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あとがき [解離依存症]

起業家という道を経て、今は二作目の出版を目指している橋本なずなです。

昨夜、発作が起きそうな中で、私はnoteを書いた。
側で眠る彼を横目に、執筆は夜中の三時まで続いた。

『 noteを書くことって、なずなさんにとってはどんな立ち位置なの? 』
noteを書くことは息抜きなのか趣味なのか、はたまた仕事の一環なのか、何に類されるのかと彼が尋ねる。

「 うーん。どの要素も持ち合わせてるけど、私が出版の話をもらえたのは、noteの記事が編集者の人の目に留まったからなんだよね 」
「 だから、趣味以上、仕事未満って感じかな 」

私はnote一つ一つが、作品だと思っている。
自己表現であり、社会へのヘイトであり、それぞれが丹精込めて書き上げた一つの作品だ。

私は、ビレッジバンガードの書物エリアに並べられるような作家になるのが夢だ。

一般的な書店は言わずもがなだとして、ビレッジバンガードの書物エリアに並べられる書籍は、どれもウィットに富んでいて、良くも悪くも偏りのある作品が多いように思う。好き嫌いが分かれるもの事実だろう。

そして “アングラ” と呼ばれる世界や、鬱っぽさを多く孕んだもの、エッセイや詩集、自己啓発系も多い気がする。

決して、ビジネス書や王道のミステリー小説などでは無い。
私は、そんな偏ったビレッジバンガードの本棚が好きだ。

かくいう私が師とする作家 ♯最果タヒ さんも、ビレッジバンガードではよく目にする著者の一人だ。

当たり障りのない作品なんて書くつもりはない。
エロさもグロさも、鬱も闇も、幸も不幸も、リアルから目を逸らさない作家で在りたいんだ。


彼は、私が泣きながら自身の解離癖について話している間、優しく私の手を握ったり、頬を撫でたりしていた。

『 そうやな… なずなさんが自分で自分をダメだと思う時があっても、ほら、いつも言う「 えへへ 」って言って笑ってたらいいんだよ 』
『 例えば「 そんな抜けてるところも私だから、えへへ 」と思えたら、少しは生きやすくなるんじゃない? 』

「 抜けてるところも、か。“アイドル” じゃん 」

YOASOBI の【 アイドル 】という歌に、「 抜けてるとこさえ彼女のエリア 」という歌詞がある。
まるでそれだね、という意味で言ったのだけれど、それが彼に伝わっていたのかは分からない。


noteを書き終える頃には、私の心は落ち着いていた。
私は平常を取り戻し、彼の体温でぬくもりを貯めた布団の中へと戻った。

『 おかえり 』

寝ぼけまなこに、彼が言った。

「 ただいま 」
『 note書けたの?』
「 うん、書けたよ 」
『 そうか。よく頑張ったね 』

彼はそう言って、私を強く抱きしめた。

180㎝の彼と、160㎝の私の間に生まれる20㎝の差が、私が彼の胸の中に顔をうずめるにはピッタリな居心地の良さを生んでいる。

よく頑張ったね、それは執筆をするということの他に、
「 自分で自分の心の歪みをコントロールできて偉かったね、“頑張ったね” 」の意であると、私は受け取った。

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