yumi kawana

隠棲中の院生。たまに外出もします。

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マガジン

  • 人形についての覚え書き

    「ひとがた」についての覚え書き。

  • 美術展回想録

記事一覧

20230823 日記 60年代美術と潔癖

赤瀬川原平『東京ミキサー計画』を論文資料として見直さなければならないのだけれど、ゴミと虫がでてくるので、あまり気が向かずにいる。  親しい人だけが知っていれば…

yumi kawana
9か月前

20230819 日記

砂のうえに ぺたんと座ってしまおう そうすれば あきらめもつくのではないか 美しいものを瓶に詰め 綺麗ごとにしてとっておく わたしの顔の なんとあさましいことか こ…

yumi kawana
9か月前
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人形についての覚え書き

中川多理の創作人形について フェリーニ『カサノバ』の人形 祇園祭のお稚児さんと人形 ベルメール、幼年期の身体 人形にまつわる展覧会レビュー

yumi kawana
1年前
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四谷シモン「人形とパステル画」展 小レビュー 再掲

 Galerie LIBRAIRIE6 の展覧会へ。ひと目みて四谷シモンのものと分かる人形が、会場の壁一枚につき一体設置され、それを連ねる数珠のように粒揃のパステル画が掛けられて…

yumi kawana
1年前
2

無気味さ以前への回帰ーー伊東宣明個展「時は戻らない Time Cannot Go Back」についての覚書き

 自由に着脱することのままならぬ「身体」を、私たちは被っている。  たとえば、生命の有限な時を取り決めている心臓を自らの意思により動かしたり止めたりすることは、…

yumi kawana
1年前
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批評のようなもの:山尾悠子『夢の棲む街』より中川多理《薔薇色の脚》によせて

はじめに   山尾悠子による物語『夢の棲む街』から、人形として「こちら側の世界」へ幻出したのは、街の踊り子〈薔薇色の脚〉。  物語の中の踊り子たちをモデルに、中川…

yumi kawana
2年前
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2022/01/05 日記: 客体としての身体部位

自分の身体を「物だと認識して嬉しくなる」感覚は、私にもなんとなくわかる。二階堂奥歯という人と同じ理由かどうかはわからないけれど。 ああそうか。そうだったのか。 …

yumi kawana
2年前
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2022/01/04 日記: 「結晶」

一昨年くらいに読んで知った、市川春子による『宝石の国』という漫画を思い出している。 人間が絶滅した後のはるか遠い未来。人間はその存在を「骨」と「肉」と「魂」とに…

yumi kawana
2年前
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「ぬいぐるみ」について

あの柔らかで温かいさわり心地を愛おしいと思う故に、もう二度と買わないと決めている。 いつか私が忘れてしまったり、生き別れになってしまうことが申し訳ないから。私の…

yumi kawana
3年前
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美術展回想録② 合田ノブヨ 個展 ‘Sleep Talking’(2019.11.02 ~ 2019.11.22)

===================================== どこへでも気楽に足を運ぶことが難しい今。こんな時は、おとなしく自室にこもりながら、懐…

yumi kawana
3年前
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美術展回想録① M!DOR! collage exhibition ‘On the Mystical Rule’(2019.11/16-12/1)

===================================== どこへでも気楽に足を運ぶことが難しい今。こんな時は、おとなしく自室にこもりながら、懐…

yumi kawana
3年前
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20230823 日記 60年代美術と潔癖

20230823 日記 60年代美術と潔癖

赤瀬川原平『東京ミキサー計画』を論文資料として見直さなければならないのだけれど、ゴミと虫がでてくるので、あまり気が向かずにいる。

 親しい人だけが知っていればよいが、大学院に入学した頃から、私は潔癖という形で現れた強迫症状にさいなまれており、日々の生活がやや圧迫されている。

 潔癖症にもかかわらず、60年代の前衛美術を研究しているなんて、頭がおかしいと自分でも思う。

 はたして芸術というも

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20230819 日記

20230819 日記

砂のうえに ぺたんと座ってしまおう
そうすれば あきらめもつくのではないか

美しいものを瓶に詰め 綺麗ごとにしてとっておく
わたしの顔の なんとあさましいことか

この沙に膓(はらわた)を埋めれば わたしもモノ
焦りも泪も 砂漠の薔薇

人形についての覚え書き

人形についての覚え書き

中川多理の創作人形について

フェリーニ『カサノバ』の人形

祇園祭のお稚児さんと人形

ベルメール、幼年期の身体

人形にまつわる展覧会レビュー

四谷シモン「人形とパステル画」展 小レビュー 再掲

四谷シモン「人形とパステル画」展 小レビュー 再掲

 Galerie LIBRAIRIE6 の展覧会へ。ひと目みて四谷シモンのものと分かる人形が、会場の壁一枚につき一体設置され、それを連ねる数珠のように粒揃のパステル画が掛けられている。この二年を中心に描かれたという柔らかな筆触の人物画は、一見、この人形たちと顔立が異なることから作風の変化を感じさせるかもしれない。

