イランのヘリコプター墜落が世界経済に与える影響(7)
このシリーズは、2024年にイランがBRICSに加盟したことが、米国の #基軸通貨 としての地位を失う可能性、並びに産油国や中国、新興国の米 #ドル離れ が世界経済や日本経済に与え得る影響について解説しています。
このシリーズに書かれている米国を中心とした #世界秩序 の崩壊は、一部の人にとっては常識であり、態々説明するまでもないことです。ところが、大部分の日本人にとっては、 #イラン や中東諸国、 #イスラエル や米国の動向には殆ど興味がなく、さらには、『 #新世界秩序 』という単語を聞いただけで『 #陰謀論 』と思考停止してしまう人も少なくないので、これまで表題の #ヘリコプター墜落 とは、直接関係のない話をしてきました。
『 #資本主義の終焉 』といったタイトルの書籍が、経済書としては異例のベストセラーになっていることをご存じない方も多いです。ところが、資本主義が終焉するということは、米国や #日本経済 が崩壊するのみならず、 #年金制度崩壊 、日本のエネルギーや肥料、食料輸入などに著しい影響を与えることを意味し、日本人の半数が餓死や内戦などで死亡しても不思議ではないということです。
意外に思うかも知れませんが、突如として自国の通貨価値がゼロになっても、自給自足で生活できている #アフリカ や #インド の貧困層はそれほど困らないのです。何故なら、彼らは元々、現金も電気、ガス、水道、電話といったライフラインが無くても生活できているからです。一方で日本の大都市でライフラインが停止した場合、都会人の大半はサバイバルすることができないでしょう?
これまでの説明で、2024年のイランの動向が、資本主義や米国の覇権主義が数年以内に機能しなくなる起爆剤になることが、ある程度ご理解いただけたと思います。そこで、本稿からは、イラン大統領と外務大臣を乗せたヘリコプターが墜落し、両名が亡くなったことの具体的な影響について解説を試みます。
WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)とBRICSの共通点
私は #WTO と #BRICS を同じテーブルにあげて議論している報道や記事を読んだことがなく、何故もっと多くの国際経済の専門家や経済評論家が両者を比較して論じないのか不思議に思っています。そこで、本稿では両者の類似点などについて解説してみます。
貿易自由化
WTOは貿易の自由化を推進し、加盟国間の貿易障壁を削減することを目指しています。一方、BRICSも加盟国間の経済関係を強化し、貿易の自由化を促進するための取り組みを行っています。つまり、『 #貿易自由化 』の観点からは、両者には極めて類似した性質があります。
国際的な地位向上
イランはBRICS加盟を通じて国際的な地位向上を図っています。これは、WTO加盟国が国際貿易における発言力を高めるのと同様です。WTOとイランのBRICS加盟は、いずれも多国間協力を通じて経済成長を促進し、国際的な地位を向上させることを目指しています。これにより、両者は貿易の自由化や経済発展の促進に共通の目的を持っています。
WTO加盟時に日本国政府は誰が主導権を握ったのか?
WTO協定の正式名称は『世界貿易機関を設立するマラケシュ協定』であり、1994年4月15日にモロッコのマラケシュで署名され、1995年1月1日に発効しました。このような協定成立には、通常、長年の国際的な協議が必要です。しかし、1989年から2000年までの日本の総理の任期と名前を覚えていますか?
ちなみに、以下に示すように、当時の総理大臣は1~2年程度の短期政権が多かったです。これだけ短い任期では、外遊する時間すらなく、海外での知名度も殆どなかったと思われます。日本の首相は誰一人、WTOで活躍しておらず、WTOの失策の責任すら取っていないのが現実です。
海部俊樹:1989年8月~1991年11月(第2次海部内閣)
宮澤喜一:1991年11月~1993年8月
細川護熙:1993年8月~1994年4月
羽田 孜:1994年4月~1994年6月
村山富市:1994年6月~1996年1月
橋本龍太郎:1996年1月~1998年7月
小渕恵三:1998年7月~2000年4月
森 喜朗:2000年4月~2001年4月
一方で、イランの大統領は、就任のタイミングによって多少のずれはありますが、三代目のアリー・ハーメネイー以降、四代目のハーシェミー・ラフサンジャーニー、五代目のモハンマド・ハータミー、六代目のマフムード・アフマディーネジャード、七代目のハサン・ロウハーニーまで全員が約八年間大統領を満期で務めています。今回、ヘリコプター墜落で亡くなったエブラヒム・ #ライシ大統領 の就任期間は三年弱でしたが、誰もがあと五年間は大統領の地位に留まると予測していました。
つまり、イランの政治家は日本の政治家のように、100万円程度の政治献金の扱いの不明瞭さや、差別発言が原因で更迭されることはなく、長期間にわたって安定した人間関係を築ける特徴があります。この長期政権の傾向は、他の #イスラム 諸国や #ロシア 、 #中国 、 #キューバ 、 #モザンビーク のような共産国や社会主義国にも見られます。 #インド のナレンドラ・ #モディ首相 も、就任したのは2014年5月26日なので、この記事を書いている本日の時点で首相の就任期間が11年になりました。
イランのBRICS加盟で主導権を握った政治家
WTO加盟時に日本の首相や内閣府が機能していなかったことは前述の通りですが、担当した省庁は主に外務省と経済産業省です。農産物の自由化などで農林水産省も関与しましたが、外務省と経済産業省以外の省庁は主に国内の利害調整を担当しており、海外に対しては大きな発言力を持っていませんでした。さらに、外務省と経済産業省の大臣の任期も極めて短く、責任を持って交渉にあたった官僚が誰だったのかさえ不明な状態です。
一方、イランのBRICS加盟に関しては、故ライシ大統領、故 #アブドラヒアン外相 、エフサーン・ハーンドージー財務経済大臣の三名が特に活躍し、BRICS諸国と強い信頼関係を築きました。この三名のうち、大統領と外相が同じヘリコプターの墜落で死亡したことは、今後のイランとBRICSの関係、更には #世界経済 に与える影響が極めて大きいことを意味します。
2024年のアメリカの大統領選挙で、 #ジョー・バイデン 大統領(81)が再選する可能性は極めて低いことを考慮すると、 #バイデン大統領 は既に #レームダック (いてもいなくても関係ない人や組織という意味)です。 #バイデン 大統領は就任直後からアルツハイマー病が懸念されていた米国史上最高齢の大統領ですが、2024年2月の時点で既に、政治能力以前に法的な #責任能力 が問えない #心神喪失者 として扱われているのが実態です。
現時点でアメリカのバイデン大統領とイランの故アブドラヒアン外相を比較すると、世界経済に与え得る影響はイランのアブドラヒアン外相の死去や、次期外相人事の方が大きいと私は判断します。しかし、日本では故アブドラヒアン外相についてほとんど報道されていないため、次の記事では、彼が如何に重要な人物であったかについて解説します。
つづく…
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