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書籍・図録・映像

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書籍・図録・映像などのまとめ、要約、感想などを綴っています。
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記事一覧

【書籍】マン・レイ 軽さの方程式

【書籍】マン・レイ 軽さの方程式

シュルレアリストやレイヨグラフなどで知られる巨匠の一人、マン・レイ。彼の芸術家としての「軽さ」とは何であろうか。

マン・レイといえば、昨年クリスティーズ・ニューヨークに出品された《Le Violon d'Ingres》(1924)が写真史上最高額おおよそ16億円で落札されたのは記憶に新しい。

マン・レイといえば、ダダ、シュルレアリスト、レイヨグラフなどで有名ではあるが、果たしてその理解のみで正

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【書籍】化粧せずには生きられない人間の歴史

【書籍】化粧せずには生きられない人間の歴史

人は一体いつ頃から「化粧」という行為を始めたのであろうか。化粧史の始まりを知りたいと思って手にとった本書。

というのも、写真のデジタル化、およびスマートフォンにカメラ機能が搭載された点、およびSNSの普及によって、誰しもがセルフポートレートを気軽に世界中にアップできるようになった。

しかも、アップされる写真はアプリなどを用いて加工されていることが当然の行為として認知されている。加工された写真は

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【書籍】よくわかる浄土宗

【書籍】よくわかる浄土宗

私は特定の宗教に対して全く関心がない(いわゆる無宗教)のだが、話しをしていてちょっと気になったので、さわりだけでもと思い手にとった本書。

そもそもの前提から間違えていた。。極楽に行くために念仏(南無阿弥陀)を唱えるのは、なにもなにの苦もない快楽の世界へと行けるためではなく、欲にまみれた現世(娑婆:しゃば)で特別な修行をせずに煩悩をなくし、悟りの世界で安住することであったのだ。

なお、浄土とは「

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【書籍】金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った

【書籍】金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った

ロスチャイルド。言わずと知れた銀行業の礎を築いたフランクフルト出身のユダヤ人。

本書を手にしたきっかけは銀行の金利にある。

住宅ローンにおいて現在も低金利ではあるが、そもそも金利の仕組み自体が釈然としないからである。

お金を融資してもらうために、手数料を取ったうえで別途金利が上乗せされる。この時点で既に二重徴収ではなかろうか。

そして、社会的信用のある人物であれば超低金利でお金を借りられる

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【書籍】写真芸術論

【書籍】写真芸術論

写真批評家であった重森弘滝による写真芸術論(1967年)。海外ではコンセプチュアル・アート全盛期。日本では翌年にprovokeが創刊された時代において、重森はどのように写真を捉えていたのであろうか。

1897年、イギリスのステファン・ヘンリー・ホーガンによって、網版の写真を高速印刷機で新聞に刷り込むことに成功したのを機に、ニュース写真は完全に新聞へ定着していった。本格的な写真の複製時代の幕開けで

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【書籍】流れの中でーインターネット時代のアート

【書籍】流れの中でーインターネット時代のアート

流れ=flow、ケヴィン・ケリー『<インターネット>の次に来るもの』で、FacebookやTwitter、InstagramといったSNSでは常に記事が流れていることを指摘している。

本書でボリス・グロイスは「時間」の「流れ」に着目し、インターネット時代におけるアート作品を含めたあらゆるものの「流動性」について言及している。

われわれはインターネット上のデータ、すなわち過去にアクセスでき、いつ

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【書籍】The Theory of Absolute Photographs

【書籍】The Theory of Absolute Photographs

先日書いた「絶対写真論」の記事。

内容はそのままに、英語版を出版しました。

英語は全くと言っていいほど、得意ではありません!しかし、全世界を対象にすると、英語>>日本語の数の方が圧倒的に多い。

翻訳に関してはgoogle翻訳もいいのですが、もっと精度の良い翻訳ツールがこちら。

一度に翻訳できる文字数の上限はあるものの、フリーで高精度の翻訳ができるのは、DeepLの右に出るツールは他にないと

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【書籍】絶対写真論

【書籍】絶対写真論

副題「アルゴリズム・オブジェクトとしての写真へ」。

kindle direct publishing(KDP)の仕様に弄ばれながらもなんとか形になった、修論+αの論考。KDPの審査も通り、晴れて出版となりました!記念すべき、自身初の書籍です。

ただし、ペーパーバック版のサンプル画像、印刷用の表紙をAmazon側で処理しているそうで、解像度をあげらないか問い合わせてみるも、許容範囲内とのこと。。

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【書籍】教養としての写真全史

【書籍】教養としての写真全史

写真評論家である鳥原学氏による本書。鳥原氏は私が写真専門学校時代(おおよそ10年前)、写真史関連の講義を担当していた先生であった。今もなお同校でも教鞭をとられている。

写真全史、ということで、カメラの技術的な発展、写真家たちの写真の歩み、写真の種類(報道、ファッション、芸術など)といった内容について網羅的にまとめられた、398ページにおよぶ大書となっている。

「教養として」と枕詞がタイトルにな

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【書籍】異邦人

【書籍】異邦人

前回の「シーシュポスの神話」に続き、今回は「異邦人」。

養老院にいたママンが亡くなったところから、物語は始まり、主人公のムルソーとその周囲を取り巻く人々とのやりとりが淡々と語られていく。

養老院、現代における特別養護老人ホームの前身ではあるが、ここでは身寄りのない老人を収容して保護する目的のある施設である。

身寄りはあるはずなのに、ムルソーがママンを養老院に入れたのには理由がある。

厄介者

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【書籍】シーシュポスの神話

【書籍】シーシュポスの神話

フランスの小説家、劇作家、哲学者アルベール・カミュによる本書。

本書の核となるのは「不条理」である。カミュは不条理を以下のように説明する。

この世は不条理で成り立っている。そして、この世で「生きる」方法を不条理によって見出そうとしているのである。

人間は、この世に生を受けたその瞬間から、「死」が訪れることが決まっている。それが、長いか短いかだけの差異であって、いわば「運」的な要素をはらんでい

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【書籍】アセンブリ

【書籍】アセンブリ

アメリカの哲学者ジュディス・バトラーによる本書。院の同級生がバトラーの本書を参考に、写真における不安定性と行為遂行性についてを考察した論文を書いていたため、ざっくりとは把握しているのだが、のちに引用するかも、なことを見据えて、さらっと読み進めておく。

「アセンブリ」とは訳者の佐藤嘉幸氏が解説で記載しているように、孫引きではあるが以下にとどめておく。

なお、本書でキーとなるのは、「不安定性」(プ

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【書籍】写真論ー距離・他者・歴史

【書籍】写真論ー距離・他者・歴史

港千尋氏による写真論。私はアルゴリズムが主体となる絶対的な写真論を展開しているのだが、また別のベクトルから「写真」をみていきたい。

現在における人間社会について、港氏は「ポスト・フォトグラフィーの時代」にあるという。接頭語の「ポスト」とは「〇〇以降」を意味するが、本誌における「ポスト・フォトグラフィー」もまた同様の意味で用いられている。

しかし、私は大学院の有志とともに議論している「ポスト・フ

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【書籍】5000日後の世界

【書籍】5000日後の世界

ケヴィン・ケリーによる5000日後の未来を、テクノロジーの観点から展望した本書。今から5000日後は2035年。なお5000日前は2008年にあたり、昨年Metaへと社名を変更したFacebook社が創業した年にあたる。

ケヴィンはテクノロジーに耳を傾け、『「テクノロジーは何を望んでいるのか?」と問いかけること』を念頭においている。

人間の立ち位置からテクノロジーを理解するのではなく、テクノロ

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