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早川書房に見捨てられた三部作たちについて
アメリカ人はとにかく三部作 (Trilogy) が好きだ。とくに SF やファンタジーの長編は三部作として計画されているものが非常に多い。売れたから続編を出す、というようなことではなく(そういう場合もないわけではなかろうが)、作家も出版社も三部作として長編を計画する。猫も杓子も三部作で、いまどきの作家のウェブサイトとかみにいくと、既刊一覧のページでは Trilogy では "ない" やつが St
もっとみる『ガラスの宮殿』その他
山梨正明『小説の描写と技巧』(ひつじ書房)
認知言語学の観点から小説の表現を検討する本。
文体の舵を取るやつではやれ方言を使ってみろだの句読点なしで書いてみろだの形容詞を使わないで書いてみろだのバカバカしいトレーニング課題しかなくて、あんなものをやったところでじゃあ文章力がつくかといわれるとたぶんみんなぜんぜん自信を持てないだろう。そんな中サイズの文体よりさきにもっとミクロな文体でわたしたちは
『フルメタル・パニック!』その他
アイラ・M. ラピダス『イスラームの都市社会』(岩波書店)
マムルークって……かっこいいね。よそから奴隷を連れてきて高度な教育を与えてエリートに据えるっていう仕組みってどれくらい頭いいんだろう。世襲されないっていうメリットはあるだろうけど忠誠を誓わせるやりかたが(べつにそれは物でも心でもよいのだが)相当確立されていないと難しいだろうな。
ローマとかヴェネツィアとか、その時代の世界標準からすると
『わたしたちの怪獣』その他
中西鼎『たかが従姉妹との恋。 2』(ガガガ文庫)
キャラが多すぎる!
一巻ですでに年上の従姉妹、同い年の従姉妹の双子、とくに従姉妹というわけではない同級生の女子がヒロイン候補としてでてきたのに、二巻で年下の従姉妹と年下の女子小学生の従姉妹を増やすやつがおるか? しかも年下の従姉妹たち、2 巻ではあんまり話に絡んでこないし……。
キャラやシチュエーションを用意してから継ぎ接ぎして話を作っている
『オレンジ色の世界』その他
カレン・ラッセル『オレンジ色の世界』(河出書房新社)
「竜巻オークション」のオチの付け方はソーンダーズっぽいというかソーンダーズっぽいひとたちっぽい。というのつまり標準的な(ってなに?)短篇小説っぽいということで、わたしはこういうのが嫌いではない。「ブラック・コルフ」はおもしろかったが「レモン畑の吸血鬼」のほうが覇気を感じた。
収録作はどれも面白かったがどれもメッセージが存在してしまっていて、
『ロジカ・ドラマチカ』その他
辻真先『深夜の博覧会』(創元推理文庫)
辻真先名義を読むのは初めて。牧薩次は読んだことあるんだけど。
昭和初期を舞台にしたミステリで、まぁ、なんというか、足し算に足し算を重ねて作った感じ。まとまりはないし、大がかりなトリックもそれありきで舞台を作られたんじゃぜんぜん響かない。反戦思想開陳パートもぜんぜん興味がない。少年の淡い初恋みたいなのもややキモだった。じゃあつまんないのかといわれると、読んでる
『世界でいちばん透きとおった物語』
杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫 NEX)
すばらしい! ネタバレ厳禁とか予測不能な衝撃のラストとかしゃらくさい宣伝がされてて編集のセンスを疑ったが、まぁきもちはわからんでもないし、今回ばかりは許したる。
以下はネタバレあり感想へのリンク。
パスワードは「 」に当てはまる五文字です(既読者ならまちがいなくわかるはず)
https://301.run/r/do/n54l
『錬金術の歴史』
『錬金術の歴史』よみおわった まぁ……よくかんがえたらべつにこのさき錬金術やる機会ないしな
Ageyev の続き。1 章の 3.
主人公も属しているクラスのカースト上位集団の話。馬蹄が湾曲しながらその両端が接するように、あたまいいやつと最底辺が混在するグループだったとか。たぶんどうでもいい節で、さいごにでてきたヴァシリイ・ブルケヴィッツが重要人物。