無題#3 (4/29~2024/5/02
つまんだ頬は奇妙な心地よさを指先に残して、ガムのように伸び、目の周りに絡まって煙みたいになったあと伏せた机から顔を上げる。気がついたら放課後だった。
鍵を職員室へ返して、駐輪場から自転車を出す。大きな蛾が、それは最初、厚い枯れ葉、凝視するふたつの目に見えたが、校舎の白い壁に張り付いていた、二匹のとても大きな蛾だった。みつめられていた。いくつもの輪がめだまの中心から波紋みたいにいくつもいくつも飛び出し、うすい紫色で世界が覆われていくのを感じた。駐輪場が遠かった。荷台には、包帯で