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暖炉に火を焚べる

暖炉は憧れ
知人宅でそれを見つけると
真っ先にその前を陣取り、ほぼ動かない

切り揃えられた薪の山から
数本をそばに置き
主人の許しが出るのを待っている

扉を開く
熱の塊がまっすぐ向かってくる
その中へ手にした薪を焚べる

焚べると書いたが
平成以降の人に伝わるだろうか
投げ入れるのではない
放り込むのとも違う

火の神の饗宴に
そっと貢物を捧げる行為が近いのではないか

炎の形は千変万化
みていて飽きない
やがて暖炉の上に小さな鍋が置かれ
程なく美味しい匂いが溢れてくる

扉の窓から覗き込んでいる間は
火を完全に掌握している気分でいられる
これでいい

毎朝テレビのニュースはどこかで起こった
火事の話題ばかり
寝起きの頭に欲しいのは希望だけ

今は代わりにこうして希望の火を
ただただ見つめ続けている

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