 だが、その瞳をみよ。星のような瞳をもった人形たちあるいはパステル画の少年少女らと

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無気味さ以前への回帰ーー伊東宣明個展「時は戻らない Time Cannot Go Back」についての覚書き

無気味さ以前への回帰ーー伊東宣明個展「時は戻らない Time Cannot Go Back」についての覚書き

 自由に着脱することのままならぬ「身体」を、私たちは被っている。
 たとえば、生命の有限な時を取り決めている心臓を自らの意思により動かしたり止めたりすることは、科学万能の時代とはいえ不可能に近い。
 あるいは、代謝のはたらきによる剥落にまかせず、全身の皮膚を一気に剥ぎとりなお何食わぬ顔をして生き続けるということもまた、古来から夢みられてきた幻想に過ぎない。一方向的かつ一度きりとされている時空間の軸

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批評のようなもの:山尾悠子『夢の棲む街』より中川多理《薔薇色の脚》によせて

批評のようなもの:山尾悠子『夢の棲む街』より中川多理《薔薇色の脚》によせて

はじめに 
 山尾悠子による物語『夢の棲む街』から、人形として「こちら側の世界」へ幻出したのは、街の踊り子〈薔薇色の脚〉。
 物語の中の踊り子たちをモデルに、中川多理が手がけた球体関節人形たちは、すでに十数体以上に及ぶだろうか。人形《薔薇色の脚》たちが最初で最後に集うはステュディオ・パラボリカの展覧会。時世の影響を受け、――今はなき京都山科は春秋山荘のギャラリーへ、幾度か人形展に訪れた日はすでに遠

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2022/01/05 日記: 客体としての身体部位

2022/01/05 日記: 客体としての身体部位

自分の身体を「物だと認識して嬉しくなる」感覚は、私にもなんとなくわかる。二階堂奥歯という人と同じ理由かどうかはわからないけれど。

ああそうか。そうだったのか。
人間も、こういう部品で出来た物だったんだ。
柔らかくて湿っていて腐りやすい部品ばかりだけれど、それでもやっぱり様々な部品を組み合わせて作られた自動人形だったんだ。
部品にはいろいろな組み合わせ方があるし、組み合わせた物には生命があったりな

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2022/01/04 日記: 「結晶」

2022/01/04 日記: 「結晶」

一昨年くらいに読んで知った、市川春子による『宝石の国』という漫画を思い出している。

人間が絶滅した後のはるか遠い未来。人間はその存在を「骨」と「肉」と「魂」とに分割され、そのうち「骨」の種族として鉱物たちが新たに生命化した世界の話だ。彼らは食事を摂ることもなく、すり潰され粉々にならない限りその生命を失うことはない。そのため彼らは明確な寿命というものを持たない。鉱物たちの硬度は様々で、強くて脆い存

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「ぬいぐるみ」について

あの柔らかで温かいさわり心地を愛おしいと思う故に、もう二度と買わないと決めている。
いつか私が忘れてしまったり、生き別れになってしまうことが申し訳ないから。私のせいで、彼らにつらいさびしい思いをもう二度とさせたくないから。

だから、たとえ誰かにぬいぐるみを貰ってしまったとしても、その人に訳を話してお返ししている。

毎日毎日、見ず知らずの他人の意思によって大量生産され、偶然手に取られては忘れ去ら

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美術展回想録② 合田ノブヨ 個展 ‘Sleep Talking’(2019.11.02 ~ 2019.11.22)

美術展回想録② 合田ノブヨ 個展 ‘Sleep Talking’(2019.11.02 ~ 2019.11.22)

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どこへでも気楽に足を運ぶことが難しい今。こんな時は、おとなしく自室にこもりながら、懐かしく美しい過去を記憶という宝箱から掘り起こして眺めるに限る。そんなわけで、ひとまず2019年に足を運んだ展覧会のレビューを、noteの方にゆるりとまとめておこうと思う。

美術展レビュー第二弾は、2019年11月16日に足を運んだコラー

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美術展回想録①  M!DOR! collage exhibition ‘On the Mystical Rule’(2019.11/16-12/1)

美術展回想録① M!DOR! collage exhibition ‘On the Mystical Rule’(2019.11/16-12/1)

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どこへでも気楽に足を運ぶことが難しい今。こんな時は、おとなしく自室にこもりながら、懐かしく美しい過去を記憶という宝箱から掘り起こして眺めるに限る。

そんなわけで、ひとまず2019年に足を運んだ展覧会のレビューを、noteの方にゆるりとまとめておこうと思う。

第一弾は、2019年11月に足を運んだコラージュ作家M!DO

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