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Massage Magazine

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『身体の詩的な感覚』をテーマに、さまざまな分野の枠をふにゃふにゃと越えながら〝身体〟について考える。 身体で感じることを言葉で伝えることはできないという前提の上で、身体を開放し… もっと読む
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記事一覧

【COLUMN】たまご ひと ねこ

【COLUMN】たまご ひと ねこ

隣町に、抗生剤を使用せず、平飼いでにわとりたちを飼育している養鶏場がある。

にわとりたちがストレスフリーで産んだ卵、それに移動距離も少なく手に入るのはうれしい。

少し前からその卵を食べさせてもらっていて、黄身の色がうすくきれいな黄色で、味もさっぱりしていて動物性のものをいただいたときに感じる特有の臭みがほとんどない。

はじめて手に持ったとき、それぞれの大きさが微妙にちがって個体差があり、それ

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【PERFORMANCE】テリー・ライリー/Everything and Beyond

2023年3月4日、その日は自身の出演する朗読会があり、私はこの公演に行けないと思っていた。朗読会が終わり、ふらふらと会場の周りを散歩していると、なんだか人気があってイベントをやっているらしい隣の建物を見つけた。

扉に貼られたイベントのポスターを見るとテリー・ライリーの文字。行きたかったイベントだ!(事前に場所は知らなかった)と、すぐ横でやっていたことと、当日券が出ることを知り、運良く観ることが

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【COLUMN】mergeする液体

【COLUMN】mergeする液体

先日、河野哲也さんのインタビュー(「談 vol.126 液体のリズム、新しい始まりの絶えざる反復としての」)を読んでいたら、身体は「液体」だという表現をされていて、思い出すことがあった。

「液体」というと、私はお茶が好きだ。味や効能はもちろん、ポットからカップへ注ぐときの流れ、様々な色合い、その液体としての存在に神秘的なものを感じていることに気がついた。

「液体」の中に、植物から滲み出たものが

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【EXHIBITION】 沖潤子「さらけでるもの」

2022年10月某日
@神奈川県立近代美術館 鎌倉

人の呼吸の跡が布の上に残っているようだった。

規則的な糸使いの中に現れる乱調は、自然の摂理が働いて生まれた美のようにも、世界の縮図のようにも見えた。あらゆるものは、非常に不安定ながら完璧な美をもっていると感じる。

少しだけ刺繍をしていたとき、コースター1枚を作るのもやっとのことだった私には、想像にも及ばない世界だった。

しかし、実際に作っ

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【EXHIBITION】内藤 礼「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」

2022年11月17日
@神奈川県立近代美術館 葉山館
(展示の詳細を含む展覧会レポートです)

晴れているが雲が多い11月、14時頃。
バスから見えた海と山並みが、柔らかく青や灰色の間をぼんやりと埋めるように見えていた。

少しだけ窓のある、小さな展示室、一室での展示。室内は14時でも薄暗く、はじめに目に入るのは天井から大きく垂れ下がっている一本の紐のようなもの。

足元に注意を払いながら足を踏

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【PERFORMANCE】敷地理+イ・ソヒョン「unisex#01」

2022年12月5日@野毛のにぎわい座

部屋の中央に、天井から何かが吊られている。丸く黒い石のように見える。その吊るされたものを中心として、壁沿いに円になって椅子が置かれている。観客は舞台を囲み、席につく。

部屋が暗転して、しばらくの無音。暗所への不安から反射的に心拍数が上がる。人の足音が聴こえてきて、意識がそちらにスライドして落ち着いてくる。

舞台中央に照明が当たり少し明るくなり、誰かが歩

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