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学校のテストからメタ認知(自律力)をつけて学生から仕事力もつける。テストの準備と反省は点数だけじゃもったいない。10年目の先生が語ってみた。

学校の定期テスト準備や直しをどこまでするか?は親御さんや生徒本人、先生によっても意見が分かれるところ。
点数で一喜一憂するのもいいですが、今回お勧めしたいのは、点数での一喜一憂より自分の『予想との差』に注目すること。これは勉強に限らず、PDCAサイクルを回す基本だと思います。今学生時代に活かしたり、学生時代を思い出しながら読んでいただけたら幸いですし、学校の先生方のテスト作成の参考になれば嬉しいです。

<テストで鍛えたい、大切なメタ認知力?>


テストの話じゃないの?となりそうですが、テストを通して鍛えたいのがこのメタ認知。最近流行ってきている言葉だと思います。きっかけは新学習指導要領に言葉が乗って、教育政策のひとつとして注目を集めた様です。

メタ認知とは…

メタ認知と自己評価
自身の習熟レベルを正確に評価できることは、学習を継続していく過程で大切なことですが、成績の悪い人ほど自分の能力評価を高く見積もりやすいという研究結果があります。
この研究結果から、正しく自己評価をするためには、自分を正しく客観視する力、つまりメタ認知能力が必要と考えられ、メタ認知の欠如が成績に影響を及ぼしている可能性が示唆されています。…
メタ認知は学習に効果的にはたらきます。自ら計画を立てて学習を進め、その理解度を自身で客観的に評価していくことを繰り返すことは、まさに自律的な学習で必要とされることです。
メタ認知は、知的能力以上に学習結果を高める効果があるという研究結果もあります。自律的学習の際には、メタ認知を意識し、常に自分を客観的にみつめ、自分が理解不足である部分を確かめながら進めるなどの学習方略を活用しましょう。

「メタ認知」とは?教育、ビジネスで大注目の能力を具体例でわかりやすく解説!

少し難しい言葉も並んでいますが、
私が抑えたい点をざっくり言うと
「自分を客観的に適切に評価する能力」
これが大切だと思います。

例えば、
⚪︎「自分がどれくらい食べたらお腹いっぱいになるかを予想する」
のは、結構みんなできるけど(私は買いすぎてしまう方ですが…)
⚪︎「自分がどれくらい勉強したらテストで何点取れるのか。」
これを正しく予想できる人がどれくらいいるでしょうか。
⚪︎「自分がこの課題を終わらせるのにかかる時間はどれくらいだろうか」
仕事になれば、
⚪︎「この仕事を終えるために必要な時間はどれくらいだろうか」
これを正確に予想できる力、あったら何かと役立ちそうですよね。

これがメタ認知力の一つです。

実際「賢い」と呼ばれる人はこの「予想と結果」の整合性が高いと思います。私も経験から、この力を生徒たちに届けるにはどうしたらいいのか。それを考えた定期テストの扱い方が変わりました。

この能力を鍛えるのに定期テストは本当にいい機会です。

じゃあどの様に行うと良いでしょうか。
そのポイントは、単純。

  1. 予想

  2. 結果

  3. 反省

の3Stepを行うこと。
『テスト反省はテストを受ける前から始まっている』のです。
どっかの名言になりそうですね。迷言か。

大切なのは「テストを点数を見るためだけの物にしない」ことです。
もう少し丁寧に言葉にしてみようと思います。

<①メタ認知を高めるのは始まる前の予想>

▪︎何点取れそうか?

