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産総研デザインスクールの学びを社内へ広めたい。修了生が社内研修を立ち上げた理由

パナソニック株式会社様:産総研デザインスクール1期生・大江純平さんと嶋田康章さん

産総研デザインスクールの修了生・現役生の活躍を紹介するnoteマガジン「​​AISTDSアンバサダー」。今回は産総研デザインスクール校長・小島がデザインスクール1期生(2018年度)の大江純平さんと嶋田康章さん、お2人と社内研修を実施しているパナソニック株式会社の村松悦司さんと川野慎一朗さんにお話を伺いました。
パナソニックでは大江さんと嶋田さんが中心となり、産総研デザインスクールの経験をもとにした独自の研修を実施しているとのこと。この記事では産総研デザインスクールでの学びや、社内で実施している研修について、そしてご自身の変化に迫ります。

左から産総研デザインスクール校長・小島一浩
技術アカデミー 技術人材開発部 運営管理課 主幹・村松悦司さん
戦略本部 CCXOチーム 主任技師・嶋田康章さん
ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部 機能デバイス設計3課 課長・大江純平さん
技術アカデミー 技術人材開発部 部長・川野慎一朗さん


産総研デザインスクールで、体験して学ぶ面白さに気づいた

小島:お二人は上司の推薦があって産総研デザインスクールに参加されたと伺いました。産総研デザインスクールに参加した時の印象はどうでしたか?

大江さん:産総研デザインスクールでは全体的に話しやすい雰囲気でした。授業の冒頭にアイスブレイク* をする文化も産総研デザインスクールで初めて経験し、とても新鮮だったことを覚えています。

今まで自分が受けてきた研修は真面目に答えないといけない意識が常にあり、どこか身構えて参加していました。しかし産総研デザインスクールには自分の本音を尊重してくれる雰囲気が常に用意されていて、リラックスして受講できたと思います。

※アイスブレイク
ミーティングなどの冒頭に行われる短いワークのこと。参加者の話しやすい雰囲気作りと本題のワークへの足場を作ることを目的としており、産総研デザインスクールでは「自分を表すものを持ち寄り紹介する」などのワークを行っています。

小島:たしかに、参加者からも似たような意見をよくいただきます。2人は受講を通して印象的だった授業や瞬間はありますか?

大江さん:私はクリエイティブリーダーシップの授業が印象に残っています。クリエイティブリーダーシップは、カオスな状況の中でも、チームや場をリードしていくリーダーシップを学ぶ授業です。

授業では、最初にワークの説明がないまま、とてもカオスな状態でワークに取り組みます。その後、参加者がワークでの経験をもとに内省を促し、最後に講師が少し理論を紹介する。このプロセスがとても新鮮だったんです。

従来の研修だと、最初に理論を伝えて、理論を基にした実ワークに取り組むことが一般的です。しかし、それでは講師が提供する学びしか得られないことが多いですよね。クリエイティブリーダーシップのプロセスは参加者それぞれが自分の学びを生み出すので、今までにない面白い授業だと思いました。

嶋田さん:僕はデンマークの視察が印象に残っています。視察ではデンマークの人たち相手に、英語でプロジェクトのプレゼンをするという、今までにない経験ができ、とても刺激的だったことを覚えています。

また自分では拙いプレゼンだと思っていたのに、周りからは「とてもよかったよ!」とフィードバックしてもらいました。海外では見たものをより良くするためのフィードバックをしてくれるので、フィードバックの捉え方が変化した経験でもありましたね。

小島:2人とも産総研デザインスクールが大事にしている「体験をもとに学ぶこと」が印象に残っているんですね。とても興味深いです。


受講中の学びが、本業と学びを両立するポイントに

小島:産総研デザインスクールの受講を考えている方から、「本業と受講を両立するのは難しくないですか?」と相談されることがあります。お2人は受講中、関西から東京に通いながら産総研デザインスクールに参加されていましたよね。どう両立していたのでしょうか?

嶋田さん:当時は産総研デザインスクールだけでなく、いろんな研修を受けていました。会社には通常の半分くらいしかいない状態で仕事を進めていたので、仕事に優先順位をつけて取り組むことを意識していました。

受講と仕事を両立した経験ができたことで、自分がやるべき仕事をメリハリをつけて進める働き方が身についたと思います。その経験は今でもとても役に立っていますね。

大江さん:私は産総研デザインスクールで全て一人で取り組むのではなく、ある程度チームメンバーに任せることも大事だと気づきました。自分が本当にやるべきところを見極め、同僚に頼るところは丁寧に引き継ぎをしたうえで、お任せしていました。

小島:大江さんはチームメンバーに任せることの重要性に気づいたとのことですが、期間中に自分が変化したと思ったことはありましたか?

大江さん:産総研デザインスクールを受講する前は、基本的に仕事は自分で全てやるようなスタイルでした。しかし、産総研デザインスクールでチームでプロジェクトを進めたとき、チームで取り組む面白さに気づいたんですね。

そのため本業でも同僚に頼ることが増えました。すると、同僚からも頼られることが増えてきて、結果的にチーム全体のパフォーマンスは上がったと思います。チームで取り組む面白さに気づけたからこそ、その学びを本業に活かして両立することができたと思いますね。

小島:とても素敵な気づきですね。嶋田さんは自分が変化したと思うところはありますか?

