橘 春

覚えていてください

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記事一覧

2024年5月自選

#tanka 七色をぜんぶ混ぜれば世界一きれいな虹になるはずだった 広辞苑をばらばらめくる広辞苑の【恋】は死にたくならないらしい 脳みそはこんなに熱いのに声はつめた…

橘 春
3週間前
11

きみの未来に私はいない

LIKE A FULL MOON  重い木の扉を押すと、頭上から涼しげな鈴の音がした。レジの奥はキッチンに繋がっていて、そこから二十歳ほどのウェイトレス姿の女性が出てきた。…

橘 春
1か月前
4

2024年4月自選

#tanka 間違えている正しさを教え合う 融雪槽のある町のなか 曖昧な塗り絵なんだよぼくたちをまっしろだって決めつけないで また会えるよって言われてまた会おうって…

橘 春
1か月前
9

 それが世界の果てだと思っていたから、あの夜の痛みのことを、僕は未だに忘れられずにいる。世界がひっくり返った日。信じられなくて、何度も太腿のあたりをつねった。痛…

橘 春
2か月前
10

2024年3月自選

#tanka へんなメンバーの飲み会だったけど君のことしか思い出せない 嘘なんかついたことない プロローグからクレジットまで好きだった 四月から社会人になる君のその…

橘 春
2か月前
7

2024年2月自選

#tanka 君にならどれだけ脳をぐちゃぐちゃにされてもいいと思います まだ チョコレート全然いらない 通学路坂道だるい 誰かと死にたい 泣きながら話す いちばん大…

橘 春
3か月前
17

簡単に詳しく自分のことを話したい

3月になったというのに寒いですね。風が冷たくて、外に出るのが億劫です。冬の真ん中より冬の終わりの方が寒いの、不思議だ。 大学の後輩の方々のnoteを読んで、自分もや…

橘 春
4か月前
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2024年1月自選

#tanka 子宮頸がんのワクチン こんな紙切れ一枚で女に戻る おうとつにこぶしを入れてやわらかいかたまりを取り出した後輩 壊れた花瓶は弁償するけれど壊れかけの花瓶…

橘 春
4か月前
15

空洞日記

 言葉を飲み込むのがうまくなった。と思っていたのに、体調を崩してからまた下手になってしまった。おそらく薬の副作用だろう。心配されていた発疹、口内炎、下痢の副作用…

橘 春
6か月前
16

宇宙、あるいは、夜の海

 三日ぶりにシャワーを浴びた。脂でネトネトの皮膚と髪の毛を洗い流し、ついでに鼻の角栓ケアもした。体はさっぱりしたが、相変わらず苦しい時間だった。  私はお風呂が…

橘 春
7か月前
15

神様は玉ねぎなんて平気

神様は玉ねぎなんて平気      #tanka #短歌 痛くない心臓 だって少しでも君になりたいから、水を飲む 今日暇? と連絡が来た夜 伝書鳩も一緒に喜んでいる 平然…

橘 春
8か月前
16

ヤンニョム消えないでチキン

 牛丼を食べに行こうという話になって、二十二時半に吉野家へ行った。明るい蛍光灯の下でチーズの絡まった牛肉を食べながら、私たちは記憶について話した。小学校の同級生…

橘 春
10か月前
19

中学時代の日記を読んだ。あの頃確かに悩んでいたはずなのに、思い出すのは周囲の人たちとの鮮やかな記憶ばかりだった。私は昔から友達に恵まれている。今の苦しみも、時間が経てば眩しい光になるのだろう。卒業以来、はじめて中学時代に戻りたいと思えた。

橘 春
10か月前
6

本当を 本当だけを伝え合う関係性の脆さ 逆にね?

