2005年の日記(2024/05/20〜21)

2005年を思い浮かべて書いた架空の風景と回想です。


2005年1月1日

晴れ。アパートの窓。銀色の煙突が蔦のからまった屋根からつきでる。川。土手にひとが集まっている。子供が走ってる。鳥がむれをなして空を飛行している。工場。予備校は休み。除光液をコンビニで買う。ロータリーにつぶれたタルトが落ちている。カラスがつつきにくる。2時からバイト。Fさんはしんどくなると、家のトイレで口を抑えて思い切り「死ね!」と叫ぶらしい。



2005年5月2日

会社帰り。アパートの窓。明かりがついている。タオルが見える。下の居酒屋から男が出てくる。店前の観葉植物が店内の光に照らされている。オレンジ。夜道を歩く男。赤い軽自動車が車庫の中で静かに佇んでいる。薬屋の前のオレンジ色のゾウにこどもがひとり乗っている。青野先生のところでもらったキャンディがたまって、冷蔵庫にマグネットで貼り付けた小さなバスケットにたまっている。



2005年7月4日

ニュース番組のオレンジ色のロゴ。男が映っている。覆面をかぶっている。ばあちゃん家の軒先おいちゃんがたばこを吸っている。鉢植えの植物。狭い通りの先へ行ったことがない。


2005年9月16日

銭湯のテレビが相撲を写している。

だいきくんと一緒に旅行へ行った。ホテルのひかりが緑だった。分厚いガラスごしに差し込んできた。ガラスの中に照明が入っているのだと思った。

路地を入って、カーテンのかかった小窓のついたドアのしめられた向こうから話し声や歌声が聞こえた。そういうところへ入っていく勇気がない。


2005年8月21日

Yが、かまぼこ板忘れたと言って帰ってくる。そんなにプールへ入りたいかと言う。遅刻するので送っていった。途中、川を挟んだ向こうで何かを焼いているのが見えた。煙がうすく窓から入ってきたので閉めた。

わたしはきっと呑気なやつで、Mちゃんはわたしをいつも褒めてくれて、うれしくなって、でも帰り道よく泣く。


2005年10月5日

アパートの欄干に鳥が止まっている。すずめだと思う。黒く塗ったペットボトルが倒れている。電柱がかすかに揺れる。

大阪駅中のマクドナルドに寄る。背もたれのない椅子。

帰りにパン屋に寄る。


2005年12月22日

学校の帰り、膝が冷たい。ハンド部の子たちが剣道場の軒先のひさしの下でじゃれ合っていた。

銀天街のCD屋に寄る。ゆりこちゃんとすれ違う。ざっとみて何も買わずに帰る。


2005年7月19日

大街道を夜散歩する。雑居ビルの2階に入ったカフェの窓から、暗い道にむかって、窓の形に色のついた光が射し込んでいる。マーヴィン・ゲイを聴いて歩く。映画館の下にある韓国料理屋の前で屋台みたいなのをやっていて、いいにおいがする。みんな集まってなにかわいわいと話している。


2005年7月19日

プールの帰りにアイスを買う。弟にもかってあげる。メダルが出てくる。

I先生は胸毛が濃いねとゆりこちゃんと話す。


2005年7月19日

男の子がひとり、電気風呂にはいってしびれるのがこわいと言って、けど怖がりながら何回も試している。天井がとても高い脱衣所で、ゆびのふやけてしまった部分をながめる。親指をたまに嗅いでくさいのは、小さいころあなたはよくしゃぶっていたから、やめなさいと何回言ってもしゃぶっていたから、そのせいなんじゃない、と母が言う。人差し指の甲で鼻を擦れば、酢酸ビニルの匂いがする。大人になってもしゃぶりつづけて、色や形がかわって、ひらべっちゃくなってしまった人もいるんだって。自販機でコーヒーを買う。脱衣所の出口が分かりづらく。危うく裸のまま廊下にでてしまいそうになる。その人はもう、なにもしてなくてもずっとふやけてて、やわらかくて、という声を、聞いているのか聞いていないのかわからないが、高すぎる天井がそれを反響させる余地をあたえないで、外にいるみたいだと思って、まっすぐ耳に入ってくる気がする。


2005年11月3日

祝日だから学校は休みで、どこかへ出かけようと思って、着替えようとしている時に、姿見にうつった自分の姿をじっと見てしまう。そのまま裸になって、たったままみつめて、その後、ベッドに座り込んでまたじっと自分の裸を見る。後ろの窓からあかりが差し込んできて、急に恥ずかしくなってきたから、でもはだかのまま布団を体にかぶせて、今だれかが部屋に尋ねてきたらどうしようとひやひやした。階段から足音が聞こえた。眠ったふりをした。

昼になって起きて、コンビニに寄っておにぎりを買って、ルナティックへ行った。待合で待っている間小説を読んだ。小さな狭い待合で、混んでいる時はみんな外で時間を潰すんだろうかと思う。隣に自販機があって稼働音がきこえた。フランスの映画で、失業した女性がラジオ局に勤めはじめて、人生を再建するようなお話だった。面白かった。余韻のまま街にくり出し、夕方で、空気が少し青かった。居酒屋に行ったあとDAISOへ寄った。作業靴のソールを2枚買った。

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