感染症の発症で起こりやすい、とびひの症状や原因、合併症、治療法、予防策などは?
こんにちは、翼祈(たすき)です。
とびひとは、正式名称は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれ、細菌を原因とする皮膚の感染症です。ヒトに移りやすい膿を持つ発疹が大きな特徴です。
アトピー性皮膚炎・傷すり傷・湿疹・虫刺され・汗疹(あせも)などで皮膚をかきむしり、そこに生じた浅い傷にバイ菌が侵入することで、赤く腫れ、水ぶくれ(水疱)やジュクジュクした状態(膿痂疹:のうかしん)を形成して発症します。
身体の至るところでも出来ますが、顔(鼻、目、口、耳の周囲)、脇、頭が好発して発症する場所です。
虫刺されや湿疹などをかき壊した部位に細菌が感染し、そこから“飛び火”するかの様に周りの皮膚や離れた部位に症状が拡大します。
とびひには、水ぶくれが発生するタイプ(水疱性膿痂疹)と、厚いかさぶたが発生するタイプ(痂皮性膿痂疹)があります。多いのは主に、虫刺されやあせものかき壊しから生じることが多く、水ぶくれになるタイプです。
今回はとびひの症状、原因、合併症などについて特集したいと思います。
◉症状
水ぶくれになるタイプでは、目・口・鼻の周囲から症状が出始め、赤みやかゆみを伴う水ぶくれが発生し、水ぶくれが破れてただれ(びらん)を発症します。水ぶくれの中身を触った手で別の部位を触ることで病変が至るところに拡大します。夏の時期を中心に、赤ちゃんや子どもによく見受けられます。鼻の穴を頻繁に触ることで鼻の周りに生じることもあります。
かさぶたになるタイプでは、赤みから始まり、小さな膿のたまった水ぶくれ(膿疱)が発生し、膿疱が破れてただれ、厚いかさぶたが生じます。時に発熱やリンパ節の腫れ、喉の痛みなどの症状が一緒に出現することもあって、患部を触ったり、かきむしったりすると、症状が拡大してしまいます。広い範囲で皮膚がむけて重症化する場合もあるので、注意が必要となります。
発症しやすい季節は関係なく、どの年代でも発症します。
ヒトからヒトへ移るため、保育園や幼稚園などでのとびひの集団発生が多いことも大きな特徴です。かいたりいじったりしていると、そこから触った手で身体中に移って増殖していくのも大きな特徴です。さらに接触により周囲の子どもにも移りやすいです。こうしてどんどんヒトからヒトへ移ってしまうので、火事の火の粉が飛び火することに似ていることから「とびひ」と呼ばれています。ヒトからヒトへ移る皮膚病の代表と言えます。
とびひは、学校保健安全法という法律の中で「学校感染症、第三種(その他の感染症)」として扱われる病気です。他の子どもさんに移す可能性があることで、基本的には適切な治療を受け、病変部を包帯やガーゼできちんと覆い肌を露出していなければ、医師の診断のもとで登園・登校はできる様になると判断されます。
ですが、病変が多発していたり、とびひが広い範囲に広がっている時には休ませる方が良いと思われます。
◉原因
虫刺されやあせも、湿疹をかき壊して傷ができたり、アトピー性皮膚炎や乾燥肌などで皮膚のバリア機能が低下している部位に細菌が感染することで発症します。
主にとびひの原因菌となる細菌は、レンサ球菌(A群β溶血性レンサ球菌)や黄色ブドウ球菌という種類の細菌です。
これらの細菌は決して稀な存在ではなく、健康な人の皮膚上や喉、鼻の中などによく存在する「常在菌」と呼ばれる細菌です。皮膚にできた小さな傷から侵入した時に、とびひを発症する原因になります。
◉とびひの種類
①水疱性膿痂疹
皮膚に生じた水ぶくれが数日で大きくなり、簡単に破れてただれる様になります。強いかゆみを伴うので、水ぶくれの中の浸出液には、黄色ブドウ球菌が沢山含まれていることから、とびひの傷をかいた手で違う身体の部位を触ることで身体の全身に拡大します。原因の細菌は黄色ブドウ球菌で、ほとんどのとびひがこのタイプとなります。季節は主に梅雨から夏の季節に発症し、年齢は0~6歳までの乳幼児に多い傾向です。
黄色ブドウ球菌に感染すると、皮膚の中で細菌が増殖します。その時に出す毒素によって、かゆみを伴う水ぶくれが生じます。水ぶくれは数日で大きくなり、破れてジュクジュクした傷を形成します。
黄色ブドウ球菌は、鼻前庭(鼻の穴の入口部分)に多く存在していることと、子どもが鼻の穴を頻繁に触ることで、鼻の周りに生じることも多くあります。
②痂皮性膿痂疹
赤い腫れから痛みを伴った膿を持つ水ぶくれを形成し、それが破れてただれ、その後厚いかさぶたになります。季節を問わず1年中見受けられ、年齢は小さい子どもだけでなく大人にも見受けられますが、大人に患者さんが多い感染症です。
原因菌は主にレンサ球菌が原因で生じますが、黄色ブドウ球菌にも同じ頃に感染していることがしばしば認められます。年齢や季節を問わず、突然発症します。アトピー性皮膚炎などに合併していることが多い症状と言えます。
炎症が強いことで、皮膚の症状だけでなく、患部周辺のリンパ節が腫れたり、発熱、頭痛、喉が痛んだり、と全身症状を伴う場合もあります。
◉感染経路
感染力が強く、主に他のヒトから感染します。
タオルやプール、衣服を通して感染することもあります。
◉合併症
とびひの原因菌である「黄色ブドウ球菌」や「レンサ球菌」が原因で、違う病気を発症することが極めて稀にあります。