 世界のすべての人が幸福に見えます  というと主語が巨大すぎるので、もう少し小さくしておきます。TLのすべての人が幸福に見えます。  今日、推してから初めて推しの…

橘 春
10か月前
20

がらくた

 三叉路で、檜山はわざと右に曲がった。家を出て五分、普通に歩けば約束の時間に充分間に合う。せかせかと歩けば、二分ほど余る。しかし、檜山が選んだのは五分遅れる道だ…

橘 春
11か月前
21

頻繁に夢に出てくる人に「あなたが虚しいのは、本物に会いたいからじゃない?」と言われて目が覚めた。ほぼ毎晩夢で会っているからまだ大丈夫だと思っていたけど、思おうとしていただけなのかもしれない。会いたい人全員「会おう」「いいよ」で解決できたらいいのにな。

橘 春
1年前
4

2024年5月自選

#tanka

七色をぜんぶ混ぜれば世界一きれいな虹になるはずだった

広辞苑をばらばらめくる広辞苑の【恋】は死にたくならないらしい

脳みそはこんなに熱いのに声はつめたい(やっときらいって言えた)

正直に話すとぼくは君以外死ぬ価値すらもないって思う

連絡をしなきゃよかった でも君がまたねって言ってくれたから、つい

君の道徳観が好き 飾るわけでもない花に水を与える

べつに100好きじゃな

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きみの未来に私はいない

LIKE A FULL MOON

 重い木の扉を押すと、頭上から涼しげな鈴の音がした。レジの奥はキッチンに繋がっていて、そこから二十歳ほどのウェイトレス姿の女性が出てきた。「何名ですか」と訊ねられ、優香が「二人です」と答えながらピースをつくる。その指先を、あんずは無意識に見つめていた。
 今日は空がきれいだから、という理由で窓際の席を選んだ。今日の空は何故か全体的に薄い紫の膜があり、あんずはそれ

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2024年4月自選

#tanka

間違えている正しさを教え合う 融雪槽のある町のなか

曖昧な塗り絵なんだよぼくたちをまっしろだって決めつけないで

また会えるよって言われてまた会おうって返事した日の夢を見た

たぶん春も酔っているから思い出せないよ 好きって言ってもいいよ

雑踏で泣きそうでした 夜は光合成ができないから困る

エンゼルはいませんでした にせものでいいから今夜くらいはいてよ

 4月はあまり詠め

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 それが世界の果てだと思っていたから、あの夜の痛みのことを、僕は未だに忘れられずにいる。世界がひっくり返った日。信じられなくて、何度も太腿のあたりをつねった。痛かった。岡田は僕を好きだと言って、輪郭に触れた。彼は宇宙のなによりも僕を嫌っていたというのに。