嶋田さん:僕は実行力がついたと思います。産総研デザインスクールに参加する前は、自分の研究を一人で突き詰めていたので、周りをあまり意識してなかったんですね。

しかし、産総研デザインスクールでチームで動くからこそクリエイティブなことができると気づいて、この学びを社内にも広めたいと大江さんと研修をつくることになりました。

産総研デザインスクールに参加していなかったら、誰かと手を組んで社内研修をつくろうなんて思わなかったと思います。自分がやりたいことを誰かと一緒に形にするようになったのは、大きな変化だと思います。


産総研デザインスクールの学びをもとに作られた社内研修

小島:お2人は産総研デザインスクール修了後に社内で研修を実施していますよね。まずはどのような研修をしているか伺えますか?

嶋田さん:社内のマインド研修という位置付けで、2日間のオンラインプログラムを行っています。クリエイティブマインドを醸成することを目的とし、対象はプロジェクトのリーダーに携わる方などを設定していますが、希望者は誰でも参加できるようになっています。

僕たちがファシリテーターとなり、1日目はマインドセットにアプローチし、2日目はクリエイティブなものを実際に作るプロセスを体験してもらいます。全体を通して、経験学習理論に基づいたワークショップになっており、私たちが産総研デザインスクールで得た学びを届けられるよう、日々改善しています。

大江さん:この研修を始めた当初は2人で独自に実施していました。その後、とあるプロジェクトで村松さんに出会い、村松さんから私たちのプログラムを社内の研修としてやってみないかとお声がけいただき、今の形態に至っています。

小島:ワクワクするプログラムですね。村松さんも一緒に研修を運営されているとのことですが、参加者からの反応はどうでしょうか?

村松さん:研修は2020年11月から定期的に開催していて、既に計100名近くの方に参加していただいています。参加者には事後アンケートで研修の評価をしてもらっています。この研修の点数は他の研修に比べると、すごく高いまま継続しています。

大江さん:参加者からは「こんなにおもしろい研修は初めてだった」というコメントもよくもらいます。

小島:素晴らしいですね。お2人とも研修は本業と両立しながら進めていらっしゃいますよね。忙しいなかでも、継続している理由はありますか?

嶋田さん:一番大きな理由は、修了してからも産総研デザインスクールで学んだことを忘れないためです。日々業務をしていると、学んだことを忘れてしまうのがほとんどだと思います。一番学びが身につくとされる「教える立場」になることで、学びを忘れないようにしています。

研修をファシリテートする立場になって、産総研デザインスクールの土台にはきちんとした理論があったんだなと気づきました。当時の先生たちが何を考えて、授業をしてくれていたのか知ることができて、より学びが深まっていると思います。

大江さん:私も学んだことを忘れないために継続しています。研修では、自分たちが産総研デザインスクールで得た学びを届けられる体験をデザインしています。

しかし実際やってみると、参加者が自分たちでは気づかなかった学びを共有してくれることがあるんですよね。そこから自分たちも産総研デザインスクール期間中を思い出し、先生はこういう側面での学びも得て欲しいと思っていたのではないかと気づくことがあります。

研修で毎回新しい学びがあることも継続している理由の一つだと思いますね。あと、社内の繋がりができることも嬉しいポイントです。


小島:研修は自分たちの学び直しの機会にもなっているんですね。村松さんは一緒に研修をつくってきたなかで、お2人の変化を感じていらっしゃいますか?

村松さん:研修を始めた当初は、2人が参加者の想定外の反応に対して若干戸惑いを感じているように見受けられました。

しかし現在では、全てを柔軟に受け止めて消化し、より新しいものを生み出していく姿勢に変化したように感じます。だからこそ内容も変化し続けていますし、より濃く充実した内容にブラッシュアップできていると思います。

小島:素晴らしいですね。修了後も産総研デザインスクールの学びを起点に、学び続けていらっしゃることが非常に嬉しいです。


現場と研修で学びを伝えていきながら、パナソニックをクリエイティブな会社にしていきたい。

小島:最後に、お2人の今後の展望を伺えますか?

大江さん:自分たちが実施している研修を常にアップデートしつつ、産総研デザインスクールで得た刺激的な学びを、研修の参加者にも届けていきたいです。

また、僕は修了後にマネージャーとなり、産総研デザインスクールの学びをマネジメントスキルに活かしています。たとえば、相手にフィードバックする時は最初に感謝の気持ちを伝えつつ、より良くするためには何ができるかという観点で伝えています。チームメンバーからの評価も上々で、パフォーマンスも上がってきています。

今後は、自分のチームだけでなく他の部署との連携にもアプローチし、パナソニック内でいい組織づくりができるよう尽力していきたいです。

嶋田さん:僕は産総研デザインスクールに参加したことで、いろんな人とコラボレーションする大切さを学びました。修了後はキャリアも大きく変化し、現在は研究だけにとどまらず、様々なプロジェクトに関わっています。

今後は研修も継続し、現場でクリエイティブなことができるスキルを広げていきたいです。将来的には、パナソニックが最先端の創造的なことに取り組む「クリエイティブな会社」と思われるようになって欲しいですし、自分もその一員として携わっていきたいです。

小島:お2人の活動が社内にも確かに伝わっていて、これからどんどん広がっていくのでしょうね。2人の今後の活躍がとても楽しみです。今日はありがとうございました!


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