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働くということ

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#小説

休職記念日

休職記念日

前職の会社に行けなくなってから、もうすぐ1年が経とうとしている。

ちょうど、今ぐらいの時期。

植物たちが、これからやってくる冬に備えて少しずつ支度をし始める頃。

わたしは、会社に行けなくなった。

原因は簡単、適応障害。

たぶん

”よくあるやつ”で

職場にはお局さんがいて。

コミュニケーションがあんまり上手ではなく、

どちらかというと控えめで

不器用だったわたしとはとっても相性が

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まるで蟻のように

まるで蟻のように

人間はなぜ、他人に期待してしまうのか。
その根源を辿れば、たぶん、
言語を持ってしまったから、という答えに行き着く。

言語をもち、
気持ちが通じ合う喜びを知ってしまったから。

「電話が鳴る、そしてこう思う。誰かが誰かに向けて何かを語ろうとしているのだ、と。

僕に向かって何かを語ろうとする人間なんてもう誰ひとりいなかったし、少なくとも僕が語って欲しいと思っていることを誰ひとりとして語って

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本日のいと哀れなりけり

本日のいと哀れなりけり

駐輪場にぽつんと取り残された
ひとりぼっちの自転車

夜の闇に紛れそうなほど
ビロードのように美しい黒猫

アスファルトの上でタイヤに踏み潰され
見るも無残な歪な形に羽が突き出たカナブン

女友達のとめどない愚痴に
同意するとも正論をかますとも分からず
そうだねとただ曖昧に笑うわたし

本日のいとをかし なりけり

エントランス脇の金木犀の
濃厚な香り

秋の到来

マイノリティが勝利する季節

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