まず勉強に慣れてきたら取り入れたいのが
「何点取れそうか?」という予想。
これをやってない人が多く、とても勿体無いと思っています。
ただ、まったく勉強に慣れてない時期にやっても効果が薄い。
適当にやっても効果が薄い。

最終目標は『予想と結果のズレを無くすこと』
これを念頭に、「”コレ”をするから”コレクライの結果”になるはず」と具体的な”根拠”と”予想”を作っていきます。そのためには判断材料としてある程度経験が必要です。

例えば、毎日1時間くらい勉強した。このテキストのココをやってテストに臨んだ。等、今までの経験が予想の根拠になります。まずは基準を作ることが大切です。
ひとまず今回自分がテストに対して行った子を根拠にしてみてください。
とは言え最初は適当に予想するところから始めて、だんだん具体的にしていけるといいですね。

▪︎目標と予想がテストを変える

加えて大切なのは、「目標と予想は分ける」こと
目標は経験に基づかずに自由に。予想は経験に基づいて現実的に。
目標が予想よりも高い方が成長の余地があって良いと思います。
予想を積み重ねた先に目標の達成があるイメージですね。

この予想によって、
「自分の勉強の仕方が何点くらいにつながるのか」
「目標達成するにはどれくらいの努力がいるのか」
自分ベースで見えてきます。(誰かの基準じゃなくてね
誰かと比べてテスト結果の良し悪しを決めるのではなくて、です。


▪︎予想の価値

さて、
「予想なんかしなくても結果だけ反省すれば良くない?」と聞こえそうですが。そんな時は私の中学時代担任、熱血女性体育先生が卒業式に話してくれた言葉をお借りします。


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当時、私たち3年1組の教室は校舎の3階にありました。
涙の卒業式と、最後は教室でのHR。
寄せ書きや絵で埋まった黒板の前で先生は私たちに問いかけました。
みんなに質問です。
今日まで毎朝、何度もこの教室まで階段を登って登校してくれましたね。
本当にお疲れ様でした。
さて、みんなが毎日の様に登っていた階段。
教室まで何段あるかわかる人、いますか?
と聞かれ、当時のクラス全員が答えられませんでした。
担任は続けました。
私たちは”意識していないこと”を
毎日何回行っても身につけることができないのよ。
この事はみんなに本当に覚えておいてほしい。
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私は衝撃を受けました。
知っている人にとっては当たり前のことですが、
人間は認識していないことはできる様になる確率が本当に低いです。

極端な例として、
極北民族のイヌイットは”雪の色や様子”を6〜10種類くらいに見分けられるそうですが意識していない私たち日本人が見分けるのは難しいです。一方で、日本人は雨の降り方を呼び分けることができます。
また南アジアのバイガ族という民族は「虹」を「明るい色」と「暗い色」の大まかに2種類にしか分けられないそうです。
私たちは意識することで、初めて見える様になったり、できることがあります。

食べられる量を予測するのもきっと同じです。
”注文”や”買い物”という予想する、意識する機会を頻繁があるからこそ、自分が食べられる量を正確に予想できるのではないでしょうか。
だからこそ買い過ぎや買い足りないを防いで、生きるのに必要な量を買うことができます。
失敗した時にも、あの時お腹すいてたからなあ。と予想した時を思い出して、具体的な反省ができそうじゃないですか?

だからまず、勉強や仕事についても『どんな結果になるか予想する、意識する』ことから始めてみてください。

すると、自分に必要なものがだんだん見えてきて、反省がより具体的になっていく、自律できてくるはずです。


<②テストの結果はただの事実>

▪︎点数はただの事実


さて、今回は①の『予想の大切さ』が伝えられればほぼ満足です。(笑)
第②段階はとてもシンプルで、大切なマインドは一つ。
テスト結果の良し悪しは点数ではなく、①予想との差になります。

予想を越えるのは良いことですが、良くも悪くも予想と離れすぎている場合、メタ認知力、自己理解が不足していますから、要反省となります。
(極論、点数が悪いことは気にしなくて良いかもしれません。点数が良くても悪くても原因と結果の分析が大切。

テストの点数の良し悪しよりも、自分の予想との差に注目する。
そうしてテストや仕事を本当の意味で自分との戦いに持っていくことが大切です。

仕事も同じではないでしょうか。
成長するためや再現性を高めるためには、仕事の結果だけでなく「原因と結果」両方に注目しなければなりませんね。

<③反省は原因分析が大切>

▪︎ズレの原因を考える

反省は②の結果を元にズレの原因を考えていきましょう
「この準備をしたからこの結果になると思ったけど、
実際にはこういう準備が必要だった。」
「この準備が意外と効果的だった。」などなど、
GOODだった行動BADだった行動を探しながら、
”準備した内容”と”結果”のつながりを探します。

