抽象的な質問と具体的な質問
日々の暮らしの中で私たちは常に情報を取捨選択し解釈する。
私たちの身体は適切な情報を得るために合理的なシステムと構造が備わっている。視覚、聴覚、嗅覚あるいは皮膚や筋肉、内耳を通じて収集された情報は神経系を通じて脳に送られる。そして、脳で意味を付加する。このように多くのプロセスを得て、私たちは洗練された情報をもとに行動する。
日々の中で私たちにとって最大の情報源は人と言っても過言ではない。しかし、常に私たちが欲しい情報が入るとは言えない。これを決めるのは、相手の決断次第、またはこちらからの働きかけ次第であろう。
Give and Take
欲しい情報は黙っていては得ることができない。適切な情報を手に入れるには相手に要求し、それに答えてもらわなくてはならない。
私にあなたの情報をください、時間と労力を割いてくださいと要求すると言うことだ。
私が要求すると、相手の頭の中では葛藤が生まれる。余裕がない、秘密主義、保身...のためにノーという結論が出る可能性もある。
しかし、人に自分の意見や感情を伝えたいという気持ちが相手にあれば、こちらの要求に応じてくれるだろう。それが人助けになると思えば、ますます情報を提供しようと思うだろう。
相手を喜ばせる
どうすればここらよく情報を提供してもらえるだろうか。
答えはまず、ありがたいというこちらの気持ちを表現することだ。すると相手は良いことをしたという深い充実感を味わえる。
質問に対して長々と詳しく返事をしてくれる場合は、相手もそれを楽しんでいるとみて良い。(これがある意味「良い質問」となる)。この時は、相手の話の腰を折ったりせず、相手のいうことに関心を示し、思いの丈を語ってもらいましょう。
質問とは、相手にとってはほとんどメリットがない。(面接練習はこの場合考えないでおこう)。なので、情報を出せという矢継ぎ早の質問は相手に不快感をもたれやすい。
どうしても情報が欲しい場合でも、強引な態度で質問を連打するのはやめましょう。お返しとして、こちらから情報提供したりするのも良いだろう。これは、つまり「あなたを信頼します、だから私のことを教えましょう。」ということだ。
人は楽にいきたい
相手から何かを聞き出したい場合、最初に相手が答えやすい質問をしよう。すると相手はリラックスする。迷わずに答えられるというのは、誰にとっても快適なことである。ごく簡単な質問をすれば、相手は自信を持って解答できる。これがスムーズに会話を始めるコツである。
例えば、弁護士が証人に質問する場合、いきなり革新部分を尋ねるのではなく、事件は何時に起きたのか、そのとき証人はどこにいたのかなど、答えやすい質問から入るべきだろう。
会社の採用試験の面接でも同様である。面接官は、「お住まいは?」「ご結婚は?」などのシンプルな質問から始めれば良い。その後で、「これまでの職務経験について聞かせていただけますか?」「なぜ当社を希望するのですか?」と言った踏み込んだ質問に移る。
これは営業など他の分野でも当てはまる。まずは、会話のウォーミングアップから始める。そうすれば、相手は違和感なく会話に乗ってくるだろう。
お目当ての情報が欲しい
質問には、「具体的な質問」と「抽象的な質問」がある。どちらかの質問をするかで相手の返事は大きく変わってくる。
具体的な質問とは、特定の事実を尋ねるものである。この質問をすることで、回答の範囲はかなり絞られる。この範囲を設定するのは、質問者であり、回答する側はほとんど何も考えなくても良い。事実を一つだけ指摘すれば良いのである。
例:「何時ですか?」「苺は好きですか?」
一方、抽象的な質問とは、単純な問いかけである。相手に何かを話してもらうための刺激だ。話がどこへ転がっていくのか、質問者はある程度成り行きに任せている。この場合、質問よりも回答の方が複雑になる。
例:「あなたはなぜこの仕事につきたいのですか?」「あなたはこの状態をどのように改善できると考えていますか?」
スムーズな会話
「あなたは働くということをどう考えていますか?」
「ご自分の仕事について、どう思っていますか?」
「あなたの上司についてどう感じていますか?」
「今の仕事は好きですか?」
最初の3つの質問はどちらかというと抽象的である。しかし、4問目に向かって徐々に具体的になっている。
実際に具体的な質問には答えやすい。答える方は思考を組み立てる必要がないからだ。だから、会話をスムーズに始めるには具体的な質問から始めるのがベストだ。なぜなら、相手は会話に乗りやすいからだ。
一旦、相手を会話に巻き込んだら、抽象的な質問へと移る。相手から返事が返ってきたら、それを手掛かりに再び具体的な質問をする。
このように、具体的な質問と抽象的な質問を使えば、相手から正確な情報を得ることができる。
情報を引き出す
一旦能動的に動き出すと、次々に考えが浮かび、発展し、時には本人も予想しないところまで話が展開する。
つまり、最初は話すのを億劫がっていても一旦話し始めると今度はブレーキをかけるのが億劫になってしますのだ。
真実を全く話せないことよりも辛いのは、真実を半分しか話せないことである。
抽象的な質問をたくさん投げ掛ければ、自然と吐いてが喋る割合が高くなる。
抽象的な質問をするコツ
1. YESかNOかでは答えられない質問をする
「この政策についてどう思いますか?」「改革を行うことについてどう感じていますか?」「何が起きたのですか?」「なぜ彼は断ったのですか?」
このように抽象的な質問は、「なぜ」あるいは「どのように」を訪ねたり、何かの説明を求めたりするタイプが一般的である。
2. 「どう思いますか?」「どうやって?」という問いかけの言葉をつける
会話に「...についてどう思いますか?」「どうやって...ですか?」という言葉をつければ抽象的な質問になる。
3. キーワードを復唱して相手に返す
相手の返事の中にキーワードを見つけてそれをすぐに返す。
例として、これまでの仕事についての感想を同僚に聞いてみた。
同僚「とても気に入っていたけど、上司とトラブルがあったんだよ。」
自分「上司とトラブル?」
相手の言葉を復唱することで、自分がその件についてもっと知りたいというサインになる。
4. 要約して返す
具体的な質問と抽象的な質問の中間あたりにあるのが、相手が話した内容を自分なりに要約して投げ返すことだ。
相手に異議がなければ、イエスという意味の判事だけが返ってくる。つまり具体的な質問に対する答えだ。
もし相手に異議があれば、その理由について説明し、改めて真意を語るだろう。つまり、抽象的な質問に対する答えだ。
こうしたコツを上手く使いこなすためには、とにかく実践してみることだ。
まとめ
質問とは、相手に対する要求である。質問をする時も、相手の気持ちを考えて質問しよう。
質問には具体的な質問と抽象的な質問がある。会話の中でこれらを上手く使いこなすことで、相手から欲しい情報を手に入れることができる。
会話に実際に取り入れる習慣をつけて、会話をより実りあるものにしよう。
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