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【連載】お迎え間に合うかな・・・2017.11②

育休後アドバイザーとして
育児と仕事の両立に役立つ情報、
日々のことを発信しているワーママaiです。


仕事と育児の両立に苦戦した日々の記録を
ストーリー形式で振り返っていきます。


これまでの話・・・

1.お迎え、間に合うかな… 2017.01
⒉ お迎え、間に合うかな… 2017.02
3.お迎え、間に合うかな… 2017.03
4.お迎え、間に合うかな… 2017.04①
5.お迎え、間に合うかな… 2017.04
6.お迎え、間に合うかな… 2017.05
7お迎え、間に合うかな… 2017.06
8.お迎え、間に合うかな… 2017.07
9.お迎え、間に合うかな… 2017.08
10.お迎え、間に合うかな… 2017.09
11.お迎え、間に合うかな… 2017.10
12.お迎え、間に合うかな… 2017.11①


2017年11月②


「こんな場合はコンプライアンス部に相談を!」
私は、社内掲示板のポスターをじっと見ていた。
このコンプライアンス部のポスターの存在には気がついていたけれど、あまりよく読んだことはなかった。
・・・上司に相談しても改善されない場合、の文字をもう一度読んだ。
あまり長く立ち止まって見るわけにもいかない。
私は、周りを気にしながらその場を後にした。
デスクにも同じ内容のコンプライアンス部が発行したカードが入っている。
書いてある内容は同じで、相談先の電話番号も載っている。
上司に相談しても改善されない場合・・・、この文字を何度も読み返していた。



私はカードを手にコンプライアンス部に電話をかけた。
「営業一課の相田と申します。」
小声で名乗った。
実を言うと、デスクでこの電話をかけているのだ。
周りには人がいる。
都合のいい時間はこの時間しかなかった。
私は電話に出た担当者に相談内容を説明した。
「話しを聞いた限りでは、課内で解決できる内容だと思います。」
コンプライアンス部の回答はこうだった。
私は、ひるみそうになった体勢を立て直しこう言った。
「何度も相談はしているんです。つい先日も相談したばかりで・・・。」
私はカードに記載されている(上司に相談しても改善しない場合・・・)の文言を見返した。
「そうですか・・・。その内容の場合は、こちらでは扱う内容ではないので、事業部内で相談されてはどうでしょうか?」
再度言われてしまったので、わかりました、もう一度上司に相談してみます、と言って電話を切った。
だけど、数日前に相談したばかりだ。また課長に相談する気にはなれない。
会社によって違うかもしれないが、私の勤める会社ではパワハラ、セクハラなどのハラスメントや不正などの相談はコンプライアンス部に相談することになっている。
私の勤める会社のコンプライアンス部では私の相談内容はハラスメントとしての内容ではないようだ。





私は、帰宅の電車の中でLINEを送る。
“お疲れ様です。コンプライアンス部に相談をしたのですが、「部内で解決できる内容なので、もう一回上司に相談しては?」と言われてしまいました。課長に相談したばかりなので、また課長に相談するわけにもいかないと思っています。他に相談できるところがないか探してみます!”
私はLINEを送信し、電車を降りると保育園へと足早に向かった。
LINEの送信相手は、同じ部署の小野さんだ。
小野さんは5月から育休から復職した私の2つ上の先輩で、お互いに結婚する前はプライベートでも食事や遊びに行っていた。
小野さんは第二子、第三子と年子で出産し産休、育休をとり3年ほどのブランクからこの春、復職した。
実は、小野さんは私よりも遅く残業をしている。保育園の閉園時間をとうにすぎる時間のことも多い。
保育園のお迎えは復職を機に同居をした両親に頼んでいるという。
小野さんの夫は帰りが遅く、3人の育児をしながらの仕事が大変な為、両親との同居を決めたのだ。
復職後、小野さんは遅くまで残業をしている。
小野さんも困っているかもしれない。困っているなら一緒に解決したいと考えていた。
私も小野さんも昼休みも仕事をしているため、ゆっくりランチをしながら話す時間はなかった。
そこで、数日前に小野さんにLINEをした。
毎日残業が続き、時短勤務の活用ができていないことについて相談だ。
“毎日20時まで残業してるし、両親も病気持っているから毎日お迎えを頼むのはやっぱり申し訳なくて・・・。保育園のお迎え時間に間に合うように上がりたいと思っているよ。”
小野さんは時短勤務制度を活用できていなくて困っていないか?と勇気を出して聞いてみたたところ、このような返信があった。
こうして、私は小野さんと共に、時短勤務制度活用を求めて奮闘することとなる。
小野さんが一緒に動いてくれることは非常に心強い。
勇気や自信が持てず不安だけど、二人ならきっと大丈夫だ。



勇気を出しコンプライアンス部への相談したけれど断られてしまい、振り出しに戻ったような気持ちになってしまっていた。
ひとまず、次回に向けて課長やその他の部署に相談するにあたり、解決につながりそうな情報を集めようと考えた。
私が所属している事業所のフロアには130人ほどいる。
最近では、産休育休を取得した時短勤務の女性も増えて、各部署に1人〜2人いる。
他の部署の時短勤務者の残業は多いのだろうか?
実は、他部署に親しい時短勤務者がいないので他部署の状況は分からずにいた。
私の勤める会社では最大2時間の時短時短制度を利用できる。
多くの人は朝に1時間、夕方に1時間の時短勤務制度を利用している人が多い。
つまり、規定の終業時間の1〜2時間前に退勤すれば時短勤務制度を利用した勤務となる。
私の席は、勤務時間管理のカードリーダー設置場所が近い。
退勤する人が通るとピッという電子音が聞こえる。
そこで、他の部署の時短勤務者の退勤時刻を調査するために、夕方になると時短勤務者のカードリーダーの電子音に耳を傾けた。
調査の結果、(と言っても、夕方にカードリーダーの音に耳を傾け、目視しただけだったが)ほぼ全ての時短勤務者が時短勤務申請時刻通りに退社していた。
どうやら、私の所属する部署以外の時短勤務社は残業をしていないようだ。