細かいですが、その際

【できた問題】
→準備したからできた(⚪︎よく頑張った、何をやった結果?次も頑張ろう)
→対策してないけどできた(◎定着してる?)
→たまたまあってた(△運も実力の内だが要注意)

【できなかった問題】
→できたかった物(頑張ったけど本番焦ったかな?改善案を試してみよう)
→解説を見たらわかった物(もう少しだった、何が足りなかった?このレベルを丸にするのが次回1番の目標
→わけわかめな物(まだまだ成長途中、今回は置いておこう)

の様にシステム的に分類して分析していくことがおすすめです。

これらが済んでから、問題の解説に入ります。


▪︎一応問題解説について

問題解法の確認は、
「完璧に全て」という人から、「次のテストに出るわけではないのでボチボチと」「過去は忘れて次に進むが良い!」とそれぞれの方針があると思います。私も生徒さんによって対応が変わりますが、基本的に『正解率のプラス2割』を目指すイメージで行います。3割くらいの子はまず5割。5割の子は7割。7割の子は欲張りすぎずに9割。その位が無理なく行えるイメージ。「全くやらない」ということは滅多にないです。


▪︎テスト反省の価値を最大化する


『テスト反省=間違った問題を直す』だけだと「次は出ないから」とやる気も出ないかもしれません。
それよりも『勉強方法と結果の結びつきをメタ的に捉える』ことで、
「じゃあ次は章末問題をもとっとしっかりやっておこうね」
「もう少し難しい問題集を用意する必要があるね」
等、次に向けた具体的な行動の決定が可能だと思います。


「何をやったらいいかわからない」この状況が1番やる気が出ないと思います。

仕事も同じだと思います。
予想、結果、反省の3Stepを意識していけば「わからない」は減っていくはずです。それがメタ認知能力です。ぜひメタ認知能力を鍛えて、『自分がやるべき勉強や仕事を自分で見つけられる』様になってください。これが自律だと思います。

実際、1年も一緒に勉強していると発言や行動が変わってくる様子をよく目にします。(事前に近いことをやっていて1回2回でコツをつかむ子もいますが習慣や思考の変化には時間の経過が必要)

<今回のまとめ>


このメタ認知力、最大に効果を発揮するのは社会に出てからだと思います。

私は仕事をする上で、
原因と結果を考える癖。
物事を点ではなく線で捉えること。
具体的な行動と抽象的な理解を使い分ける様に意識しています。

これらは、
自分の行動の結果を正しく予想する力、
自分の目標達成のために何をすべきか自分で判断する力、
様々な根拠と予想、原因と結果、反省とリトライ
PDCAを回していくことで鍛えることができると思います。

こうしたことが『最初からできている人なんていない』と思います。
経験を積み重ねれば、判断が上手になったり早くなります。

なので、学生のうちからテストを通して自己理解を深めることはきっと将来の役に立ちます。何より今の勉強効率を良くします。

この点はひとりではできない場合には大人を上手に頼ってください。

周りの大人の方は”問いかけ”をうまく活用して、
「なんでだろうね?」とか
「どうしてそう思ったの?」
「これはどうなると思う?」など、
思考を一緒に作ってあげてください。

私も単発での相談も承っています。この予想、結果、反省をPDCAとして回す力、メタ認知力は本当にみんなに身につけてほしいと願っています。

生まれ持った能力や環境に差はありますが、生きていく過程でどんどん変わっていくものは大きいと思います。だから、大切なのは意識するか否か、そして知っているか否か、それだけできっといろんな人の人生は変わっていくと思います。

勉強が人として成長するツールでもありますように。

よく考えたら自分のメタ認知はここから始まった気がすると思いました。高校の先輩が教えてくれました。感謝とその老舗本です。


駄文をご拝読いただき、ありがとうございます。
また次回、宜しくお願いいたします。





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