代表格としては、「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」(別名SSSS:フォーエス)という病気です。これは、黄色ブドウ球菌が作り出す毒素が血液の中に侵入することで発症します。高熱を出し、皮膚が火傷の様に真っ赤に腫れて、水ぶくれの様になります。
そして、触っただけで皮膚がはがれ落ちて、強い痛みを伴います。ほとんどは入院して治療を受けることが必要です。とびひの治療を適切に受け、治療薬で原因の細菌をしっかりと退治しておくことで予防可能です。
◉診断基準
症状の問診と視診で確定診断をします。発疹が全身に拡大している場合や、発熱が認められる場合は原因となる細菌の種類やとびひ以外の病気の可能性を解析するため、血液検査や細菌培養検査を実施することもあります。
◉類似する病気
とびひに類似した症状として、[box class="blue_box" title=""]アトピー性皮膚炎、水ぼうそう、じんましん、接触皮膚炎、あせも(汗疹)、水いぼ(伝染性軟属腫)、接触皮膚炎など[/box]があります。
自己判断で誤ったケアを行なってしまうと、重症化してしまうリスクがあることで注意が必要となります。
◉治療法
症状が悪化していくと長い間治療を受ける必要や、痕が残る場合がある場合があるので、水ぶくれなどの症状を見つけたら皮膚科の受診を推奨します。
黄色ブドウ球菌には、セフェム系抗菌薬が使われます。難治性の時には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus:MRSA)を発症している恐れがあります。
レンサ球菌には、セフェム系抗菌薬やペニシリン系が使われます。後遺症として腎障害を発症する場合があるので、皮膚科で処方された内服薬は最後まで飲み切りましょう。
軽症で、ほとんど全身に拡大していない場合は、抗菌薬の入った塗り薬を使います。とびひが全身に拡大している場合は、塗り薬に加えて抗生剤の内服を5〜7日間程度行います。治療を開始して最初の2〜3日目に、治療が適切であるかの効果判定を実施します。改善が余り見られない時には皮膚の細菌培養の検査をして抗生剤の変更をします。
強いかゆみを伴う場合には、かゆみ止めの薬(抗ヒスタミン薬)を使用する場合もあります。
症状が重症の時や、なかなか治癒しない時などには再度皮膚科を受診して下さい。
抗菌薬の内服や外用薬による治療が実施されます。
極めて稀ですが、黄色ブドウ球菌の毒素が血液中に侵入し、高熱、皮膚の強い痛みや赤みなどが認められる「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」に進展する場合があります。この症状は緊急度の高い状態で、速やかな皮膚科の受診が必要となります。
参考サイト
とびひの治療。家庭でできるケアについて キャップスクリニック
◉予防策
予防策として、以下のようなものが挙げられます。
・家族に移さない様に、タオルや衣服は共用しない様にしましょう。
・外遊びをする時は虫よけスプレーを使用したり、長袖長ズボンを着るなど、虫刺され対策を行いましょう。虫に刺されたときは、治療薬を使い、肌をかかない様にしましょう。
・お風呂はシャワーで済ませ、石鹸をよく泡だてて、優しく患部を洗い流しましょう。兄弟がいる場合は、順番を一番最後にお風呂に入れるのが良いと思われます。原因菌を洗い流し、皮膚を清潔さを維持し、新たな発疹ができない様にすることが、とびひの治癒が早くできるコツです。
・鼻水は垂れたままにせず、こまめにふき取ったり、自分で鼻をかめる様であれば鼻をかみましょう。
・アトピー性皮膚炎を抱えている子どもさんや、怪我や虫刺されなどで皮膚に傷のある子どもさんはとびひに発症しやすいので、これらの治療をしっかりと受けて、かきむしらない様に気を付けることが重要です。
・オムツ交換はこまめに行い、オムツかぶれを防ぎましょう。
・また、汚れた手でとびひを触ることで細菌感染することから、普段から爪を短く切り、かきむしらない様にすることも大事です。そして、毎日石鹸で手洗いをする習慣を身に付けましょう。
・鼻の穴や鼻の周りをよく触るクセがある場合は、できるだけ触らない様に意識しましょう。
・基本的に、包帯やガーゼなどで患部を覆ってヒトと接触しない様にした状態で、登園・登校はできます。ですが、保育園・幼稚園や学校によって独自のルールがある時もあるので、その指示に従って下さい。また、プールは全てのとびひがかさぶたになるまでは禁止です。プールはとびひの部分が全て乾いて、硬い「かさぶた」になれば入れます。
・夏場は適切にエアコンを使い、あせもを防ぎましょう。汗をかいた時はこまめに拭いて、着替えをしましょう。
・とびひの症状が消えても、肌に原因菌が残っていることがあるので、自己判断で治療を中止せずに医師の指示に従って下さい。
・とびひは一度感染すると終生免疫が出来る病気ではなく、何度でも感染します。そのことで、完治しても安心せず、日々の生活からとびひを防ぐことを意識しましょう。
・虫さされ部分、傷、湿疹などがジクジクして治癒しない時や、拡大する場合には、とびひの可能性があり、早期に皮膚科を受診して下さい。
私はかゆかったりして手に湿疹ができると、ブワーッと広がって、暫く状態が悪いので、基礎疾患もありますし、とびひにも気を付けたいなと思いました。
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