「覚える記憶術」勉強後の整理
【この記事のまとめ】
時間管理術を活用して、脳のスイッチを意図的に切り替えながら記憶に残る勉強する
勉強が終わったら、本を閉じてペンをしまって、それで終わり!
ではないんですね。
せっかく時間をかけて理解した内容も、そのままでは1日〜2日で記憶から消し飛んでしまいます。
せっかく一度は頭に入った情報なので、きちんと長期記憶に留めて、使えるものにしたいですよね。
では、どうするかというと、行うべきはもちろん「復習」です。
が、ここでは「復習」以外にも使える記憶の定着に効果的な、かつ重要な脳のポイントを紹介します。
それが、脳がもつ勉強モードとリラックスモードという2つの状態です。
そしてスイッチで切り替えるようにこのモードを操り、効果的に記憶の定着を進めるのが、今回の「勉強のシステムづくり」です。
【記憶術シリーズ】
⑴ 「記憶術」イントロダクション
⑵ 「覚える記憶術」勉強前の用意
⑶ 「覚える記憶術」勉強中の工夫
※ マインドマップの強力な効果と使用アプリの紹介
⑷ 「覚える記憶術」勉強後の整理 ←イマココ!
⑸ 「忘れない記憶術」最大効率の復習スケジュール
⑹ 「忘れない記憶術」最短10秒の復習テクニック
勉強モード vs リラックスモード
脳には勉強モードとリラックスモードの2種類の状態があります。
【勉強モード vs リラックスモード】
勉強モード:脳が学習しようと必死になっている状態
リラックスモード:何も考えずにぼーっとしている状態
脳は1つの領域につき複数の機能を持っており、それがまた他の領域と連動することで、大きなネットワークを作り上げています。
この2つのモードは、そのネットワークの一部です。
勉強モード(正式:ワーキングメモリネットワーク)は、短期記憶のように、一時的に情報を貯める時に活動します。
そして頭を使っている時でなく、ぼーっとしている時に活動するものがあることがわかっています。
それがリラックスモード(正式:デフォルトモードネットワーク)です。
リラックスモードは、過去の記憶の呼び出しや、将来を思い描く働きをもっています。
よく「寝ている時に記憶が整理される」といわれますが、それがまさにこのリラックスモードが働いている状態だということがわかりました。
つまり、記憶はリラックスモード、つまりぼーっとしている時にこそ整理されるということです。
ここから勉強法に転じることで、勉強とリラックスモードの切り替え(スイッチ)を意図的に行い、記憶の定着を効率よく深めていきます。
脳のスイッチを作るポモドーロ
ここで紹介するのは、ポモドーロというテクニックです。
時間管理術として使われるものですが、今回の文脈に即して使うことで、勉強においても大きな効果を発揮します。
ポモドーロのやり方は、勉強と休憩を短いスパンで繰り返すだけです。
例を見てみましょう。
【ポモドーロの例】
勉強 25分→休憩 5分→勉強 25分→休憩 5分……
ここでのポイントは、1回の勉強の時間を、自分の集中力が続く時間に設定するという点です。
仮に25分としましたが、もっと集中力が続く人であれば60分→15→60分のセットでも大丈夫です。
このポモドーロを活用し、脳のモード切り替えを意図的に行うスイッチを作ります。
では、休憩の間に何をすればより効率的にリラックスモードへ移行できるでしょうか。
その具体的なスイッチを見てみましょう。
POINT①
・脳はぼーっとしているリラックスモードで記憶を整理する
・ポモドーロの時間術でモード切り替えのスイッチを作る
・ポモドーロ=勉強→休憩→勉強→休憩…
スイッチ① トイレ・お風呂
まず最初に、最も手軽に使えるスイッチです。
なぜトイレやお風呂がスイッチになるのかというと、何も考えずに行える行為であり、かつリラックスできる環境だからです。
それを裏付けるものとして、誰しもよくこんな経験をしたことがあるかと思います。
【トイレ・お風呂の最中】
「あ、いいアイデア浮かんだ!」
「今日勉強したことって、そういうことか!」
「そういえば、あれって昔経験したことに近いな…?」
これは、脳がリラックスモードに移行することで、新しく学んだことの記憶が整理され、過去の記憶や周辺情報と結びついていることから起きるといわれています。
放っておいても勝手に脳が作業してくれるので、トイレやお風呂はバンバン入りましょう。
スイッチ② 睡眠
2つ目のスイッチは睡眠です。
もともと、睡眠こそ最も記憶が整理される時間であるとされていました。
これは前述したように、リラックスモードが記憶を整理するという現象によって説明できます。
ここでは勉強に使える睡眠として、「昼寝」と「ウェイクフルレスト」を紹介します。
昼寝については、現在その効果が社会的に認められ、大企業の中には正式に昼寝の時間を認めたり、昼寝用のスペースを確保しているところもあります。
昼寝の効果はここで紹介している記憶の整理に留まらず、脳の働きをリセットしたり、気分をすっきりさせて集中力を高めるなどと、まさによりどりみどりの効果を持っているとされています。
