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あんそろぽろじすと
2021年5月30日 15:40
医学の発達した現代においても、妊娠出産は、母子の命を危険にさらす難行です。ましてや、数百年以上前の過去においてはもっと大変なことだったと推測されます。そうした、生命の誕生と隣り合わせの危機である妊娠出産に際して、過去の人びとがどのような備えで臨んでいたかを調べられれば、ヒトの生命観や生きざまがどのように変化してきたかを知ることができます。しかし、そうした研究は、社会階層やジェンダーによる不平等
2021年2月18日 12:17
「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」ではないですが、従事する性別がなんとなく決まっているように思われている仕事というものがあります。人類学や考古学の分野では、その最たる例が狩猟採集でしょう。ヒトでは、ほかの多くの哺乳類と同じく、妊娠して出産し、生まれた子供におっぱいをあげることができるのは女性だけです。したがって、長い距離を移動し、身体強度を必要とし、動物からの反撃にあって逃げ
2020年7月1日 06:51
1997年、スペインのGran Dolina遺跡より新種の人類がみつかったという報告がありました*1。ホモ・アンテセッサー (Homo antecessor) と名付けられたこの人類の骨は、77.2万ー94.9万年前の層から出土し、古い時代と新しい時代の人類に見られる両方の特徴を備えていました。ホモ・アンテセッサーは、ヨーロッパでみつかっているもっとも古いホモ属 (私たちヒトと同じ分類群) の
2020年3月29日 09:48
手をつなぐという行為に特別な意味があるということは、考えてみれば不思議ですね。手をつなぐのは友愛の象徴で、挨拶のときには握手し、恋人は手をつないで歩き、崖から落ちる人を助けるときには必ずと言っていいほど相手の手をガシッとつかむ描写が出てきます。向こうから歩いてくるふたりが手をつないでいたら、きっと親密な関係にあるのだろうなと想像してしまいます。どうやら過去の人たちのあいだにも、手をつなぐという
2020年1月7日 15:56
ヒトのような形をした巨大な生物がどこか隠れた山奥にいるというお話は、人びとを魅了するようです。だいだらぼっち、雪男、ビッグフットなど、そうした虚構の生物に関する物語にはさまざまなバリエーションがあります。ギガントピテクスの化石は、そうした物語に奇妙なリアリティを添える発見でした。香港の薬屋で漢方薬として売られていた歯が1935年にオランダの古生物学者に発見され、新種として記載されました。ギガン
2019年6月10日 21:25
シベリアのアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟から、これまで知られていなかった未知の人類の骨が発見されたという研究結果が2010年に報告され*1、大きな話題になりました。デニソワ人と名付けられたこの人類に関しては、その形態よりも遺伝情報のほうがよくわかっており、ネアンデルタール人に近縁であることが明らかにされています。デニソワ人については、これまでに指の骨や歯などの小さな部位しか報告されておらず、遺伝情
2018年7月18日 10:44
何百年も昔に描かれた絵画などの貴重な文化遺産について、できるだけ質を悪化させずに後世に残していくことは、現代に生きる我々の責務と言えるかもしれません。この文化遺産の保存や修復には、どのような素材がどのような技術で使われていたかの理解が欠かせません。それらが異なれば、最適な保存・修復方法も異なってくるからです。ですが、作者はとうの昔に亡くなり、使われていた技術もきちんと記録に残っていないような場
2017年5月2日 12:49
小学校の実習などで,チーズ作りを経験した人も多いのではないでしょうか.私が経験したのはバター作りだったのですが,もとは液体だった牛乳がだんだんもっさりしてきて,最後には固体が現れるのは,なんだか不思議なものです.ところで,昔々のチーズはどのように作られていたのでしょう? 文字などでレシピが残っていれば,作り方を知ることができます.でも,そういう情報が残っているのはむしろレアケースです.今回
2017年1月3日 22:34
「キング・コング」のような凶暴なイメージも流布していますが,ゴリラは比較的おとなしい草食性の霊長類です.たしかにオスもメスも筋骨隆々としていますが,ゴリラは肉を食べず,メインの食べ物は果実と葉です.あれ,でもちょっと待ってください.果実と葉がメインの食べ物なのに,ゴリラはどうしてあんなに筋骨隆々なのでしょうか…? ただでさえ野生動物はぎりぎりの栄養状況で生きていそうなのに,どこからタンパク質を
2016年12月1日 07:18
「ウサギによる飢餓 (英語だと“Rabbit starvation”)」という言葉があります.ウサギの肉は一般的に脂肪がとても少ないそうです.ウサギ肉のような,ほとんど脂肪を含まないほぼタンパク質からなる肉だけを食べ続けていると,どんなに多量に食べていたとしても,短い期間のうちに飢餓によって死亡してしまう,というなんだか嘘みたいな現象を説明した言葉です.ひるがえって,人類学の世界では,狩猟採集