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イランのヘリコプター墜落が世界経済に与える影響(6)

 国際政治や経済評論家の大半は、 #ロシア #ウクライナ の紛争終結の予測や、 #SWIFT制裁 の効果を完全に見誤っていました。欧米のマスメディアや #金融 #証券 #アナリストなどは、正確に予測できていたにもかかわらず、自国や自社の利益を優先して恣意的に間違った情報を報道していた可能性も否定できません。ところが、海外に独自の情報網を持たずに、英語の報道だけをニュースソースにしている日本の #評論家 #ジャーナリスト の大半は、SWIFTの機能すら理解しておらず、全く的外れな解説をして、完全に予測を外しています。

 Google検索のカスタム期間設定などで絞り込んで、紛争勃発時や #SWIFT 規制発動時の彼らの解説を読むと、どれほど彼らが間違った解説をしているか検証できますので、読者の皆さんも自分で調べてみてください。

 当時、SWIFT制裁がロシア経済に即時かつ重大な影響を与えると予測されていましたが、その効果が予想よりも限定的、或いは、殆ど効果がありませんでした。私は当時からSWIFT制裁の効果などないと明言していましたが、その理由を以下に示します。

 日本にはまともな国際政治や経済評論家が存在していないため、あまり知られていないことかも知れませんが、日本国外の専門家にとっては常識であり、このようなことは、今後、 #イラン 経済が世界経済に与えるインパクトの大きさを理解する上で非常に重要ですので、読者の皆さまも知っておいて損はないと思います。

ロシアに対してSWIFT制裁が効かなかった理由

 この理由を把握すると、今後、イランに対して金融制裁の効果がなくなり、イラン経済が急激に成長することが理解できるでしょう。

代替決済システムの存在

 ロシアは #SPFS (System for Transfer of Financial Messages)などの #代替決済システム を構築しており、SWIFTに依存しない金融取引を行うことが可能でした。また、中国の #CIPS (China International Payment System)などと連携し、 #国際決済 を維持しました。

資源輸出による経済支え

 ロシアは石油や天然ガスなどの資源を欧州諸国に供給しており、この収入が制裁の影響を緩和しました。多くの国がエネルギー供給の確保を優先し、ロシアとの取引を完全には停止しませんでした。

外貨準備と金準備

 ロシアは多額の外貨準備と金(ゴールド)準備を保有しており、これが経済の安定化に寄与しました。これにより、制裁の即時的な影響を吸収し、経済崩壊を回避しました。

経済の耐久力と適応力

 ロシア経済は、過去の制裁経験から耐久力と適応力を高めていました。政府は迅速に政策を調整し、制裁の影響を最小限に抑えるための対策を講じました。

イランとの関係が良い決済網

 SWIFT以外の国際決済網にはいくつかの選択肢があります。特にイランとの関係が良い決済網について以下に説明します。

アジア決済同盟(ACU)
#アジア決済同盟 (ACU)は、地域内の貿易を促進し、決済の効率を高めるために設立された決済システムで、インド、パキスタン、 #イラン 、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、ブータン、モルディブ、ネパールが参加しています。ACUは、参加国間の貿易決済を円滑にし、外貨準備の効率的な利用を目的としています。イランはACUの重要なメンバーであり、これを通じてインドやパキスタンなどと貿易決済を行っています。

貿易取引支援機関INSTEX
#貿易取引支援機関 #INSTEX )は、2019年に設立された欧州主導の貿易決済機構で、イランと欧州連合(EU)との間の合法的な貿易を促進するために設立されました。参加国は主にEU諸国です。INSTEXの主な目的は、米国の制裁を回避しながら、イランとの貿易を維持することです。

中国国際決済システム(CIPS)
#中国国際決済システム #CIPS )は、人民元を利用した国際決済を支援するために中国が設立したシステムです。中国はイランとの経済関係が強く、CIPSはイランにとって重要な決済手段となっています。

ロシアの金融メッセージ転送システム(SPFS)
#ロシアの金融メッセージ転送システム
#SPFS )は、ロシアがSWIFTの代替として開発したシステムです。ロシアはイランとの経済協力を重視しており、SPFSもイランとの貿易に利用されています。

イランの国際決済手段

 特にイランとの関係が良い決済網としては、アジア決済同盟(ACU)、中国のCIPS、ロシアのSPFSが挙げられます。これらのシステムは、米国の制裁を回避しつつ、イランとの貿易を維持するために活用されています。また、INSTEXも欧州とイランとの貿易を支援するための重要な決済手段となっています。SWIFT以外にも、イランとの関係が良好な決済網は複数存在し、国際的な金融制裁を回避し、経済活動を継続するために以下のようなシステムを構築しています。

