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短編小説「自己愛の巣」#ピリカグランプリ”不”参加作品
6面の鏡に囲まれたその小部屋は、ナルシシズムを加速させる装置だ。
様々な衣装を着て、時に化粧をして、自らを鏡に映す。40になる男が何をやっているんだという羞恥心を超えた頃、ナルシシズム、つまり自己愛がくすぐられる。悪くないじゃないか。
そこで現れるのが彼女だ。天井の無い小部屋の上から俺を見下ろす。芸術という概念が命を宿したような美しい姿を見て、積み上げてきた自己愛は崩れ去る。
そこまでが
短編小説「1000年目の笑顔」(読了時間8分)「才の祭」参加作品
その年のクリスマス、サンタクロースからプレゼントをもらった子供はいなかった。世界中で、たったの一人も。それは1000年以上にもなるサンタクロースの歴史の中で初めてのことだった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「テレビの取材…ですか?」
「あぁ」
妻の問いかけに、サンタクロースは介護ベッドに横たわったまま応えた。
その体に昔のような恰幅の良さはなく、細い体に無数の皺が刻まれ
短篇「桃色笑顔」(読了時間20分)
「ピンクマンのスーツ、触りに行って見ようぜ」
人がまばらになった放課後の教室で、クラスの男の子がそう言ってマナ達を見回した。周りの女の子達は、お祭りにでも誘われたみたいな、少し興奮気味な笑顔ではしゃぎ始めた。
「どうする?」
「先生に怒られちゃうよー」
「でも楽しそうだよね!」
それは確かに楽しそうな冒険だった。ばれたら先生に怒られる。でも、その事が冒険を魅力的にする。やってはいけないと言われ
短編小説「SSSSNS」(読了時間5分)
『
「まじ、めっちゃ引く」
私のストレートな感想に、美沙は神妙に頷く。
「分かってる、自分でもドン引きよ。でも喋れって言うからさ! あぁ、やめとけば良かった!」
大学のカフェテリア、1限が終わったところ。私と拓人と3人でコーヒーを飲みながら喋っていた美沙は、大袈裟に頭を抱えてみせた。
「いや、ウチら女子大生らしくポップな会話してたわけやん? 最近どうよ?的な」
私は改めて会話を続ける。
「ま
短編「伝説の勇者(株)」(読了時間15分)
◆ 第一章 ◆
「・・・そんなわけで、今期は魔術師の迷宮を1年以上攻略できないという業績に終わり、苦しい一年になりました。皆さんのボーナスについても、今期の業績から、厳しいものとなりましたがご理解ください」
社長の訓示が終わり、勇者たちは、おのおのの部署に戻っていく。
「やっぱ魔術師の迷宮、時間かかり過ぎだもんなぁ」
「でもこの額は無いだろー」
「ボーナスが出るだけマシと思うしかないな」
そ