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お迎え、間に合うかな・・・2017・12③

育休後アドバイザーとして
育児と仕事の両立に役立つ情報、
日々のことを発信しているワーママaiです。


仕事と育児の両立に苦戦した日々の記録を
ストーリー形式で振り返っていきます。


これまでの話・・・

1.お迎え、間に合うかな… 2017.01
⒉ お迎え、間に合うかな… 2017.02
3.お迎え、間に合うかな… 2017.03
4.お迎え、間に合うかな… 2017.04①
5.お迎え、間に合うかな… 2017.04
6.お迎え、間に合うかな… 2017.05
7お迎え、間に合うかな… 2017.06
8.お迎え、間に合うかな… 2017.07
9.お迎え、間に合うかな… 2017.08
10.お迎え、間に合うかな… 2017.09
11.お迎え、間に合うかな… 2017.10
12.お迎え、間に合うかな… 2017.11①
13.お迎え、間に合うかな… 2017.11②
14.お迎え、間に合うかな… 2017.12①
15.お迎え、間に合うかな… 2017.12②




2017年12月③



「おつかれさまです。」
疲れ切った頭でぼんやりとしながらエレベーターに乗り込んだ私は声をかけられ顔を上げた。
エレベーターに乗っていたのは、経理部の男性社員、清水さんだ。
私は、久しぶりに会った清水さんに驚いて疲れが吹き飛ぶほどだった。
私の所属部署の担当から外れてしまったこともあり、清水さんとは最近は話す機会もなかった。
「相田さんって時短ですよね?こんな時間まで残業しているんですか?」
清水さんは驚いた顔をしていた。
「お疲れ様です。時短なんですが、忙しくて残業していて・・・。」
私は、力なく笑って答えた。
清水さんはすぐにこう言った。
「それで、いいんですか?時短なのにこんな時間まで残業しているなんて!!」
普段の朗らかなイメージからは想像できないほどの力強い言葉に私は驚いた。「・・・・そう言ってくれてありがとうございます。」
嬉しかった。そう言ってくれて本当に嬉しかった。
それで、いいんですか?
清水さんの言葉をもう一度思い出す。
よくない。時短でこんな時間まで残業しているなんて、よくない!!!
私は心の中で、こう返事をした。
私は、清水さんの言葉で前へ進む力を取り戻した。
「おつかれさまでした。」
エレベーターが開くと私は、清水さんに深いお辞儀をして挨拶をした。
それから、走り出していた。
もちろん、延長保育のお迎えの時間に間に合うためだ。
それから、前に進める力をもらえた嬉しさもあったからだ。




人事部へ連絡する前に小野さんに相談しなければ・・・。
私は、小野さんにLINEを送る。
「やっぱり、人事部に管理部門に時短勤務の件、連絡してもらうようにお願いしたいと思います。小野さんは、どうでしょうか?」
小野さんも同じ意見ならば、人事部に連絡しよう、そう決心をした。
私は、メッセージの送信ボタンを押すと電車を降りて保育園へと向かった。
保育園に着くと、娘を含め教室には数人しかいないことも多い。
娘は、好きなおもちゃでじっくり遊んだり夕方の捕食(おやつ)を食べらることが嬉しいようで、延長保育を嫌がることはなかったことが唯一の救いだった。
けれども、家に帰ると時間がなくてゆっくりできないことが娘には不満なようだ。
一方私は、仕事で疲れ切っている上にワンオペで家事、育児をこなす。
家に帰ってからもゆっくり休むことはできないことはかなり応えていた。
ふと、LINEが入っているのに気がついた。小野さんからの返信だった。
もう20時半だ。
「お疲れ様!今、仕事終わったところ。そうだね、私も人事部から言ってもらった方がいいと思う。残業続きで全然変わらないしね・・・。」
小野さんは20時過ぎまで残業をしていたのだ。
小野さんが私以上に大変だと思うと、やはり早急に解決したいと思った。
そう考えながら私は布団に入り、娘に絵本を読んだ。
この時間は1日の中でようやく娘とゆっくりと過ごせる時間だ。
平日、娘とゆっくり過ごせるのは、わずかな時間しかなかった。
例えば、管理チームの佐藤さんのように16時に上がることができれば、17時前にはお迎えにいける。
そうすれば娘との時間もたくさん持つことができる。
きちんと時短勤務を活用できていれば、ずっと前からそれができていたのに・・・。
過ぎてしまった私と娘の時間は戻らない。
考えても仕方ないけれど、もし・・・と、考えられずにはいられなかった。
人事部から管理部門経由で部署に時短勤務が活用できるように連絡があれば、私も佐藤さんのように16時過ぎには上がれるようになれるかもしれない。
今度こそ、と期待をしつつ、私は疲労ですぐに眠りについた。





先日の人事部、鈴木さんとのやりとりを思い出していた。
・・・では、上司と話した内容の連絡をお願いします。
もう一度、上司に話しをしてみます、と言った私に鈴木さんはこう言って電話を終えたのだ。
もう課長に相談する気持ちがないのに、そんなことを鈴木さんに言ってしまったことを後悔してしまった。
鈴木さんには、何て説明しようか。
正直に、課長に相談できませんでした、と言うしかない。
どう説明しよう・・・。私はまた、ぐるぐる、と考え始めていた。
ちょうど11時過ぎだった。
そんなことを考えながら、会社のPCのメールをチェックをしていた。
さっき来たばかりのメールの送信者を見て、ドキっとする。
鈴木さんからだ!
鈴木さんからのメールをすぐに開いて確認をする。
「その後、上司に相談しましたか?結果を教えていてだきますようお願いします。」
と書かれていた。
私は、さて、どうしようか・・・と悩んだ。
私は冷や汗を書きながら、メールの文章を書いては消す・・・を繰り返していた。
正直に、課長に相談していないと書いてみるが、うまく文章にできないのだ。
そんなことをしているうちに、鈴木さんからメールがまた来たのだ。
私は、慌ててメールを開く。
そして、驚いたのだ。
「もし、よかったら今日ランチをしながらお話しを聞かせてもらえませんか?」
こう書かれている。
私は、反射的にメールをこう返した。
「お忙しいところありがとうございます。ぜひ、お願いいたします。」