 自販機の光が岡田の肌を照らす。サイダーとコーヒーで迷っているらしく、彼の目は上下にゆらゆらと揺れていた。僕は九十円の水を買った。舌が濁ってい

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2024年3月自選

#tanka

へんなメンバーの飲み会だったけど君のことしか思い出せない

嘘なんかついたことない プロローグからクレジットまで好きだった

四月から社会人になる君のその正当性がとても寂しい

異常ではないですという匿名の回答を見て安堵している

言いたいことはなんでも言って、泣かないで、電話だから、電車を切るね

ぼくは透明人間かもしれない/君はやさしい博愛主義者

それ以外ほんとうはどうだっ

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2024年2月自選

#tanka

君にならどれだけ脳をぐちゃぐちゃにされてもいいと思います まだ

チョコレート全然いらない 通学路坂道だるい 誰かと死にたい

泣きながら話す いちばん大切な友達の目がきれいなことを

水・光・笑顔ばかりの展示室 君の影 ずっと一緒にいてよ

真夜中に真夏の風に撫でられて(殴られて)吉野家へ行きたい

鍵垢の君が見ている夕焼けを見たい 絶対良い空だから

やわらかくやさしく春にな

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簡単に詳しく自分のことを話したい

3月になったというのに寒いですね。風が冷たくて、外に出るのが億劫です。冬の真ん中より冬の終わりの方が寒いの、不思議だ。

大学の後輩の方々のnoteを読んで、自分もやりたくなったのでやります。

https://100mon.jp/q/4068
簡単に詳しく自分のことを話したい人に100の質問

名前は?
橘春

その名前の由来は?
春が苦手なので、自分の名前だったら好きになれるかな と。
あと漢

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2024年1月自選

#tanka

子宮頸がんのワクチン こんな紙切れ一枚で女に戻る

おうとつにこぶしを入れてやわらかいかたまりを取り出した後輩

壊れた花瓶は弁償するけれど壊れかけの花瓶はそのまま

自分から傷つきに行く 君の家まで行くバスの減便を知る

この町は君の記憶を持ちすぎてどこへ逃げても死にそうになる

好きだからもう触れないよ とげのあるおばけになって立つ枕元

穴 という余白が好きで 違ったらごめ

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空洞日記

 言葉を飲み込むのがうまくなった。と思っていたのに、体調を崩してからまた下手になってしまった。おそらく薬の副作用だろう。心配されていた発疹、口内炎、下痢の副作用は出ていないが、口渇、頭痛、吐き気がひどい。でも薬が錠剤で本当によかった。八月に飲んだメニエールの薬は、間違えて毒を渡されたのかと不安になるほどまずかった。「良薬口に苦し」とはまさにこのことである。ネット民風にいうと、良薬口に苦C 

 以

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宇宙、あるいは、夜の海

 三日ぶりにシャワーを浴びた。脂でネトネトの皮膚と髪の毛を洗い流し、ついでに鼻の角栓ケアもした。体はさっぱりしたが、相変わらず苦しい時間だった。
 私はお風呂が大の苦手で、翌日の予定がなければ入らない日も多々ある。お風呂が苦手なんだよね、と話すと、ほとんどの人が「わかる!」のあとに「気持ちいいけどめんどくさい」「もっと早く入っておけばよかったと思う」と続ける。そのたびに、彼らと自分の間に境界線を感

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神様は玉ねぎなんて平気

神様は玉ねぎなんて平気      #tanka #短歌

痛くない心臓 だって少しでも君になりたいから、水を飲む

今日暇? と連絡が来た夜 伝書鳩も一緒に喜んでいる

平然を装っている本当は嬉し泣きするくらい嬉しい

入り口の近くの方の食堂がまずいと聞いてすこし悲しい

先輩に「ピーチフィズみたいな男だね」と言われて、それから、ずっと、

最終話の更新日が来週と気づいてタイムマシンが欲しい

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ヤンニョム消えないでチキン

 牛丼を食べに行こうという話になって、二十二時半に吉野家へ行った。明るい蛍光灯の下でチーズの絡まった牛肉を食べながら、私たちは記憶について話した。小学校の同級生の話から、近頃の儚い人間関係の話まで。
 未だに縁が続いている小学校の同級生は、ほとんどTちゃんだけだ。ほとんどというのは、年に一、二回会うグループのうちの数人が小・中・高と同じだからである。だけどそれらは小さな同窓会や習慣のようなもので、

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中学時代の日記を読んだ。あの頃確かに悩んでいたはずなのに、思い出すのは周囲の人たちとの鮮やかな記憶ばかりだった。私は昔から友達に恵まれている。今の苦しみも、時間が経てば眩しい光になるのだろう。卒業以来、はじめて中学時代に戻りたいと思えた。

本当を 本当だけを伝え合う関係性の脆さ 逆にね?

 世界のすべての人が幸福に見えます

 というと主語が巨大すぎるので、もう少し小さくしておきます。TLのすべての人が幸福に見えます。
 今日、推してから初めて推しの配信をリアタイしました。そもそも生きている人間を推すということ自体が珍しい私には、なんだか啓示的なものを感じました。それでなんとなく その推しとはまったくの無関係なのですが、メンヘラ神のブログを見に行きました。
 彼女のことは本当に好き

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がらくた

 三叉路で、檜山はわざと右に曲がった。家を出て五分、普通に歩けば約束の時間に充分間に合う。せかせかと歩けば、二分ほど余る。しかし、檜山が選んだのは五分遅れる道だ。
 一昨日、美穂から着信があった。大学の講義中で出られなかったのだが、そうでなくとも気づかないふりをしていただろう。後からかけ直すことはせず、メールで用件を尋ねた。久しぶりに会ってみるのはどうか、といった内容だった。
 別の高校に進学する

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頻繁に夢に出てくる人に「あなたが虚しいのは、本物に会いたいからじゃない?」と言われて目が覚めた。ほぼ毎晩夢で会っているからまだ大丈夫だと思っていたけど、思おうとしていただけなのかもしれない。会いたい人全員「会おう」「いいよ」で解決できたらいいのにな。