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【中国記憶note】おらが村の大問題、中央電視台なら解決してくれるはず!

北京で見た謎の行列の正体は?


もう10年ほど前の北京。国営テレビ中央電視台(CCTV)の本社前(当時)に、よく長蛇の列が出来ているのを見て不思議に思っていた。何の列だろう。一見して地方の農村から出てきたと思われる人たち。彼らが目指すのは、テレビ局脇の鉄格子がある窓口だ。


彼らはなんやらお金を払って、紙をもらっているように見えた。後日中国人の同僚に聞くと、彼らは地方から、自分の地域にある問題を改善してもらおうと、わざわざ北京まで陳情にやって来ている人たちだという。

上京して、「上訪(シャンファン)=陳情」


みんな木の板や布切れ、段ボールなどに思い思いの訴えを書いている。

この看板には、こんなことが書かれていた。

「中央の政策は良いが、○○県の汚職の犯人たちはひどすぎる」

○○県の各部門は、どこも汚職だらけだ。○○、○○、・・(全て人名)、彼らの汚職は9800万元にものぼるのだ。
(注:私は娘を連れて「上訪」に来てもう何日も経ちますが、もうお金を使い果たしました。心ある皆様どうかお助けください。良い人が一生平穏に暮らせる世の中でありますように!

この看板にも書かれた「上訪(shàngfǎng シャンファン)」とは、陳情のことだ。

正式には、信訪(xìnfǎng シンファン)とも言って、中国の憲法でもちゃんと保障された人民の権利だという。一時は出稼ぎの農民工のターミナル駅でもある北京南駅の周辺にこうした陳情の人たちが集まって滞在し「陳情村」と呼ばれ、社会現象にもなった。

上訪はもともと政府の機関に対して行うものであったが、「テレビ局に取材に来てもらったら解決するはず」と、CCTVに殺到するようになったのだという。

上記の看板は切実な汚職の訴えであったが、他には、「うちの子供はこんなに頑張っているのにこの待遇は少なすぎる」「俺だけ◯◯をもらえなかったのは理不尽だ」など、どう見ても個人的な話と思われる訴えも少なくなかった。

どんな訴えにしろ、彼らはみな真剣。おそらく一族を代表してお金を借りるなどして上京し、問題解決のための一大使命を果たそうとしているのだ。

突然、一台のマイクロバスが・・・


しかし、通り過ぎる街の人たちは、ちらっと見たあと、冷たい表情で足早に通り去っていく。「そんなこと取材してくれるわけないだろ」とでも言いたげな感じに思えた。

そして、私の目の前でショッキングなことが起きた。

一台のマイクロバスが、サーっと走って来て停まったかと思うと、男たちが、陳情に並んでいる人たちをどんどんバスに乗せていったのだ。あるおばあさんが「何なの?私は陳情に来ただけよ。」と叫んでも、「はい乗って乗って」とおかまいなし。そして、バスは走り去り、窓口前はシーンと無人になったのであった。

この時は撮影を制止され、私は呆然と立ちすくして、目の前で起きたことを見ていただけだった。

一体何が起きたんだろう。彼らはどこに行ったのか。

それにしても、わからないことだらけだ。自分がこれまでの人生で見たことがない光景が次々に起きるのが中国だ。

その後、この窓口はどうなったんだろう。
こんな形の「上訪」は、まだ行われているのだろうか・・・
知っている方がいたら、ぜひ教えていただきたい。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

AJ 😀









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