店内を見渡すと、鈴木さんが店の奥の席に見えた。
その後のメールのやりとりで近くのイタリアンの店でランチをしながら話しを聞いてくれることになったのだ。
私と小野さんは鈴木さんの元へと急いだ。
事情を話して小野さんも同席することになったのだ。
「お待たせしてすみません。今日はお忙しいところありがとうございます。」
私は、そう言いながら鈴木さんの向かいに腰掛けた。
「いえ、こちらこそ、突然で申し訳なかったです。仕事は大丈夫でしたか?」
鈴木さんはやさしく聞いてくれた。
「はい。なんとか・・・。」
自信を持って返事できる状態ではないのが正直なところだ。
ランチメニューの注文を終えると、早速、鈴木さんが聞き取りを始めた。
「部署が大変だということは聞いています。相田さんたちも時短勤務で働けていないということですよね。」
「はい。残業しないと終わらない状態です。まわりも残業が多いので頼めない状況です。」
私は、小野さんと顔を見合わせ、先に答えた。
「小野さんも同じでしょうか?」
「はい。20時まで残業することも多くて・・・。」
「お子さんのお迎えはどうされているのですか?」
小野さんの返答に鈴木さんは驚きながら聞いた。
「母に頼んでいます。」
「協力してもらえて助かりますね。本来なら時短勤務制度は、申請者が活用できなければ成り立ちません。ですが、部署の状況などよって相田さんたちのようにできる限りの協力をしていただくことは会社として助るので時短勤務者にはできる範囲でお願いしたいことでもあります。」
鈴木さんは、続けた。
「以前、他部署で残業が続いてしまっていると時短勤務者から相談がありました。その方から相談があり残業を減らすという内容で管理部門に連絡をした事例があります。人事部から管理部門に連絡をするという形で時短勤務制度を活用できるようにお手伝いすることはできます。どうしますか?」
鈴木さんの質問に、私は、決心した答えを言う。
「お願いしたいです。」
私がこれまで解決しようとしてきた結果の答えだ。
人事部から管理部門に時短勤務を活用できるよう連絡してもらう。
これが、私の解決するための最後の方法となったのだ。
「小野さんも、こういう形で大丈夫でしょうか。」
鈴木さんは、小野さんにも確認をする。
「はい、お願いします。」
「わかりました。では、人事部から管理部門にお伝えしますね。」
鈴木さんは最後にこいはっきりとこう言ってくれたことで、私は安心した気持ちになった。
ちょうど、タイミングよく料理が運ばれてきた。
時間もあまりない昼休みだ。
早速、食べようと思ったその時、スマホの通知に気がついた。
2件の着信通知だ。
保育園、その後に夫からだった。
私は、二人に断って急いで店の外へと出た。
夫が保育園から何か聞いているかもしれないためはじめに夫に電話をした。




「保育園から連絡あった?」
電話にでた夫に私は急いで聞く。
「熱が出たから、すぐに迎えに来て欲しいっていう連絡だったよ。俺が迎えに行くよ。もう向かってるから。」
ありがたかった。
娘が発熱したことは、心配だ。
けれども正直にいうと、今の状況で仕事を早退することはキツイかった。
保育園から発熱などの呼び出しがある場合、ほとんどは仕事を早退してお迎えにいくのは私だ。
夫は会議や出張もあるため、私の方が早退できる状況というのもある。
「悪いけれどよろしくね。様子がわかったら連絡してね。」
夫に娘のお迎えを頼み、私は店に戻る。
「保育園から熱で呼び出しの件でした。でも、夫が迎えに行ってくれるので大丈夫です。」
私は冷めてしまったパスタにフォークを入れた。
「優しい旦那さんですね。」
鈴木さんがやさしい言葉をかけてくれる。
私は、ほとんどないこの「レアケース」に、苦笑いするしかない。
その後、雑談をしながら手早くランチを済ませた。
そして、鈴木さんにはお礼を言って別れ、オフィスへと戻る。




オフィスに戻れば、やらなくてはいけない仕事はたくさん残っている。
明日も明後日も・・・しばらく忙しい日は続くだろう。
現実的に考えて、管理部門から部署に時短勤務の働き方について連絡があったとしても、すぐに業務が減るとは思えない。
でも、鈴木さんと話したことで、長かった戦いの終わりが見えたような気がした。
仕事が減ったわけではないし忙しいままだ。
けれど、気持ちは全然違う。
久しぶりに、清々しい気持ちだ。
私は、育児と仕事の両立のために、できることをやったんだ。






夕方に、夫に娘の様子をLINEで聞いた。
夫によると、病院に行って薬をもらい娘の熱はもう下がったという。
私は、その返信を見てほっとした。
娘の体調は悪くないようだし、今日は夫が娘をみてくる。
今日は残業して溜まっている仕事を片付けることができる。
12月はあと少しだ。
とにかく、今は自分の業務をきちんとこなすしかない。
これまでの心配と不安に支配されている自分ではなかった。
きっと、大丈夫だ。
もしかしたら、まだお迎えの時間を心配することはあるかもしれない。
でも、これまでとは少し違うはずだ。
この言葉をつぶやく時も。


お迎え、間に合うかな・・・・。


つづく・・・。

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