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冬咲れい
2020年2月13日 19:03
窓の外は一面の雪景色。線路の連結を車輪が越えてゆくリズムがいつもなら僕を心地よい眠りに誘う。今日はまったく眠くならなかった。彼女に会える嬉しさが覚醒させている。リュックの中をのぞきこむ。読みかけの文庫本と携帯音楽プレイヤーがあった。どちらを手にとろうか迷い、どちらも手にとらなかった。目的地まであと一時間。リュックを胸に抱えると、また窓の外に目をやる。絶え間なく雪が降ってい
2020年2月7日 13:22
くだらない人生を過ごしていた彼の元へある日『白い妖精』があらわれました。白い妖精は彼に告げました。「願い事をかなえてあげます」彼は伝えました。「たくさんの友達をください」彼にはたくさんの友達ができました。その日から彼は毎日友達と遊びました。それは楽しい日々でした。しかし、彼はくりかえす日々に飽きてしまいました。そんな彼の元へ『白い妖精』があらわれました。「願い事をかな
2020年2月3日 12:21
―― 恥の多い生涯を送って来ました。(太宰治・人間失格より引用)この世は化け物ばかりだと思って生きてきた。それはそれは恐ろしい世の中だと思ってきたけれど、自分も化け物の一人だと知ったときの絶望感は深淵の闇に永遠に落ちていくようなものです。―― 自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、自分はその不安のために夜々、転輾し、呻吟し、発狂し
2020年1月16日 17:00
帽子を目深にかぶる切りすぎた髪を隠したくてきみは言う「髪型、素敵なのに」サングラスをかけるおどおどした目を隠したくてきみは言う「きれいな目、してるのに」厚手の服を着る体形を隠したくてきみは言う「良い体、してるのに」心に鍵をかける弱い自分を隠したくてきみは言う「あなたは、誰?」