そんなお手軽リフレッシュが可能な昼寝ですが、勉強に活かす場合に唯一守らなければならないことがあります。
それは15分〜30分以内の軽い睡眠にするという点です。
なぜなら、それ以上の睡眠はいわゆる「本寝」という状態になり、そこから中途半端に起きると、脳の活動をむしろ鈍くさせてしまう原因になります。
しかし、仕事場や学校など、昼寝がしにくい環境にいる場合もあります。
そんな時には「ウェイクフルレスト」を使いましょう。
ウェイクフルレストのやり方は簡単です。
「10分間目を閉じて情報を入れない」だけ。
そして可能であれば、ノイズキャンセリング機能などが付いたイヤホンなどで、「音もシャットアウトする」ことで効果が高まります。
これはようするに、外界からの情報を一切入れないことで、脳に余裕を作ってあげることが目的です。
そうすることで、脳をリラックスモードへスイッチさせ、情報の整理を行いやすい環境を整えることができます。
以上が睡眠のスイッチ、「昼寝」と「ウェイクフルレスト」です。
どちらも手軽に使えるので、ぜひ一度お試しください。
スイッチ③ 運動
3つ目のスイッチは運動です。
具体的には、「勉強後の5分散歩」で十分な効果があるようです。
その理由は、座りっぱなしで強張った身体を散歩でほぐすと、血流が良くなって、脳までしっかり酸素と栄養が届けられるからです。
合わせて運動の話をすると、同じ理屈で「勉強前の10分運動」でも、記憶の向上につながるといわれています(ただしこちらは軽いジョギング以上の運動強度)。
これらが体感としてわかりやすいのは、学校生活ではないでしょうか。
例えば普段の教室ではなく、移動教室がある授業では、その授業内容がなんとなく頭に入りやすいような気がしませんでしたか?
あるいは、体育の後の英語の小テストは、やたらと単語が頭に残ってませんでしたか?
ぼくの体感ではそう感じてたのですが、この感覚は正解でした。
この理由はどちらも「勉強前後の運動」による効果だったといえます。
つまり、勉強前の10分ジョギング・勉強後の5分散歩運動が、記憶の定着に効果的であることが、経験則的にも示すことができます。
ここから転用して、あえて「勉強前後の運動」を取り入れてみましょう。
といっても無理する必要は全くなく、簡単なことを行えばそれだけで効果を受けることができます。
例えば以下のような例です。
【勉強前後の運動例】
・勉強する場所を変える
・トイレに立つ
・ストレッチする
自分が取り入れやすい運動で、勉強する際の脳を活性化させてみてはいかがでしょうか。
スイッチ④ 音楽
最後のスイッチは音楽です。
音楽は上手く勉強に取り込むことで、記憶の定着を助けるものになります。
理由は今回お話ししているように、リラックスモードへスイッチできるからです。
しかし勉強に関する音楽の使い方には注意が必要です。
まず多くの人が行うNGが「勉強中の音楽」です。
よく「音楽聴きながらじゃないと勉強できない」という話を聞きますが、あれは脳の錯覚が引き起こす誤解だということが分かっています。
「無関連音効果」と呼ばれる現象で、作業中に音楽を聴いていると、脳は作業と音楽の両方を同時に処理するようになります。
こうすると音楽を聴くことに脳のリソースが割かれ、作業の理解度が低下し、結果的に効率が落ちることにつながります。
どんなに流れてくる曲を無視しようとも、意味のある歌詞は入ってくるし、流れるメロディーには耳を傾けてしまいますよね。
ではなぜ音楽を聴きながら勉強すると、勉強が捗っていると感じてしまうのでしょうか。
それは、音楽が脳の気分を改善させる効果をもつためです。
● 音楽を聴く→気分改善→効率が上がっている(錯覚)
こういう理屈ですね。
これは言い換えると、勉強後にこの効果を使うことで気分を改善させる、つまりリラックスモードにスイッチできるということです。
そのため、「音楽を聴くなら勉強後」。
これを覚えておきましょう。
POINT②
スイッチ① 「トイレ・お風呂」:休憩ついでに
スイッチ② 「睡眠」:昼寝 or ウェイクフルレスト
スイッチ③ 「運動」:勉強後の5分散歩
スイッチ④ 「音楽」:無関連音効果に注意
まとめ
今回は脳が記憶の定着を深める「リラックスモード」に着目し、ポモドーロ的な勉強法と組み合わせたスイッチを4つ紹介しました。
スイッチ① 「トイレ・お風呂」
お風呂でいいアイデアが浮かぶ理由でもある
スイッチ② 「睡眠」
・ 15分〜30分の昼寝
・ 目を閉じて外界の情報を遮るウェイクフルレスト
スイッチ③ 「運動」
・ 勉強後の5分散歩
・ 勉強前の10分ジョギング
スイッチ④ 「音楽」
音楽を聴きながら勉強するNG行為は「無関連音効果」を生む
どれも手軽に実践することができるので、気になるものや、取り入れやすいものからぜひお試しください。
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参考文献
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