 ロシアよりもイランの方が豊富な国際決済手段やバーター取引手段を持っている理由は、ロシアが2022年のSWIFT制裁以降に短期間で代替決済手段を再構築したのに対し、イランは長年の経済制裁を回避するために、長期間かけて堅牢な決済手段を構築してきた点にあります。

SEPAM(Iranian SEPA Messaging System)

 SEPAMは、イランが国内および国際決済のために開発したシステムです。これは、SWIFTに似たメッセージングシステムであり、イラン国内の銀行間での決済をサポートするだけでなく、イランと取引関係にある国々の銀行とも接続することが可能です。これにより、国際制裁を回避しながら金融取引を行うことができます。

システムの二国間協定

 イランは、特定の国との間で二国間協定を結び、直接的な決済メカニズムを構築しています。これにより、米ドルやSWIFTを経由せずに貿易決済が行えるようになっています。例えば、トルコやロシア、中国などの国々との間で、現地通貨や他の代替通貨を使用した貿易決済を行っています。

イランに対する米国などの制裁

 イランに対する米国などの制裁は、経済・金融制裁以外にも以下のような多岐にわたる分野で実施されています。

経済制裁
a. 金融制裁
・イランの金融機関を国際金融システムから排除(SWIFTからの排除)
・イランの中央銀行との取引禁止(米国は日本の銀行などにも圧力をかけていますが、逆にシンガポールや香港、マレーシアなどは米国人や米国のグリーンカード所有者の銀行口座を締め出しています)
・イランの銀行口座の凍結(これは米国の失策であり、多くの国が米国の銀行やT-Bondを信用せず、米ドル離れが加速する一因となっています)

b. 貿易制裁
・石油・ガス・石油製品の輸出入禁止(バーター取引で対応しています)
・鉄鋼、アルミニウム、銅などの金属の輸出入禁止(これらの金属はイランが豊富に埋蔵しており、自国での生産に注力しています)
・自動車産業への制裁(イランでは自国の重機や農機産業が発達しており、EVの開発も進んでいます)
・金融取引に関連する商品やサービスの取引禁止(イランが欧米の金融システムに頼らず、イスラム金融を活用することで、イスラム金融の重要性が高まる可能性があります)

c. 投資制裁
・イランの石油・ガスセクターへの新規投資禁止(米国や西側諸国以外からの投資があります)
・イランのインフラおよび経済セクターへの投資禁止(BRICS諸国が競ってイランに対するインフラ投資を行っています)

軍事および兵器関連制裁
a. 武器禁輸
・武器および関連技術の輸出禁止(イランは武器輸出国であり、輸入の必要は限定的です)
・武器輸入の禁止(イラン製の武器を求める国や組織は多く存在します)
・核兵器開発に関連する物資や技術の輸出禁止

b. ミサイル技術制限
・イランの弾道ミサイルプログラムに関連する物資や技術の輸出禁止

個人および団体に対する制裁
a. 旅行制限

・特定の個人に対するビザ発給制限および入国禁止(イランから米国への入国は困難ですが、イランは多くの国に対して観光ビザを免除しています)

b. 資産凍結
・特定の個人および団体の資産凍結(イラン人が敵対国に資産を持つことは少なく、効果は限定的です)
・制裁対象者の関連会社やパートナー企業への制裁

金融取引および銀行関連制裁
a. ドル取引制限

・イランの金融機関が米ドルで取引することの禁止(他の決済手段が増え、米ドルの基軸通貨としての地位が脅かされています)
・米国の金融機関との取引禁止(米国の金融制度の自滅行為です)

b. セカンダリー制裁
・イランと取引する第三国の企業および金融機関への制裁
・イランと取引する企業が米国市場にアクセスすることの禁止

その他の制裁
a. テクノロジーおよび通信制裁
・ハイテク製品やソフトウェアの輸出禁止
・インターネット通信およびITサービスの制限

b. 人権制裁
・人権侵害に関与した個人や団体への制裁(2024年からは、寧ろ、 #イスラエル および #アメリカ #人権侵害 #戦争犯罪 が問題視されています)

・人権に関連する製品やサービスの提供禁止

結論
 イランに対する制裁は、経済、軍事、個人および団体、金融取引、テクノロジー、人権など広範な分野にわたっています。これらの制裁措置は、イランの経済活動や国際取引を制限し、特定の政策変更や行動の変化を促すことを目的としていますが、全てが裏目に出ており、イラン、サウジアラビア、UAE、エジプトなどがイランに加盟後は特に、アメリカがイランを制裁しようとすればするほど、イランを利する構図ができつつあります。

つづく…

#武智倫太郎

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