中へ手にした薪を焚べる 焚べると書いたが 平成以降の人に伝わるだろうか 投げ入れるのではない 放り込むのとも違う 火の神の饗宴に そっと貢物を捧げる行為が近いのではないか 炎の形は千変万化 みていて飽きない やがて暖炉の上に小さな鍋が置かれ 程なく美味しい匂いが溢れてくる

          暖炉に火を焚べる

          年が明けた

          なんだろう 元旦からの大地震、次の日の航空機事故 どうにも定まらない心 母の介護も三年目が終わろうとしている 新年三日目は何も起こらないだろうと思っていたら 母が鼻血を出してヘルパーを呼んでいた すごい年になりそうです 一方で働き方改革 これまで普通に開いていたスーパーも 軒並み3日までお休み 年賀状を届ける郵便局の配達も1日にきて 次がなかなか来ない 辰年だそうです さらに風の時代に入ったと言われています 今までの普通を吹き飛ばしていく2024年 心して臨まないといけ

          半分明るく 半分暗い

          馴染みのお店のマスターが代替わりして数年後 そのマスターが逝去された 店では偲ぶ会が催され 弟子たちが何人も集まった もちろん常連客も献花に訪れる どこか同窓会のような 湿っぽさはどこにもなく ただ普段ではない寂しさがそこかしこに 一人の女性がポツネンと 誰だろうと思ったらマスターの娘さんだった 少し話をしていたらわかったこと アイスクリーム好きだということ 苦虫を噛み潰したような顔で家族に甘える仕草 営業スマイルしか見ていないものにとって 意外なことばかり 物事には

          半分明るく 半分暗い

          平和という風船を

          風船とは 手を離すとすぐに届かない場所に行ってしまうもの 風船とは 小さな針先ですら壊れてしまうもの 風船とは 身近にありそうで実はどの引き出しにも入っていないもの きっと施政者という人たちは 風船の紐を手放した時のあの記憶を失った人のこと きっと 風船のあったことを忘れ萎んでしまった姿を見ようとしない人のこと きっと 風船を手渡した時に見せる子供の笑顔の存在を知らない人のこと ただただ バンクシーの前で立ちすくむ

          平和という風船を