他の部署の時短勤務社は時短勤務時間内で業務をこなしているのだろう?
残業になりそうな時の対応は?業務量の調整は?どうやって申請通りの時短勤務時間で上がっているのだろうか?
部署が違えば、業務内容は違うが他の営業部署なら大体仕事内容は同じだ。
他の営業部署の時短勤務者の働き方や工夫を聞いてみることは参考になるに違いない。
そこで、営業二課の河本さんに思い切って社内メールで聞いてみることにした。
営業二課の河本さんは二児の母で、2年前に育休から復職し時短勤務制度を利用している。
私より3歳年上でスラッとしたモデル体型の美人だ。
しっかりと意見は言うけれど気遣いのある言動、後輩の面倒見もいい、いわゆる頼れるリーダータイプだ。
しかも、河本さんは女性では数少ない主任、さらに係長への昇進も決まっている。




河本さんも忙しい。それは、彼女のデスクの山積みの書類が物語っている。
仕事をテキパキ片付け、残業にならない退社時間には退社している。
忙しくても、仕事をこなし残業せずに上がっているようだ。
忙しいのに迷惑かもしれない、と思いながらもメールをすると河本さんからすぐに返信が来た。
その返信内容い驚いた。
私の質問に、所属部署の現状とアドバイスが明確かつ丁寧に答えてくれていたのだ。
その内容とは、以下の内容だった。


 お疲れ様!相田さんところ、大変みたいだね・・・。
 私は営業チームだから営業に近い仕事だけど、仕事量はフルタイムと変わらない量こなしているよ。
 結構、きつくて脇汗かきながらやってるよ〜。
 休む時は他の営業の人に頼んだり、終わらない時はまわりに頼むか自分の母親にお迎え頼んだりしてなんとかやっているよ。
 私も周りが忙しい時は、帰りにくくて残業しがちだったけど、今は業務改善が進んだからそんなにキツキツの業務量ではないのも大きいかな。
 事務チームで時短の人いるけど、事務チームも1人分くらいは余裕のある仕事量だから休んでも余裕があるみたい。
ジョブローテーションや業務改善でサポートや効率がよくなったのもあると思うよ。
こんなざっくりな感じでごめんね。今度ランチでもしようね!


他の部署の様子を詳しく聞くことが少なかったため他部署の時短勤務者の状況は参考になる。
それだけでなく、気遣ってくれたり励ましてくれる内容が、ただただ嬉しかった。
業務改善という言葉がでていたが、河本さんの部署は専用のシステムが導入されるなどの業務改善が進んでいる。それに人数も以前より増えているのだ。
河本さんの言う通り、以前は人も少なくかなり多忙な部署だった。
もう辞めてしまったが、私の同期が所属していて忙しいことはよく本人から聞いていた。
環境だけでなく河本さん自身も忙しいながらも努力している様子がうかがえた。




河本さんからメール内容の概要は小野さんにも共有した。
小野さんの同期や知り合いの部署にも、時短勤務者の働き方を聞いてみてもらうようお願いをしていた。
小野さんから聞いたところによると、他の時短勤務者で残業が多いという人はいないと言う。
やはり他部署は時短勤務者の残業が多いということはなく、私の所属している部署だけが残業をしているということがわかった。
ということは、他部署では、おそらく河本さんの部署のように業務的に時短勤務者がいてもバッファがある体制なのだと考えられる。
私の所属部署のような、全員がかなりの残業しているという状況ではないようだった。
そして、下期から始まったこの異常な状況はやはり仕方ない・・・。
時短勤務制度のことを言うのはやはり迷惑なのでは?とまた考え始めていた。




月末までに処理しなければいけない伝票が下旬に多いため、月の最終週は一段と忙しくなる。
私の席の近くのコピー機が故障したため、少し離れたコピー機へと向かった。
もう、終業時間は過ぎている。
私は慌ててコピー機で出力した書類を持って席へ向かう。

「お疲れ様です。いつも遅いですよね…。」
声をかけられて私は振り向いた。
営業二課、営業の鎌谷さんだ。若いけれどしっかりしていて労働組合役員も勤めている。
「いつも遅いので大丈夫かな、と思って…。もし、何かあれば労働組合に相談してください。同じ部署の役員でもいいですし・・・。直接組合に相談しても大丈夫なんで。」
私が、どう返答していいか迷っていると、鎌谷さんがこう言ったのだ。


その時は、その優しい心遣いに感謝しながらも、ちょっと恥ずかしい気持ちでもあった。
やはり時短勤務者が残業しているのは目立つようだ。
私は、ありがとうございます。とお辞儀をしながらその場を後にした。




私は、なんとも言えない気持ちになっていた。
いや、素直に言うと、気にかけてもらえて嬉しかった。
確かに大変な状況だ。
でも、こんな風になってなければ河本さんや鎌谷さんなど普段は関われない人と関わることもできた。
それは、大変な状況の中でも温かい気持ちになる出来事だった。
そして、鎌谷さんの言葉で解決への道しるべを得たのだ。
この先、多くの人の力を借りながら、元気をもらいながら進んで行くことになる。
私は、久しぶりに温かい気持ちで書類を片付けた。
でも、いつまでも浸っていられない。
さぁ帰らなくては…。


お迎え、間に合うかな…


つづく

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